【64】クリスマスパーティー(後)
マンションのパーティールームを借りてのクリスマスパーティー。
女六人、男一人――まあ女のなかの一人は元男な訳だが――という、ただ一人の男である茂木クンにとっては超ハーレム状態でのパーティ―となったわけだが、とりあえず問題なくことが進んでいる。
ついさっきまでは!
くっそ、奏多が余計なグッズを持ってきたばかりに急遽俺のコスプレを披露する羽目になってしまった。
「はい、お姉ちゃん、ちょっとコッチでお着替えしましょうね~!」
「もぎもぎは来ちゃだめだよ~」
「お姉ちゃん、小さいけどちょっとばかりエロい体してるからねぇ、茂木君には刺激強いよね~」
は?
このクソ妹は何言ってんの?
そんな言葉振られた茂木クン、顔赤くしてるし。何想像してんだよモギモギ!
「澪奈、そんなこと言うなら私もうコスプレしない」
「あ~、すぐ拗ねる~。ちょっとした冗談、冗談じゃん。やだなぁ、お姉ちゃんたら」
そう言いながら澪奈がめぐちゃんと一緒になって、脱衣所の方へ俺を半ば引きずるように連れて行く。
「わかった、行くから引っ張るな。て、あんっ。 ち、ちょっとぉ、胸さわんな!」
「わぁ、お姉ちゃん、えっろ!」
「うっさい、お前のせいだろが!」
く~、変な声だしちまった。茂木クンにも聞かれた。はずっ!
瑛莉華さんがそんな俺たちを面白そうに見てる。ちぇっ、楽しそうで何より! ちょっとは俺のこと助けてくんないですかね!
悔しいから瑛莉華さんに向け、俺は唇をゆがめ「い~」って表情をして見せてやった。
「く~、佑奈たん可愛すぎ! いただき!」
そんな表情を奏多に写真に撮られた。
くっそ、油断も隙もあったもんじゃねぇ。つうか佑奈たんってなんだよ、佑奈たんって!
「はいはい、佑奈たん、急いで急いで、時間は待ってくれません。妹ちゃんに早くお着替えしてもらってください」
「あ~もう、わかったから押すな~」
俺は女子三人に囲まれ、なすすべも無く強制お着替えされたのだった。
「は~いお待たせしました~! モデルさん、準備出来ました~!」
俺はギャラリーの待つリビングへと引っ張り出された。ま、ギャラリーつっても、そこには三人しか居ないが。
俺の姿は、以前もさせられた漫画原作アニメの魔法使いキャラ、ラブリィ・キューティのコスプレ。頭の上の方でくくったピンク髪ツインテールと、耳前から垂れる胸元に届くおくれ毛が特徴の美少女キャラだ。黒のシャツに白いネクタイ。短めの黒タイトスカート。そこに白いローブを羽織ってる。顔もメイクされ頬に縦線を描かれ、赤紫のカラコンも入れ、以前した通りのコスである。
待ってる間、瑛莉華さんたちはTVつけて落ちゲーしてた。
くぅ、俺もこっちの方が良かったわ!
「佑奈さん、なんか、その……、すごいね。でもとても可愛いよ」
俺のコスプレを初めて見た奈津美さんが素直に驚きの声を上げる。まぁドン引きされなかっただけマシか。
っていうかさぁ。俺、奈津美さんの一つ下でしかないのに……、この扱われ方の違いは、いったい。
「うんうん、やっぱ佑奈さんのラブリィ・キューティ、再現度が半端ないや。微妙な垂れ目のとこなんか特に! 写真撮りまくろっ!」
モギモギ、お前、便乗して調子乗ってんじゃねえ。お前がちゃんと奏多を制御しとけば、俺、こんなことには……。
「ふふっ、目の前で見せてもらったのは私も初めてですね。じっくり拝見させてもらいます」
瑛莉華さんもそんなこと言ってくるし。あんた、おもいっきり目が笑ってるから!
くっそ~!
俺に味方は居ないのか~?
