【40】そんなの急に振られても困るよね!
アプリを一通り見終わった俺はあまりの内容に言葉を失った。能力というよりもこのアプリ自体に。
なんなのこれ。
なんなのこのアプリ……。
もちろん俺如きの頭でいくら考えてもその答えが出ることなんてない。きっと一生無理。
「いかが? 理解していただけた?」
「うう……、把握はしたけど理解なんて……できるか!」
「あら、つれない。でも、ある程度は私の言うこと、聞いてもいいって気分になってもらえた?」
いくら美人とはいえ、正直、こんな胡散臭い人とあまりお近づきになりたくない。でも……、
「その前に教えて。どうして私のこと知ってるの? なんで以前の私の姿のこと、覚えていられるの? 話はそれから」
「うん、それはそうでしょうね。じゃあタネ明かししましょう」
俺の前に座ってる新野見さんが、そう言いながら組んでた足を組み替えた。
見ぇ!
黒だった。
「ふ~ん、今、見たでしょ? いやらしいんだ~。まだそういうのに興味ある?」
「あ、いや、別に覗いたわけじゃないし! 目に入っただけだし!」
「くすっ、わかってます。ちょっと揶揄っただけ。でも女性に変わった今でも男性だったころの気持ちは残ってるんですね。そんな可愛らしい女の子になっても……。ああ、でも、あなたは二十三歳、女の子って言うのも変か……。ほんと、その若さが羨ましい」
この人、懲りずに俺をいじってくるな。絶対いじめっ子タイプ。こういうやつまじ苦手。
「やりすぎるとまた拗ねられますから、話を進めましょう」
うっせぇわ!
はよ、続けろや。例え思考を読まれようが関係ない。俺は思うように行動する!
「あはは、わかりましたから、ね。落ち着きましょう、佑奈ちゃん。こほん。では、お話しします。……正直に言えば最初は偶然でした」
かき乱すだけ乱して、いきなり始まった。
「え? そうなの? なにそれ」
「名刺を見てわかるように私、広告代理店で仕事してますから、都内のコスプレイベントなどはもともとお手伝いさせてもらってたんです。ですから、その日も仕事で出向くことが出来ました。佑奈ちゃん、あなたが参加したコスプレイベントに」
はぁ、そうなの?
あそこに居たの?
つうか、いつの間にやら佑奈ちゃん呼び!
「可愛いからつい。佑奈ちゃんって呼んではダメですか?」
「いやもう別にいいけど、あんた、マジでごく普通に俺の思考読んで会話続けてくよな? 笑うしかないわ」
実はポンコツ違うか? この人。
もうしらん。
「申し訳ありません。私もこうやって本音を出し合って話せることなんて初めてなので……、少し浮ついてるのかもしれません。では、話しを続けさせてもらいます」
はいはい、はよ進めて。
「先ほど偶然と言いましたが、あの場所に行ったこと自体は偶然ではありません。未来視であの場でピンク髪のコスプレイヤーさんを見る光景が浮かんだんです。ただその時点でそれが佑奈ちゃんであるってことまではわかってません」
「なるほど。で、そこで私のこと、覗いたんだ?」
「はい、すみません。私の未来視に出て来る人物。確認しないわけには行きませんでした。それに……、少し違和感がありましたし」
「違和感?」
俺なんて、ごく普通の美少女だろ?
「くすっ、頭の中ではやっぱり俺なんですね。それに自意識も相当高い……、はっ、コホン。い、違和感でしたね。それは、あなたの髪が日本人、いえ、世界中を見渡してみてもまたとないような珍しいものだったからです」
「あ、ピンクブロンドの髪……」
「そう。多色赤みを帯びたブロンドとか、赤毛などは存在しますが、あなたの髪のような……、え~、アニメの世界でしか見ないようなピンク色というのはまず間違いなく前例はないかと。それなのに。それなのに周囲があまりにも普通に受け入れています」
た、確かに。でもそれも当然だ。この姿はあの怪しいWebサイトの改変で成ったもの。でその改変の特典で世界中の情報最適化ってやつをされたんだ。家族すら不思議に思わないんだから。
改変の強制力って言ってもいいくらいの力、恐るべしだよ……。
「そうなのですね。ご家族すらも違和感を抱かない。やはり、あなたの力、素晴らしいです」
また覗かれてる。もうやだ、この人。
「それで? 結局、私の力も今みたいに私から読み取って知ったわけ? あと、なんであんたには私の改変が及んでないんだよ?」
「まぁ、だいたいそんな所です。ところで『あんた』呼びはひどいですね。改善を要求します。私の方がとしう……、え~、いや、まぁその、出来れば瑛梨華……と、名前で呼んでいただけると」
「きゃっか。話しはよ!」
そうそう、あんたのが《《年上》》。
でもそんなの知らんもん。もうポンコツ確定、あくしろ!
