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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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53/191

【53】最後のレベルアップ! その裏側で……

 爆風にあおられ、手すりから外に押し出され一瞬ふわっと滞空したかに見えた男の子。


 そんなのはもちろんほんの一瞬。


 男の子は、当然のごとく重力にひかれ真っ逆さまに落ちていく。この高さから落ちれば即死は免れないだろう。



 そんな状況を前に、俺は自分でも不思議なくらいとっさの行動で改変オルターを使った。


 何をどうしたいとかそんな理屈を考える時間など全くない。刹那にとった行動だった。



 落ちてくる男の子の下に、少し離れれば気付けないくらいの薄い水の膜が張られていく。


 幾重にも幾重にも幾重にも幾重にも。


 それが何層あるのかなんて数えようもないくらい、繰り返し繰り返し繰り返し。


 落下してくる男の子がその水膜を出来る側から突き破り、それは地面に届くその時まで続いた。水膜を突き抜ける際の音が、そのあまりの間隔の短さゆえに、一つの繋がった音となって周囲に響く。


 それでもそれは瞬き数回程度、ほんの二、三秒ほどの出来事。


 男の子の落下した軌跡に飛散した水膜によって一気に濃厚な霧が生み出され、周囲はちょっとした濃霧に覆われたかの様相を呈してる。




「あそこに落ちたぞ!」


「急げ!」


「なんだ、この霧? こんないい天気でなんで急に?」


「そんなことどうでもいいだろ、だれか救急車呼んだか?」



 野次馬が落ちた男の子へと一斉に群がっていく。




「はぁ、疲れた……」


 もちろん肉体的にってことじゃなく……、精神的にだ。

 改変オルターでここまで集中したの初めてじゃなかろうか?


 心なしか頭痛もする……。


 男の子の様子が気になるけど、あの中に突っ込んでいく気にはとてもなれない。どうだったんだろ?


 まず大丈夫だと思うんだけど……。





「信じられない! 無事だ。意識もあるぞ!」


「おお~!」


「うそだろ~、この高さから落ちて無事? まじか~」


「良かった~」


「あっ、むやみに動かさないほうがいいよな?」


「そ、そうだよな、色々当たり所悪かったりしてるとマズイし」


「ボク、大丈夫? 頑張ったねぇ、まだこのままジッとしていようね?」


「ううぅん……」


「しっかし、なんでこの辺りだけこんなに水浸しなんだ?」


「ほんとだな? それにさ、この子もびしょ濡れじゃん。まるでプールにでも飛び込んだみたいだ」



 あはは、プールに飛び込んだ……か。


 ま、似たようなもんだしな。


 しかし、まぁ……。

 

 どうやら無事みたいだし。

 俺はこのまま帰るとしようかねぇ。


 消防車、それに救急車の音が間近に迫ってきた。俺のアレがバレるなんてことはあり得ないけど……、変に目立ちたくもない。



 俺は男の子の姿を見ることもなくその場を去った。


「へくちっ」


 あ~、ちょっと体冷えちゃったな。


 帰ったらあったかいココアでも飲もっと。





***



 帰宅途中、尻ポケットに突っ込んであったスマホがブルブルした。


 なんだ? また新野見さん?

 そういや報告してあげなきゃだな。


 マンションまで戻ってからだと待たせすぎかと思い、狙ったように側にあった公園に立ち寄り手近なベンチに腰掛けた。俺が座ると近くにいた小鳥が数羽寄って来て、俺の肩や頭にとまった。


 うん、ちょっと前に改変で懐いた子たちだ。可愛いなぁ。


 まぁそれはともかく、着信の確認しなきゃな。



「あれ? LINIE(リニエ)の着信じゃない?」


 LINIEのアイコンに着信を示す数字はついておらず、代わりにそのマークが付いていたのは……、


「え? 改変のアプリ? マジ?」



 LV4になったときスマホに勝手に入れられたアプリ。最初は頻繁に見てたけどここ最近は変化なしだったから全然見てなかった。俺は慌ててアイコンをタップして立ち上げた。



【Congratulations! 改変レベル更新の条件をクリアしました】



 トップ画面にでかでかと表示された見慣れたメッセージ。



「え、マジ? こっち?」


 いままでならメールで来てたのに。これ作った存在もアプリ使いたいのかね? ってそんなことどうでもいいわ!


「やったじゃん! レベルアップきたよ!」



 うん、とうとう来た。来ちゃったよ。



 なんだろ……、嬉しいはずなのになんかテンション上がんない……。それどころかこの先のことを考えるとちょっと憂鬱まである。



 ううぅ、コレもきっと新野見さんが前情報で俺に色々吹き込んだせいだ。そうに違いない。ああ、LVアップの中身、見たいような見たくないような……。



 でもやっぱ見たい。見よう!


 俺は表示されてるメッセージをタップした。

 いや勢いでタップしたけど、ちゃんとリンクついてるよね?