……うん、いないわ。
がっくし。
俺一人でも写真いっぱい撮られたが、その後みんなが並んで撮りたがり、しばらくは撮影会が続いたが、時間も押してきたのもあり、なんとか終わりを迎えてくれた。
もうね、まだパーティー終わってないのに疲れまくりだわ。
その後は定番『UNO』とか、『ババ抜き』して親睦をはかった。カードゲームとか瑛莉華さんが有利すぎると思うんだが、そこは一番大人な瑛莉華さん。ちゃんとTPOを弁えて能力とかは使わなかった……はず。
最多勝利者は奈津美さん。時点で茂木クン。栄光のビリは奏多である。くくっ、笑っちゃうね。
で、俺はというとブービー。
くっそ、みんな根性曲がってるわ!
ちな、俺はもうコスプレしっぱなしである。また着替えるのなんて面倒がすぎる。最初着てたのも十分コスプレみたいで俺にはもうどっちもどっちって感じだし。ま、目がゴロゴロしてくるんでカラコンだけは外したけど。
一通り盛り上がったところで、しばし雑談しつつ料理も食べ、TVで適当な動画や音楽鑑賞したりして過ごした。
うん、こんなのでいいんだよ、こんなので!
「はい、みなさ~ん。楽しんでますか~? ここでいよいよプレゼント交換タイムといきたいと思いま~す!」
パーティーも二時間近くが過ぎ、そろそろ間延びした空気が漂い出したころ、澪奈たちが動いた。
「えっとぉ、この箱の中に番号振ったスーパーボールが入ってるんで順番に引いてくださいね~!」
今更だが澪奈はサンタをイメージした半分コスプレみたいなカッコしている。もっと言えばめぐちゃんとペアルックである。こいつらノリが半端なくてある意味感心する。真っ赤な丈短めのワンピースの裾や胸元は白いもふもふで縁どられて、広く開いた襟元から胸元のもふもふまで、そして七分丈の袖はレース地になってて肌が透けてるのが微妙にエロい。まぁ中までは見えないけど。
綺麗系の澪奈とボーイッシュなめぐちゃん。どっちもスレンダー寄りの体型ながらスタイルいいからそんな服着てるとすごくバエる。
こいつらはこいつらでバシバシ写真撮られてる。俺も仕返しとばかりに撮りまくる。けど、あいつらは自分であのカッコしてるし、撮られて喜んでるから仕返しにならなかったわ、ちっ。
「はい、もぎもぎ、遠慮せず引いて引いて!」
めぐちゃんが二十センチ四方の上面に穴の開いた箱をグイっと差し出す。
「あ、うん。じゃ引くよ!」
手を箱に差し入れ、中のボールをゴロゴロ引っ掻き回す茂木クン。まぁ七個しか入ってないからイマイチだわ。言わんけど。
「えっと……、に」
「あ~、番号は言わないでいいよ。あとで使うから! 自分のプレゼントの番号じゃないことだけ確認しといてね!」
抜き出したスーパーボールをクルクル回し、かいてある番号を確認した茂木クン。番号言いそうになって澪奈に止められてて笑う。
茂木クンに続いてみんなが次々と引いていく。俺も引いた。俺が引こうとしたら澪奈が箱をすいっと上に持ち上げやがったから、キッと睨んでやった。
ったく、余計なことすんなや!
