【37】暇なときは余計なことをしがちな件
母さんの実家にはそれほど長時間滞在することもなく、明るいうちに失礼させてもらうこととなった。実質いたのは四時間にも満たないと思う。忙しないとは思うけど、長く居たいかって聞かれれば、全然そんなことないと答えるのみ。
やることないし、居ずらいし。仕方ないね。
「また遊びに行ってもいい?」
ま、それでも澪奈は凜とはより親交を深めたみたいでLINIE交換とかもしてた。
「凜ちゃんならいつでも大歓迎。なんならお姉ちゃんとこに一緒に遊びに行こう! お姉ちゃんのマンションからなら私もそれなりに案内できるし~」
は? 何言ってんのこいつ?
「うわ~、ホント? うちっておばあさまが厳しいからなかなか泊りの旅行なんてできないから。でも佑奈さんやみいちゃんとならお許しもらえるかも!」
凛もノリノリである……。
澪奈め、いつも勝手に話し進めやがってもう。俺のマンションは遊びの拠点じゃねぇ!
って声を大にして言いたい。
けど、凛の顔みてるとそれも言えない。控えめで和風美女な凜がとても嬉しそうにしてるから。余計なこと言って気落ちさせるのは野暮だってことくらい俺だってわかる。
ま、俺が一番年上なんだ。
面倒だけど、その時は甘んじて旅行拠点として部屋を貸してやるさ。ちくせう。
「いいよね? お姉ちゃん」
探るような目で俺に聞いてくる澪奈。断れないってわかってるくせに。ほんとずるいよな我が妹さまは。
「いいよ。でも何するにしてもちゃんと許可もらってね」
凛も二十歳になったんだし、なんで許可いるんだ? って気もするけど……。よそんちのことに口は出せない。
ま、いいとこのお嬢様なんだしそれもしゃーなしかね。
「ありがと~!」
なぜか俺は澪奈と凜、二人に抱き着かれ一番ちびの俺は危うくこけそうになった。
ったく。勘弁して。
帰るときはおばあさまを筆頭に家族総出で見送られてちょっと引いた俺だった。
おじいさまは終始無言で、にこにこしてただけだった。
声、聞いたっけ?
つか呼び方移って草。
家に帰り着いたとき、父さんは心なしか頬がこけてるように見えたのはきっと気のせいじゃないと思う。
***
母さんの実家についていったのを最後に、長いお盆休みを実家の自分の部屋で過ごした。
もう絶対何もしない!
そう心に決めてぐ~たらして過ごした。けど、ほんとに何もすることないとそれはそれで退屈すぎた。
ひまだ~!
なのであることをして有意義に過ごすことにした。
自分の部屋は二階にある。窓の外を見れば家々が適度な間隔を置いて建ち並んでるけど、街路樹や小さな公園が多いこともあり、案外緑多い景色が広がっているのがわかる。
いわゆる、閑静な住宅街ってやつなわけである。
うちの庭もそれほど大きいってわけでもないが、母さんの趣味で色んな樹々や季節の花々が植えられたり、プランターで並べられてたりして癒される空間が出来上がってる。ま、花の名前なんかなにもわかんないから何が咲いてるとかはまったくだけど。
あ、いや、ひまわりや朝顔くらいはさすがにわかる。うん、わかる。
話しそれた。
で、何が言いたいかというと、そういう環境だと色々な野鳥がけっこうな数、うちの庭にも集まってくると言いたいわけだ。
俺は、そんな庭に集まってくる鳥たちを使って実験してみることにした。
今まで改変を使ったのは人の記憶や、写真とかPCのデータくらいで、他に試したことはない。たぶん。
なので。
庭に集まって来る鳥たちに改変の効果を及ぼすことができるのか? それを試してみようと思った。
決して暇つぶしではない!
決して。
「さて、どうするかな」
鳥相手に改変の実験するのはいいけど、何すればいいんだ?