 画面が一瞬真っ黒になり、表示が切り替わった。よかった。





〚その力を以て為せることを成せ〛




◇川瀬佑奈 かわせゆうな altered


◇年齢 二十四歳


◇性別 女 altered


◇ALT_LEVEL 〇●●●●



 ※_百の対象を再改変しました。


 ※_物質の三態変化を規定量、改変にて行いました。


 ※_前提条件達成まで、生における必然以外において、《《悪となる改変》》を行いませんでした。


 ※_改変オルターレベルの更新条件がクリアされました。


 ※_改変レベルを更新します。





 ◇ALT_LEVEL ●●●●●


 ※_LV5ポイントにおける改変に至る条件は、適合アダプテッドした者が《《認識しえた対象》》に対し発動します。


 ※_改変の仕様は、対象の情報・()()の最適化に加え、適合者の意志に応じて不変的に固定された改変状態を再改変可能とします。ただし適合者にはこの条件は適応されません。



※_LV5特典はありません。



〚祈念は無意義なれば己が知恵にて真を得よ〛



 …………。


 はは、あはは。


 なんだこれ。



 使われてる言葉がやたらムズイけど……、これってやばくね?



 うそ、だろ?



 この能力、やばいって!

 

 こんなの、こんなのもらっても……、俺、困るわ。




 どうしよう……。




























***



「計算によるとTS24Fが地球へ最接近するのは202X年1月7日。1.02分の1というほぼ確実といっていい確率で日本、いえ、はっきり言わせていただければ関東平野の何処いずこかの上空で爆発、もしくは衝突します」



 ――藤村君があの恐ろしい計算結果を持ち込んだあと、よその観測センター、更には国内外の主要研究機関にも情報を提供し、軌道計算を行ってもらったが……。


 すべての結果に置いて我々が計算したものとほぼ寸分(たが)わぬ結果が出るだけに終わった。しかも最悪なことに軌道の交差する先。衝突コースの終着点は日本の関東平野。


 首都圏ど真ん中だった。


 協力してもらった研究者間でWeb会合を開き、意見交換も行ったが、そこで何か建設的な案が出ることもなく、参加した皆は表情を失い、意気消沈とした面持ちで会合を締めることになった。


 なんとも残念な結論を持って、我々は日本宇宙開発機構《Japan Space Agency》/JASPAを通し、国のお偉い方へ話を通してもらうこととなり――、



 緊急対策会議と銘打った、担当者のつるし上げ会議に私はJASPAの面々と共に参加しているという訳だ。



代田しろた君、その結果に本当に間違いはないのかね? 事は重大だ。間違えましたでは許されないんだぞ!」



 このやりとりも何度目だろう?

 あまりの及び腰に辟易へきえきする。その立場は何のためにある?


 それでも、どうあってでも聞き入れてもらわなければ。今更どれだけのことが出来るのかわからないが、少しでも。少しでも、助かる人が増えれば。



「大臣、繰り返しますがTS24F の大きさは直径50メートル級と推定しています。これは、過去にロシアのシベリアで爆発した隕石の1.6倍です。当時、その爆発による衝撃波で、半径50キロ圏内の森林がなぎ倒されました。1000キロ離れた町の窓ガラスが割れるほどだったそうです。今回の小惑星が、もし、もしですよ、同じように空中で爆発すれば、その2倍以上のエネルギーを発するとの計算結果も出ています。そうなれば首都圏は壊滅的な被害をこうむるでしょう」


 のらりくらりな諸大臣はともかく、それぞれの秘書官が私の発言を記録してはいるが、もちろん関連する諸々《もろもろ》の情報は全て提出済であり、しかるべく所に展開されているはずだ。今は言わなかったが小惑星爆発の威力は、爆発の高度にもよるけれど最低でも500キロトン以上、広島型原爆15キロトンの30倍以上の破壊力を持つと思われる。



 大臣らが言うように、間違いであったならどれほど良かっただろう……。


 

 この時間は残念ながら大臣たちがいかにその責任を逃れつつ対策を打てるか、そんな算段をするためにあるといっていい。なんとむなしい時間であることか。


 だがこのお歴々の承認を得なければ何も動き出せないのも事実。事務方が頑張って段取りしてもこんなところで足踏みしていては全てが手遅れになる。



 ほんとに時間がないんだ!



「し、しかしだねぇ。首都圏の人口がどれほどのものかわかっているのかね? この人数を集団疎開させるなど……、一体どれほどの影響と損失が出ることか……」


「残念ですがそれも致し方ありません! 国民の命と金銭。どちらが大事なんですか? それにまだ希望はあります。友好国に働きかけて小惑星の軌道を変えてもらうよう頼むのです! 本来ならわが国で対処出来ればよいのでしょうが、それはとても叶わぬこと。ならばこそ大臣、総理に動いてもらってでも可能性を模索するべきです!」


 小惑星の軌道を変える実験は実際検証もされ、効果も確認されている。もちろんしかるべき準備を入念に行っての上だが。


 しかし……。


 私自身、そう発言してはみたものの、今となってはもう……。



「ああ、なぜもっと早く気付けなかったのかね? そうであったならもっと対策も打ちようが……」




 結局、この日のうちに結論が出ることは無かった。










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※話中の組織や数値はフィクションですので。

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