【65】アフタークリパ in 佑奈'sルーム!
クリスマスパーティーが終わったのは午後六時を少し回ったくらいだったけど、年末前のこの時期、外はもうすっかり暗くなっていた。
帰宅する三人、茂木クン、奏多、瑛莉華さんをお見送りするため、お泊り組と一緒に一階ロビーまで降りた。
奏多が「私も泊まりたい~」とか駄々こねてたけど、茂木クンが何とか抑えきり無事、帰宅させることに成功した。
モギモギ、最後の最後でやっと役に立ったな!
別れ際、瑛莉華さんの表情がなんとも寂し気に見えたのがちょっと気になったものの、ま、独身女が一人寂しく自分のマンションに帰るともなればそうもなるか……と思ったし、澪奈たちに「さぁ戻ろう」って引っ張られたこともあり、そんな考えもすぐ消え去ってしまった。
お泊り組でパーティールームの片付けを済ませ、鍵をコンシェルジュに返し、部屋に戻って落ち着くころには午後七時になろうとしてた。
つっても部屋の片付け自体は茂木クン達が居た時に一緒にしてもらったから、俺たちがやったのは部屋からの荷物の撤収だけなんだけど……、それでもなんやかやで、こんな時間になってしまった。
「あ~もう疲れた~、お腹空いた~!」
「ほんとほんと、もう一歩も動けなーい」
パーティーでそれなりに食べたはずだけど、若い奴らは燃費悪いのかもう腹減ったとか言い出してる。まぁ、かく言う俺も小腹は減ってきてるので何も言うまい。
「いやだ、若いあなたたちがそんなことでどうするの。それにお腹減ったなら、なにか軽いお食事でも作ったらどう? ついでにお姉ちゃんたちにも、何か作って欲しいな~」
いいね奈津美さん、それ大賛成!
そもそも後片付けでこんなに疲れるとは大誤算だった。やっぱ部屋借りてやるのは色々手間かかってダメだな。部屋元に戻すのも面倒だし、荷物運ぶだけでひと苦労だわ。もう次はない。
つうかパーティーもやりたくない。
「えー、なっちゃん、それ私らにふる? ふっちゃう? 自慢じゃないけど、料理とかお菓子作りとか、全然だから! ね、みーな」
「え? 私、少しは出来るし? クッキーとか」
「ぐはっ! みーなに裏切られた!」
なんつう低次元な争い……。めちゃツッコミたいがここは我慢だ。突っ込めば自爆要素しかない。
「ケーキの残りとかお菓子ならあるよ~!」
「え~、またそれ? さすがにもう飽きた。何かさ、もうちょっとあっさりしたもの食べたい」
しまった!
ついツッコミ入れちまった。
「え~、じゃあ聞くけどお姉ちゃん、何か作れる食材とか……あるわけ?」
ぎくっ。
こいつ、痛いところを……。
「あ、あるし! カップ麺とか、カップ焼きそばとか、カップ……」
「あ~、はいはい。インスタントばっかだね。わかってたけど。ちなみにさ、キッチンの炊飯器。あれ、最後に使ったのいつ?」
え? す、炊飯器?
むむぅ。そんなの最初、母さんたちが引っ越し祝いで家電用意してくれて以来、一度も使ったことない……、いや! 一度だけ! 最初母さんがそれでごはん作ってくれてるな!
「五年! いやもう六年前、一度使ってるし!」
「あっそ。それママが使った時ね。私もいたし、それ」
なんか奈津美さんとめぐちゃんの視線が、可哀想なやつ見る時の目つきになってる。ヤダー。
「要は、自炊なんて全くなお姉ちゃんは、食材とかな~んにもないわけだ」
「う、う、うっさい。コンビニと宅配サービスあれば事たるし! わざわざ自分で作るより楽だし、おいしいし!」
自分で作る必要なんてない!
「あ、開きなおった。お姉ちゃん、二十四にもなって女子力ゼロ~、ダメダメ女子決定!」
くぅ、澪奈がイジメてくる~!
何で俺、こんなに責められなきゃいけないんよ!
泣いちゃうぞ!
「うぅ……」
あ、なんか、ほんと涙出そう……。この体になってから涙もろくて困るわ。
「はいはい、ストーップ。澪奈ちゃん、お姉さん泣かせちゃダ~メ。別に無理して作ることもないんだから……普通に何か取りましょ、ね」
うう、奈津美さんやさしい!
好き!
ってことで宅配サービスで食事を届けてもらうことになり、多少待ち時間があったこともあり、とてもとても美味しくいただくことが出来た。
ちなみに頼んだのはお寿司。
軽い食事と言ってたのにこれである。
いや、なんか急に食べたくなったんだから仕方ない。みんなも異存まったくなかった。俺が金を出すって言ったことから、奈津美さんがちょっと遠慮気味だったけど、気にしないでいいからと押し切った。
今日一日、俺たちどんだけ食ったかしれない。
ま、いいじゃん、いいじゃん。みんなでブタになろう!
