【57】不安だらけの計画実行?
刻々と迫るXデーに向けずっと悶々とした時を過ごしてる俺。
ストレスで胃に穴が開きそうだ。いっそのことすぐ行動すればいいのにとか思ってしまう。まぁ色々事情があるらしいから我慢するしかない。
そんな気分でいる中、スマホが鳴る。
滅多に鳴らない俺のスマホが鳴るとビクッとしてしまう。特に今は。見てみれば妹からのLINIE。
「お、おどかすなよ、ほんと……」
ぶつくさ言いながらLINIEを開く。
『ねぇ、お姉ちゃん、年末はいつごろ帰って来る?』
ま、とりあえずどうでもいい内容だった。
「はぁ、のん気でいいな、こいつ……」
ため息つきながらもコメを返す。
『まぁ二十八、九日くらい?』
『おそ~い、もっと早く帰ってくればいいのに? どうせ暇なんでしょ? なんならクリスマス前でもいいくらいなのに。そしたらパーティーだって一緒に……って、あっ!』
こいつ、何思いついた?
いやな予感しかしないわ。
『あ~、もしかしてモギモギと一緒に過ごしちゃう、的な? うゎ何そのイベント! 帰ってきたら色々教えてね~』
こ、こいつ、こっちは何も言ってないのによくもそこまで……。
『あっそ、もう好きに言っとけばいいよ』
『もう、お姉ちゃんったら短気~! 冗談だって。で、本題~。クリスマスのときそっちにめぐと遊びに行きたいんだけどいい? 一ヶ月遅れだけどお姉ちゃんの誕生祝いも兼ねてさ、一緒にパーッと遊ぼない?』
こいつってば、マジお気楽でうらやましいわ。
『なにお前ら、彼氏と過ごさないの?』
とりあえず突っ込んでおく。
『あ、それ言っちゃう? 言っちゃうの? 察してクレタマエ、おねいちゃん。っていうか言葉遣い~! ま、いいけど、ママの前でボロ出さないでね』
『そんなミスはしない。ま、来るのはいいけど。……じゃあ、帰りは一緒に帰る感じでいいの? こっちに長くいてめぐちゃん大丈夫なの?』
イブに来たとしても二十八日に帰るとすれば四泊はすることになるけど。
『ダイジョブだいじょぶ、お姉ちゃん、めぐママの信用バッチリだし。そうそう、奈津美さんもそっち遊びに行きたいとか言ってたから合流しちゃうかもだけど、いい?』
奈津美さんって、ああ、めぐちゃんのお姉さん。なんかさ、最近のアレのせいで、夏の出来事が遥か昔に感じるわ……。
『いいいい、好きにして。全部そっちに任せるから』
『もう、適当なんだから。けど言質とったからね! 後からやっぱやめたって言わないでよ?』
そんなこと言うか。男に二言はない! あ、元だけど……。
『大丈夫、よろしく』
『じゃ、色々考えとくね! じゃ、また日が近くなったら連絡するね~』
可愛らしいバイバイのスタンプと共に妹は去った。
「はぁ、澪奈とからむと騒々しいな。ほんとに……」
ま、俺っていうかこっちは無事クリスマスを迎えられるかわかんないけど。
もしかして今のが今生の別れってことになるかもしれないな――。
***
日曜日。
とうとうこの日が来てしまった。
今の時間は早朝五時。
辺りはまだ暗く、窓から見える外の景色も夜景と言ったほうがいい。なぜこんな早くに動き出すかといえば、何しろ今から行くところが遠い。それに尽きる。
なら前泊で行けばいいのにと思ったけど、新野見、いや瑛莉華さんの都合でこの強硬軍となった。瑛莉華呼びにまだまだ慣れんわ。
「はぁ~」
吐く息が白くなる。十二月も半ば過ぎ。しかも早朝となればそれはもう寒いのである。もうちょっと中に居ればよかった。もう到着するってLINIEが入ったからそろそろのはずだけど。
なんて思ってたらマンションのエントランスにでかいワンボックスが滑り込んできた。
そそくさと駆け寄る俺。
「お待たせ佑奈ちゃん。こんな早い時間でごめんね、なるべくギリギリまで時間を遅らせたかったものだから。寒いでしょ、さぁ、乗って乗って」
言われなくとも、乗り込むさ~、さむさむ。
車は国産大手メーカーのワンボックス。レンタカーってことだけど、乗るのは二人だけなのにこんなでかいのいるの? ま、いいけど。
「ごはん食べた? 後ろにパンとかお菓子とか、飲み物もたくさん買ってきたから好きに食べてね。暇つぶしに備え付けのTVで映画だって見れるからね!」
いや、遊びに行くんじゃないんだからさ。
「ああ、はい。とりあえずは大丈夫です。自前でも持ってきてるし」
「そっか。じゃ、とりあえず出発しましょう!」
「は、はぁ、よろしくです……。あ、ともかく安全運転、安全運転で行きましょう、ね?」
「任せて!」
そう言う瑛莉華さんの運転する姿はいまいち怪しい。そこかしこから漂う慣れてない感。俺、この人に命預けてだいじょうぶなんだろうか?