「うん、みんな引きましたね~? じゃあ、クリスマスツリー前に集合! ツリーとプレゼントを囲むようにみんなで座りましょ~!」
澪奈の指示でみんながツリー前に集まり、そこに敷かれたもふもふカーペットにじかに座る。自然にぺたん座りになってしまうのがなんだかなぁって思う。瑛莉華さんや奈津美さんは横に崩して座ってちょっと大人っぽい。くそ、なんか負けた気分。でも今更変えるのもそれはそれで負けた気分。
澪奈とめぐちゃんは、山になって置かれていたプレゼントを挟むようにして座った。ちなみに番号は見えないように置かれてるから今の段階ではどれがどれだかわからない。じらしよるわ。
「ではいよいよプレゼント確認しちゃいましょう! みなさん自分のスーパーボールの番号、しっかり確認して山の中から探し出してくださいね!」
ってことでみんなが膝立ちでプレゼントに一斉にたかり出す。ま、俺は後からでいいわ。茂木クンも女の中に突っ込む勇気はないのか様子見状態だ。
プレゼントは予算の上限を三千円と決めてあるから、どれを選んでもそう大差はない。あとは選んだ人のセンスが物をいう感じだ。
「はい、みんなプレゼント確保できましたかー? 自分が買ったモノじゃないよねー? おけ? おっけー! じゃ、いっせのせで開けちゃおー!」
どうでもいいが、しゃべりがめぐちゃんに変わった。二人は相変わらず仲いいな。いいこっちゃ。
「はい、おーぷーん!」
俺も手に取ったプレゼントを開けた。置かれてたプレゼントの中で一番でかかった。
キレイなラッピングは開けちゃうのがちょっともったいない気がするけど、仕方ないね。周りからもガサガサ開けてる音がする。時折ビリビリって破れる音が聞こえてくるのはご愛敬だ。ちな、めぐちゃんと奏多な。
「むむぅ……」
こ、これは、喜んでいい、のか?
クマのヌイグルミだった。五十センチくらいはありそう。
うんちゃらベア。
確かに、確かに可愛いんだけど……、元男としては微妙すぎる。
けどまぁ誰が買ったかは想像つくわ。唯一の男参加者、茂木クンだろ。自分にコレが当たることは無いんだから、ある意味選びやすかったろうな。
「お姉ちゃん、それ可愛いじゃん! ちょっと抱きしめてポーズして、ポーズ。写真撮ってママに送る」
クッソ澪奈め、いらんことを。でもあいつも進行役で頑張ってるし、プレゼントされたものを無下にすることも出来ん! くぅ~。
俺は仕方なくポーズとった。
またみんなの写真撮影の餌食になった。
俺、泣いちゃう!
他のみんなのプレゼントも多種多様だったが、まぁ皆無難な選択してきた感じだ。
タオル地ハンカチのセットとかお菓子詰め合わせ、これからの季節にピッタリなマフラー。超無難な文房具セット。この辺は瑛莉華さんあたりが買ってきそうなやつだ。変わったところだと、アニメキャラのグッズ詰め合わせが混じってたんだけど、コレ買ってきたのが誰かなんてすぐわかる。奏多一択だ。
もっと自重して。
でも、それをゲットしたのがまた瑛莉華さんってことで、見方は百八十度変わった。
超ウケる!
奏多、よくやった!
俺?
俺が買ったのはペンのセットだ。普通だろ、普通。
いいんだよそれで。普通が一番!
とりあえず女子どもにプチプラとか選ばない常識はあったみたいで良かった。男の茂木クンが入ってる中でそんなのダメ絶対。
「「じゃあ名残惜しいけど、今日のクリスマスパーティーはこれでおしまいにしま~す! 最後にみんなで写真とろー!」」
澪奈とめぐちゃんが息の合ったあいさつでそんなことを言った。
まぁ是非もない。
クリスマスツリーをちょっと前に出し、その後ろに皆で並んだ。俺の両サイドに誰が立つかですこしだけ揉めたが結局、奏多と茂木クンになった。澪奈とめぐちゃんがゆずった形だ。ま、二人とはよく会うし、妥当なとこか。つうか茂木クン横に持ってきたのにすっごく作為を感じるんだが? 茂木クン、おもっくそかがんでるんだが?
どうせ俺はちいせぇよ!
まぁいいけど。
「はい、撮るよ~! お姉ちゃんがネット掲示板で呼ばれてる愛称は~?」
「「「「「「合法ロリーぃ」」」」」」
ちょ、まっ!
なんだよそれ?
お、お前ら……、お前ら、みんなグルだろー!
そんな感じでクリスマスパーティーめちゃ釈然としない形で終わった。
くっそ澪奈、覚えてろよ~!
ま、楽しかったけどさ……。