「う~、そんなつれない……。まぁそのうち呼んでくださいね。……それで、なぜ私にあなたの改変、オルターでしたか、その力の影響が及んでいないかと言えば、私が私の能力であなたの真実を知ったからです」
ほむもむ。
いわゆるあれか。能力同士は干渉しないみたいな感じ? だから影響受けない? いやでも俺、ガッツリ心読まれまくってるんだけどな。どんな線引きなんだろ。
「そんな感じです。ですので、知らずにいたとすれば、偶然出会ったとしても気付かないままだったかもしれません。でも何の因果か、知ってしまいました。だからあなたが、佑士さんだったということも忘れることは決してありません」
佑士のことを忘れることは……ない?
そっか。
忘れないんだ。
そっかぁ……。
「え? あの? 佑奈ちゃん? どうして泣いて……」
「知らん! ちょっとほっといて」
この後しばらく俺が泣き止まなかったため、小休止となった。タバコ吸いたいとか言い出しやがったから、吸うなら出てけってべそかきながらも却下してやった。
俺の感動を返せ!
***
場を仕切り直し、話しの続きを始めた。
「他に気になることありますか?」
「あるに決まってる!」
「あらあら」
俺に声をかけてきたとき。
「なんで私がレベル4に上がったタイミングで声かけてきたんですか? どうして私が必要って言ったんですか?」
つうか、そもそもなんで俺がレベル4になったこと、わかったんだ?
「佑奈ちゃんは欲張りさんですね。まだそんなに聞きたいことがあったなんて」
くっそ、もう『ちゃん』付け確定かよ? これ新手の嫌がらせ?
「いいから答えて」
「それはもちろん、可能な限りあなたをかん、いえ、見守っていたからです。LV5の私であればそれは容易いことです」
「今、監視って言おうとした! 言おうとしたね、あんた!」
ポンコツな上にストーカー気質まであるよ、やだ~。
「それで? 残りの理由はなんなの? もう早く言ってください。終わりにしたすぎる。この時間」
「はい。そうですね……。私が川瀬佑奈さんを必要とする理由……、それは」
え、何?
いきなり空気、重くなったし。
「未来視で……、見てしまったんです。……が、……きて、………なるのを」
「なに? なんて言ったの? 聞こえなかった」
空気、いきなりめっちゃ重いんですけど。
新野見さんが突然クール系の美女に戻ってしまったんですけど。
「ごめんなさい。やはり今はまだ、お伝えするには早いです。LV4である川瀬さんにお伝えするのは酷です」
「なんだよそれ。ここまできてそれはないだろ?」
「すみません。私も少しばかり舞い上がってしまっていました。今は良くないことが起こる……ということだけご理解ください」
ちぇ、素直に謝られたら突っ込めないじゃんか。それに、良くないことってなんだよ。気になりすぎるわ!
「とにかく、川瀬さん。レベルを。レベルを5まで上げてください。なるべく早く。LV5になった暁にはぜひ話させていただきます。いえ、話さないといけないんです」
めちゃ真剣な顔だ。マジだ、マジだよ。
「私の力は所詮形のないもの。無力です。でもあなたの力は違います。LV5となったあなたの力。その力ならば……、きっと」
未来視で見て知ってるんだよな。LV5の中身を。あまりに漠然とした話で今でも全然わからんけど……、
「まぁ、なんだ。言われなくてもLV5にはいずれなるつもりだけど。でもなぁ、ひっきーな私にあまり期待されても……」
「急かすようなことを言いましたがまだ時間は十分あります。ですから、期待ほどほどで待ちます。でも諦めることだけはしないで」
うう、胃が痛くなりそう。
「ちなみになんだけど。未来視で私が力使ったとしてその結果はどうなるの? 当然解決できるんだよね?」
どうなのよ?
「わかりません……」
は、はぁ?
「なんで! 未来視でしょ? こんだけ言ってきたんだからうまくいくんでしょ?」
「佑奈さんのLV5の力を行使した結果は私の力では見通せませんでした。残念ながら……」
そ、そんな。頑張ったとしてもその結果がどうなるのかはわかんないのかよ!
まじクソゲー!
ゲームじゃなく、リアルだけど……。
なんで俺がこんな目に。
勘弁してくれ~!




