【54】ーFate ー避けられない運命?
『こんちは』
マンションに帰宅してすぐ、仕方なく新野見さんにLINIEしたわけだが……。素直にレベルアップしたって言うのがなんか怖くてとりあえず挨拶入れてしまった。
あほか、俺。
いやだって、あんだけ思わせぶりなこと言われまくってたらビビるだろ?
『はい、こんにちは! 全て……、全てうまくいったみたいですね』
安定の先読み。
まぁいいけど。
あ、そうだ、レベルアップもだけど……、まずは男の子の話するか。色々言いたいことあるわ。
『はぁ、おかげさまで。新野見さん、マジでもっとましな情報出してほしいんだけど?』
『そうですね。それはごめんなさい。ですが、佑奈ちゃん絡みの未来視は先が読めなくて。私には起こることへの対処をお願いするくらいしか出来ないし、その事態に対しても変な先入観を持ってもらいたくないって気持ちもありますから』
なんか説明になってるようで、なってないような……、知ってたほうが事前に対策ねれるだろ? ようわからんなぁ。
『ほんとビックリだったし! 男の子、ベランダから落っこちて、マジ焦ったし! まぁ結果的に助けられて良かったけど』
『感謝します。佑奈ちゃんのおかげで小さな子供の命を救うことが出来ました。ありがとう』
うう、そんな直球で感謝されては、文句言いにくいじゃん。ずっる。
『もっと早めの対処が出来ればという思いももちろんありますが、私みたいな未熟者にこの世のすべての懸案事象に対処するなんてことは不可能です。ほんの一握りの、手の届く範囲での事象に対処することが精一杯であり、忸怩たる思いでいるんです』
そ、そう言われると……、何も言い返せない。そりゃそうだよな。未来視だって万能じゃない。世の中に理不尽な出来事なんてごまんとあるんだから。
っていうか、なまじわかってしまえば余計つらい……な。
『それで、まだ続きのお話、ありますよね? LINIEで話するのもなんですから、今から会いませんか? ご都合よろしければそちらにお邪魔させてもらいますよ?』
う~ん、とは言っても……やっぱ先読みされるのはなぁ。
……ずっと一緒に居るの、しんどすぎ。こんなのずっと気が抜けないもん。
色々つらいなぁ。
***
「こうして顔を会わせるのは久しぶりですね」
俺のマンションのリビングで新野見さんとご対面である。
「はは、そ、そう、ですね」
「あの男の子は多少煙を吸ってはいたものの、大事には至らず今はもうご家族と一緒にいます。火事の原因は暖房器具からの出火のようです。男の子は風邪で学校を休んでいて、母親は買い物に出かけていて留守。よくある話ではありますが……なんとも間の悪い出来事でした」
な、なるほど。めっちゃ詳しい。情報入手元は聞かないでおこう。
「そ、そっか。まぁとりあえずは……良かった?」
「そうですね。なにしろ男の子の命が失われずに済んだんです。良かったに決まってますね! さすがは私の佑奈ちゃんです!」
「いや、誰がアンタのだよ!」
こ、こいつ、油断も隙もあったもんじゃねぇ。
「え~、私のものにならないですか? 大切にしますよ?」
「いや、ならないから。つうかもういいから! 次の話しよ、次の!」
お、俺の緊張感を返せ!
「ふふっ、地上十四階から落ちてほぼ無傷。奇跡だって大騒ぎになってますよ? 信心深い人が神様が手を差し伸べたってように見えた……なんて語ってたりもしてね」
お、おう。神様って……。けど、俺の関係ない所で騒いでる分にはどうでもいいや。
「まぁ佑奈ちゃんイジリはこれくらいにしておきましょう。やりましたね? とうとう」
イジってる自覚あるんだ?
もうヤダこのひと!
で、やっと話進みそう……って!
「……うん。とうとうやった! ……っていうか、もう当然のごとく知ってるわけね? こわすぎなんだけど!」
「くすっ、佑奈ちゃん、申し訳ないけれど……、あれだけ心を乱してれば嫌でも何があったか気になって、探ってしまいますよ? でも、それでこそ佑奈ちゃん。素直ないい子です」
あ~そう、あ~そう。
悪かったな。どうせ俺の心なんて網のないザルみたいなもんだよ~だ!