その後は特に何するわけでもなくリビングでTVを見たり、スマホをいじったりしつつ、交代でお風呂に入ったりしてまったりとした時間を過ごした。
風呂上り、ついいつもの調子で下着姿でリビングに出てきてしまい、みんなに呆れられた。いや、別にいいだろ? 俺のマンション、しかも女同士なんだからさ!
で、そのあと部屋着ジャージ着ようとしたらしたで、「お姉ちゃんコレ着なきゃ!」とかいって、クローゼットにしまいっぱなしになってたピンクのくま柄のやつ持ってこられた。以前母さんと澪奈が俺にって買ってくれたやつ。
実家では着心地よくて着てたけど、こっちに戻ってからは、やっぱ着慣れたジャージに戻ってしまってた。
きっちり着せられた。
クマさん柄の淡いピンクのふわもこシャツとふわもこパンツ姿。夏は半袖ショートパンツだったけど、これは冬バージョンだ。どっちもあるとか用意周到すぎ。
「ゆーなさん、げきかわ! これはもぎもぎに送ってあげなくては!」
「うわっ、めぐちゃんやめい! こんな部屋着の写真なんか送んな~」
「もうお姉ちゃん、照れちゃってかわいい。茂木君きっと喜ぶよ! これで二人の仲ももっと安泰だね!」
こ、こいつらときたら。
「安泰もなにもなーい! 勝手にそっち方向にもってくな~」
「はいはい、ごめん、ごめ~ん。いつもの冗談じゃん。送ったりしないって! ね、めぐ?」
「え? あ、ごめん……。もう送った」
くぅ……。
あーもうしらね!
もうどうでもいい!
「ゆーなさん? 怒った? ねぇ、怒った? 消すし、すぐ消すし」
そう言いながら慌ててLINIEをいじるめぐちゃん。
消すくらいなら最初からすな!
とっとと消すよろし。
「あ、もう既読ついた……」
へ?
「あ、二つめも……」
『佑奈ちゃんかわいい ハート。保存しました』
「瑛莉華さん、コメついた。保存したって……」
なん、だと?
ほ、保存? えりか、さん?
…………。
「うが~!」
「わー、ゆーなさんバーサク化したっ!」
「お姉ちゃん、落ち着いて、落ち着いて~!」
「やかましい! おまえらもうゆっるさ~ん!」
「ほんと、あななたち、元気ね。佑奈さん……いやがってるけど……、くすっ、なんだか楽しそう。けど……もう時間も遅いし、ほどほどにね?」
ぬあっ!
奈津美さんに同類って思われた!
違う! 違うんです!
俺は、俺は、こいつらと同類なんかじゃな~い!
ああああ……、
がっくし。
***
「ゆーなさん、寝ちゃいそう……、っていうか寝てる」
「そりゃ、あれだけ騒いだらそうもなるでしょ。今日は一番の主役だったし、お部屋のことでも色々してもらったし。あななたちも相当イジリたおしてたし? まったく、ほどほどにしておきなさいよ」
「なんかさー、色々ほっとけないよね、みーなのお姉ちゃんって」
「茂木君の部活の先輩、奏多さんだっけ? あの人も強烈だったよね~? めぐ、あんたも負けてたよ」
「さすがにあのテンションにはついていけないって! あれはヤバイ」
「うん、やばいやばい」
「でもまぁ、もぎもぎとゆーなさんのセンは今のところ、なさそうかな?」
「そだねぇ、お姉ちゃんまったくその気なしだね。友だちとしか見てない感じ」
「むー、つまんね」
「あなたたち……、ほんとーに、ほどほどにしときなさい?」
「「はーい!」」
「ふあぁ、私も疲れたし。もう寝よっか? めぐ、お姉ちゃん運ぶの手伝って?」
「がってん承知!」
――俺、いつの間にやら寝落ちしてしまった……みたいだ。
ふと目が覚めれば、いつの間にか自分のベッドに寝かされてた。澪奈はすぐ横で布団しいてぐーすか気持ちよさそうに寝てる。
踏んだろか。
ま、やめといてあげよう。
ベッドまで運んでくれたみたいだし。
寝てれば大人しいのにな。起きるととんだ小悪魔だ。
あんな出来事のあと……だったし。
俺もちょっとテンション高かったのかな。あの騒ぎようは引きこもり系社会人である俺らしくなかった。
でもさ。一歩間違えればこの先、こんなことやってられないことになるはずだった……んだもんな。
騒ぎたくもなるってもんさ。
瑛莉華さんだってきっとそうだったに違いない。
……だよな?
ま、いっか。
これからもこんな風に過ごせていければいいな。
平和が一番だよ、うん。
さ、もっかい寝よ寝よ。
おやすみぃ……。