効果あったと判断できなきゃ意味ないからな。
「う~ん……」
悩ましい。
「むむぅ……、うん、こうしよう」
俺は思いついた案を実行すべく、窓から外にいる鳥たちを睨みつけ、改変した。外に出なかったのは鳥に警戒されないようにするためであって、エアコンの効いた部屋から出たくなかったからではない。ないったらない。
ちなみに標的にした鳥はスズメである。警戒心の強いスズメは実験対象として最適である。
……まぁぶっちゃけ、スズメしかいなかったんだけど。
が、その効果は絶大だった。
「おわっ! ちょ、おまえたち、窓ガラスあるから突っ込んできちゃダメだって!」
庭でちゅんちゅん鳴いてたスズメたちが一斉に俺の方に向かって飛んできて、部屋に突入しようとした。当然窓は閉めたままだったから、このまま来たらガラスとぶち当るだけだ。やめて~。
きちゃダメだって言っても通じるわけもなく。慌てて窓開けたよね。ヤバイわ。
『ジュジュジュ』
『チチチッ』
「まじかぁ」
バサバサ飛び込んできたスズメたちが俺の頭や肩、膝の上って感じで止まれそうなところに遠慮なしに乗って来る。軽く十羽以上いるんですけど?
「まじかぁ」
まさかここまで効果あるとは。さすが野生。来るとなったら来る。マジ遠慮なしだ。すげぇわ。でも意志の疎通は、当然今もできないわけだけど。
何したかと言えば、話は簡単。
スズメたちに、俺はお前たちの親だぞって刷り込んだ。
それだけのことだ。
素直だよね、野生の生き物って。
「あ、こら、髪の毛つつくな、ひっぱるな~!」
ど、どうすんの? これ。収拾つかないんですけどっ!
「おま、糞落とすな! あ、キーボードの上はダメ、やめて~!」
ぎゃ~!
結局、再度改変しまくって部屋から追い出した。
俺は猫だぞ~! ってな。
ちょっとかわいそうだったけど、やむを得ない処置だ。あのままでは俺の部屋が糞まみれになってしまう。
何やってんだろ、俺。
「シャワーあびてこよ……」
***
真昼間からシャワー浴びて出てきた俺を見て母さんが怪訝な顔で声かけてきた。
「佑奈ったら、はしたないカッコでうろついて……もう。こんな時間にシャワー浴びるなんて、どうしたの?」
俺はキャミソール一枚だけのパンモロ状態だ。胸はキャミの下で自由にしてもらってる。いや、急だったから……。すぐ部屋に戻るから許してお母さま!
キャミは妹がコレ着てみてって買い物行ったときに勧められてね? 着たらTシャツより涼しいし、案外いいんだよね……。
「部屋でスズメに襲われた。もう糞まみれで最悪」
あ、しまった。頭からっぽでつい正直に答えてしまった。
「はぁ? どうして部屋でそんなことになるの?」
「あ、いや、その……、えっと、ご、ゴメン母さん、忘れて!」
…………。
俺はその場に居づらくなって速攻、二階に退散した。
やってしまった。
「気まずい……」
家族には改変、もう使いたくなかったのに……。自己満足な、自分勝手な思いだけど。
つい使ってしまった。
「あ~もう、自己嫌悪……」
そんな最低な気分に浸ってる最中。机の上に放り出してあったスマホから短く着信音が鳴った。この音はLINIEじゃなくメールだ。
メールの着信なんて早々こない。ゴミメールはスマホには来なくしてあるし。
「もしかして例の……」
あれか? あれなのか? つうかもうスマホに来るのがデフォ?
スマホを手に取り、メールを即座に確認する。
【Congratulations! 改変レベル更新の条件をクリアしました】
……やっぱり。
俺はベッドに腰を下ろし、メールの中身をじっくり中身を確認することにした。
今度はいったいどうなることやら。
熱でそう。




