【63】クリスマスパーティー(中)
「茂木ちゃんがさ~、コソコソなんかやってたしぃ。部室に見てくれってばかりにスマホを置いてた時にさ、じゃあ見てあげるって思って、覗いちゃったんだよね~」
歩きながらもペラペラしゃべる奏多。当然のように俺の横に立ち、そしてぎゅっと手を握ってくる。
っていうか人のスマホ勝手に覗くなよ。それ絶対見てくれって言ってないから!
質悪すぎだろ奏多!
「ほんとゴメン、佑奈さん。式守先輩の押しに耐えられなかった」
肩を落としてる茂木クン。
LINIE見た奏多がぐずぐず言い出して押し負け、澪奈たちへ話がいき、手土産とばかりにコスプレの話や写真をばらまき、見事クリスマスパーティーへの参加権をもぎ取ったらしい。奏多らしい呆れるほど強引な手口。
その間、俺への相談全くなし。
はぁ、処置なしだな……。
「ふふっ、佑奈ちゃんは相変わらずの苦労性ですね。よしよし」
俺の隣、奏多の反対側に付いてる瑛莉華さんが普通に俺の心を読みながら慰めるように頭を撫でる。
いやさ、アンタも大概なんだからな?
「あ~、ちょっとお姉さん、佑奈ちゃんは子供じゃないんですから頭なんか撫でちゃダメでしょ?」
そう言いながら瑛莉華さんの手をぺいっと俺の頭から無造作に払いのけた。ちょっと失礼な対応ながら奏多が珍しくいい事言ったと感心しかけたら……、
「撫でていいのは私だけなんですぅ!」
こ、こいつ。なんて自分勝手かつ、自分の欲望に忠実なやつだ。
「あらあら、可愛らしい嫉妬ね。くすっ、お姉さんは仕方ないから退散しましょうか。後ろで見守っておくね」
そう言って俺と奏多の頭をさらっと撫でたかと思うと、あっさり下がって茂木クンの隣に並んだ。
さすがの奏多もちょっとキョトンとしてて笑う。瑛莉華さんのが上手だな。
「えっと、あの、佑奈さん! 今日は一段と、その、可愛らしいカッコしてるね!」
茂木クンが場を繋ごうとしてか、そんなことを言い出した。いや俺が可愛いのは当然だけど、今言わなくてもいいって。それにみんなだってそれなりにいいカッコしてきてるじゃないか!
「だねだね、ぐーかわ! 写真とってこ!」
「そうですねぇ、ほんと可愛らしい」
奏多がスマホ片手に俺と一緒に写そうとするし、瑛莉華さんは眼を細めて面白そうにしてるし。
パーティー始まる前からこんなの、マジ勘弁だわ。
そんなことを思いつつも、俺はがまんして来客たちをパーティールームへと案内した。なんかもう、早速先が思いやられるわ。
***
「お姉ちゃん、お帰り~、お迎えおつか、れぇ……、え? ……あはは、お、ね、え、さ、まっ! どうしたのかなぁ? なんて!」
「ふわ~、ゆーなさん、ちょーふくれっ面。でもゴメンナサイ、全然こわくない。むしろ、かわいすぎっ!」
「お、お……」
「「お?」」
「おまえらな~!」
「わ~、お姉ちゃんご乱心~」
「きゃ~! にげろ~! にゃはははっ」
部屋の奥の方へとわざとらしく逃げていく澪奈とめぐちゃん。
まったく! この二人は……、ほんとにもう!
「佑奈ちゃん、もうそれくらいで勘弁してあげなさいな? やりすぎると式守さんだって困るでしょう?」
「瑛莉華お姉さま、素敵! 奏多感激です! ありがとうございます! でも、ごめんなさい。やっぱり奏多は佑奈ちゃん一筋なんです!」
「あらあら。振られちゃった」
お、俺はいったい何を見せられてるんだ?
「茂木クン、なんかこいつら相手すんのもう疲れた。さ、入って入って。こんな人たちほっといて、さっさと座ろ」
目の前で繰り広げられた茶番に、俺以上に呆然としていた茂木クンに声をかけた。
「え、あ、はい。その、ほんと、うちの副部長がすみません……」
申し訳なさそうに謝って来る。茂木クン。その姿は中間管理職を彷彿とさせ、大変お気の毒である。
「いいからいいから。もう気にしないで、ほらほら座って座って!」
「あっ、手……」
遠慮する茂木クンの手を掴み、強引に部屋の奥へと引き入れる。茂木クンのが二十センチ以上はでかいから引っ張りづらいったらない。それでも尚、先に進んで適当な席に座らせた。
こいつ、ほっといたら最後まで突っ立っていそうだし。
ま、こんな女だらけの場所だし、何処に座るかだって戸惑うだろうしな。わかる、わかるぞ少年!