俺が運転しても良かったんだけど、断固とした態度で遠慮された。俺の姿が子供すぎてどうにも信用できないっぽい。失礼な。アンタよりよっぽど上手いわ!
俺としてはきいろちゃんを出したかったけど、今からの行動にあたっては目立ちすぎるし、なにより、二人乗りのスポーツカーで、荷物もたいして載せられないとなれば余りに長距離ドライブに向かない。
ってことで泣く泣く諦めた。
行き先は西日本の瀬戸内地方。目的地に着くのは午後二時すぎになる予定。最低でも八時間かかるとかマジ遠すぎ。
「佑奈ちゃん、もっと可愛らしいお洋服着てくればよかったのに」
運転しながらわけわからん事言ってくる瑛莉華さん。
「いや、何言ってるの。着飾る意味ないでしょ? どう考えても動きやすさ優先でしょ?」
動き回るかどうか知らんけど。
ちなみに俺のかっこはいつものスキニーパンツにタートルネックセーター、アウターは起毛のジップアップジャケットだ。外で動き回るわけでもないだろうし、ダウンはいらないだろって感じだ。あ、頭はニット帽ね。髪まとめるの楽だし暖かいし。
「ふふっ、意味はありますとも。もちろん私のモチベ―ション的に! 佑奈ちゃんの可愛さは私の癒しですから。あ、もしもの時用にちゃんとお着替えも準備してあります。私渾身のセレクトです。なんでしたら今から着ていただいてもかまいません。女同士なんですから、恥ずかしがらずにどうぞ~」
「意味わかんないし! 着替えないし! ああもう運転に集中してください」
やばいわ。
ポンコツここに極めりだわ!
今日までの俺の不安に魘された数日間を返せ!
なんのかの言いつつも車は目的地に向け順調に走り出し、高速にも無事に乗ったところでしばらくは変化のない退屈な時間を過ごすことになった。
ってことで、ここはひとつ重要なこと、確認しとかなきゃな。
「ねぇ瑛莉華さん、今から行くとこってどんなとこ? まだ具体的な話、ちゃんと聞かせてもらってないんだけど?」
「ふぁぁい、そぉでしゅたにぇえ~」
「あ、ごめんなさい。それ食べてからでいいですから!」
「ひゅひゅ、ごみぇんにぇ~」
いいから。
口ん中食いモンいっぱいのままでしゃべんなくていいから!
「はうぅ」
急に胸をぐーでパシパシしだす瑛莉華さん。でかい胸がぽよんぽよんする。
ビジネススーツの時は余り気にならなかったけど、私服で、しかもジャケットを脱いだニットセーター姿である今はけっこうすごい感じだ。しかもシートベルトがスラッシュしてて、ソイツが更に強調されてるから余計だ。
いや今はそんなことどうでもいい、とにかくノドに食べ物詰まらせたらしい。
「ああもう、なにやってんですか。はい、コレ!」
俺はうぐうぐしてる恵利華さんに、ペットボトルのお茶を蓋を開けて手渡せば、速攻でゴクゴク飲み干す瑛莉華さん。
なんか出来る女のイメージがだだ下がり。まぁポンコツなのは十分わかってるからいいんだけどさ。
「はぁ~。ありがと、佑奈ちゃん。死ぬかと思いました」
「もう、おっちょこちょいなんだから。そんな変な一面見せなくていいです。それより、落ち着いたんならお話よろしく!」
「佑奈ちゃんが冷たいです」
そんなこたあいいんだよ! 早く進めてどうぞ!
俺はそんな思いを込めて睨みつける。
「まぁ怖い。では、時間もまだだまたっぷりあることですし、しっかり説明させてもらいましょう」
「うん、よろしく」
そんな感じで車中でこれからの計画を聞かせてもらいつつ、俺たちはほぼ予定通り、目的地であるJASPAの宇宙観測センターのある地へと到着したのだった。
大丈夫かな?
でも、ここまで来たら自分たちの力を信じて……頑張るしか……、
ない!