しっかしこの人、俺が元男って知ってるくせに、どうしてここまで俺のこと可愛がれるのかね? 不思議でしゃ~ないわ。
「くぅ……、と、とりあえずコレ見て!」
しゃべりではペースを乱されるばかり。俺は口で言うよりとっととスマホのアプリを開き、新たに追加されたLV5のログを見せた。
「拝見します」
俺のスマホをガン見する新野見さんの顔はさっきまでのにこやかな表情から一転、怖いくらい真剣なモノへと変化した。
…………。
「……しかった」
長い沈黙のあと。
「え?」
あまりに小さな声でぼそりとつぶやいたので聞き取れなかった。
「まち……どおし……かったです」
待ち遠しかった?
「やりました……ね。ぐすっ……、ほんとにやってのけました……ね」
新野見さん……、な、泣いて……る?
いやどんだけよ。
「〚その力を以て為せることを成せ〛……これは私のPSI能力の発現時、夢の中で私に語りかけてきた、あの暖かき存在のお言葉に違いない……」
はぇ?
なに言い出してんのこのひと?
「なんとも、はや……『再改変』や『三態変化』という条件はなるほどと思えますが……、『悪となる改変を行わない』……だなんて、なんと困難な条件であることか。先人たちが達成できず、消えていったのも頷けるというものですね……」
「な、なに? どういうこと? 先人たちって何?」
「佑奈ちゃん。あなたも夢で見たはずですよ? 忘れてしまいましたか? 条件を達成できず志半ばで終わってしまった先人たちのことを……」
ええ?
……あ、ああ、確かに……そんな夢、見た気もする。何かしらの警告だとか思ったっけ?
「佑奈ちゃんはやっぱりいい子です。こんな難しい条件を見事クリアしてのけました」
「え~、そんな、褒めても何もあげないからね! っていうか『ちゃん』はもう諦めたけど……『いい子』はやめれ!」
「くすっ。……ほんと、佑奈ちゃんは凄くていい子です。事実ですからね、受け入れてください。でも、これで、これでようやく次のステップに進めます! ギリギリですが、たぶん……間に合いました。ほんとに……」
笑って誤魔化された! っていうかまた言われた!
「あ~もう、いいや!」
いいから、いい加減もったぶるのやめれ。
「そ・れ・で。ず~っと話してくれなかったことって結局なに? 今も次のステップとかわかんないこと言ってるけど、一体なにがどうなってんの? 何が間に合ったの? 教えてよろしく!」
「はい、そうですね。それについて、今からお話しましょう。気をしっかりもって聞いてください」
え、ちょっと、なにその怖い前置き。
やっぱ聞かなくていいかもしんない。
「佑奈ちゃん、LV5になって能力の適用条件が緩和されたことに加え、新たな対象が追加されましたね?」
「え、ああ、そうだね。ヤバいよね、これ。正直使うの怖い……」
「そう思える佑奈ちゃんだからこそ、レベルアップできましたね。いい子です」
も~、また言った!
「認識するだけで改変でき、かつ、形態に対してまでの改変が可能。すなわち物体の状態すら改変できる……ということ。これらの条件がこの先のやらねばならないことに必要となるのです」
えええ?
いやもう頭こんがらがってきた。
「佑奈ちゃん。驚かず、気を落ち着かせて聞いてください。今からお伝えすることは、何もせずこのまま過ごせばこの先必ず起こることです。未来視に間違いはありませんから」
めっちゃ追い込んでくるんですけど!
やだもう、マジで、ほんとに聞きたくない。
あ~~~っ!
「来る一月七日の早朝。関東平野に直径50メートル超の小惑星が落下します」
え?
「詳しく言えば、大気圏突入による衝撃波を発したのち上空20キロほどで爆発四散、その破片が広範囲で地上に落下します」
な、なに、言ってるの?
「それによる衝撃波や爆発による威力は広島に落ちた原子爆弾すら比べ物にならないくらい、すさまじいものになるはずです。私に爆発の威力の説明は難しいですが……、少なくとも首都圏は壊滅的な被害を被るのは間違いありません」
ちょ、ま!
な、なんなのそれ!
嘘でしょ?
冗談でしょ?
っていうか!
こんなの、俺ごときがどうこう出来るの?
改変、役に立つっての?
む~り~!