そんでもって俺はそのまま茂木クンの横に座った。
「ふふ~ん」
「ゆーなさん、やる~」
「あらあら」
「茂木ちゃん、私を差し置いてずるい~! 奏多反対側、希望~!」
「いや、横にはとりあえず瑛莉華さん座って? みんなとも慣れてないんだし、私の隣でいいじゃん。で、奏多は茂木クンの横。それでいいでしょ!」
「な、なんで~!」
などと、初っ端からメチャクチャな展開になったけど、とりあえず面子は揃ったってことで、改まった挨拶もほとんどなく、なし崩し的にパーティーが始まった。
「みなさ~ん、プレゼントはちゃんと用意してありますか~? では、一度みんなのブツを集めま~す。そこのツリーの下に敷いてある、もふもふカーペットの上に持ってきたプレゼント置いちゃってくださ~い。その時番号シール貼ってくださいね~、覚えとくと自分のを引いちゃったときやり直しできま~す!」
集まったみんながぞろぞろと用意したプレゼントをカーペットの上に置いていく。俺もちゃんと用意してあるし。澪奈に言われるまで忘れてたけど……。
電飾も鮮やかなツリーの下に、カラフルなラッピングのプレゼントが集まるとなかなかに華やかで絵になる。みんながここぞとばかりにスマホで写真撮ってる。あ、俺も撮っておこ。
っていうか、茂木クンや奏多、一眼レフ持ってきてるし!
こいつらマジだ。
「あとでくじ引きしてプレゼント交換したいと思いま~す、お楽しみに~!」
そこからは豪華お食事会と化した。
ローストチキンにピザ。パスタにポテトサラダ。ビーフシチューもあれば、もちろんフライドチキンやポテトだってある。飲み物もシャンパン――当然ノンアルコール――に、各種ジュースや炭酸飲料、お茶に水。各種取り揃えてある。
あ、そうそう、クリスマスケーキを忘れちゃいけないな。
二段積みの見事なデコレーションで、イチゴだってずらりと並んで生クリームとのコントラストも最高だ。所々にサンタやトナカイの可愛らしい小さな飾りが付いてたり、メリークリスマスとか文字の形したチョコレートが付いてたりとか、もう食べるのもったいなく感じるくらいだ。
ま、食べるけどな!
資金として会費も集めたけど、それプラス、俺や父さんからコッソリ追加で注ぎ込んだ。父さんには感謝だ。
初対面な人たちもあっという間に馴染んで、部屋の中はなんとも穏やかで心地よい空間になってる気がする。ま、癪だけど、人見知りしない澪奈やめぐちゃん、一応奏多にも感謝だな。
奈津美さん二十五歳や瑛莉華さん二十七歳も、年の近いもの同士でぽつぽつ会話してるみたいだし、安心した。
俺だってほんとはそっち側なんだけどさ。
なんて悠長に構えてたら澪奈がめんどくさいこと聞き始めた。
「瑛莉華さんはお姉ちゃんとどうやって知り合ったんですか?」
うん、確かストーカーされて、突然押しかけられましたな。
「仕事でコスプレ会場に行っててたまたま見かけて気になってね。佑奈ちゃん、目立ってたから」
「え~? いつの間に~?」
「ふふっ、後日、モデルとしてどうか? と、お声がけさせてもらったんだけど、すげなく断られました。でもまぁ仕事以外でこうしてお友だちとして会ってはくれてます。いいお姉さんですね」
な、なに勝手に話作ってんのこの人!
言うに事欠いてモデルって!
「「「え~!」」」
ほら見ろ、女子共入れ食い。
「やだ、私、スカウトされちゃったらどうしよ」
「瑛莉華さーん、私、私とかどうですか? スポーツやってるから体に自信あります!」
「やだなぁ、ついにこの私も写真部のアイドルからモデルデビューですかぁ」
「誰が写真部アイドルですか? 副部長」
「ふふふっ、残念、みんなあきらめてね」
「「「バッサリ切って捨てられた!」」」
混沌だ。
「で、これがこの前佑奈ちゃんが着たラブリィ・キューティの衣装。これうちの洋裁部に作ってもらったんだけど、もうサイコーな出来だった。ちなみに杖はうちの部長が作ったんだよ~」
「おお~、あの写真の杖! かなたんとこの部長、すごいね!」
げ、あの杖、あのでかい部長が作ったの? あのガタイで、あんな細かい細工の杖を? マジかぁ……。
「ふふっ、実は! 今日も! その衣装持ってきてます!」
「「おお~!」」
えっ?
「へぇ、佑奈さんのコスプレ、私も少し興味あるなぁ?」
ちょ、奈津美さん?
あなた、裏切るの? 裏切っちゃうの? そっち側いっちゃうの?
やばい。
嫌な予感しかしない。
佑奈ぴーんち!




