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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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【32】改変(されたカラダ)の不思議?

「か、かゆい……」


 深夜。


 なかなか寝付けなかったものの、それでもいつの間にか眠りに落ちていた俺。


 なのにあまりのむずがゆさに目が覚めた。ベッドわきのチェストに置いてあるスマホを手に取り時間を見る。


「まだ二時半じゃん。ったく、せっかく眠れたのに……、なんなんだよ、まったく」


 ベッドに入ったのは二十三時すぎだったから、まだ三時間ちょいしか経ってない。しかも起きて意識しだすとむず痒さが増してくる。痒みの発生元は当然昨晩のズル剥け傷だ。でっかい絆創膏を貼ったその中が究極ムズムズする。


「あ~もう、我慢できない」


 ベッドから跳ね起き、洗面所へ向かう。痒いのにかけないこのジレンマ。


「かゆい、かゆい!」


 俺は洗面台の椅子に座り込んで、鏡とにらめっこしながら頬っぺたのでか絆創膏をがしにかかる。まだ貼ったばかりなのにもう剥がすってどうなの? とか、どうでもいい。確認しないと気がすまない。


 少なくとも、もう一度傷を洗って消毒し直す!


 肌にぴっちり貼りついた絆創膏を剥がすのはけっこう怖い。ピリッとめくれて傷を刺激したら大変だ。


 慎重に、慎重にはがす。はがす。はが……、


「ん? んんっ?」


 な、なにこれ……。


「痛くない……、あっ、取れた」


 返って来るだろう痛みを覚悟してたのに、拍子抜けするほどあっさりめくれた。痛みなんて何もなかった。それどころか肌を覆ってた異物が無くなってムズムズ感が無くなりスッキリしたまである。


「う、うそだろ……、マジ? これ」


 ズル剥けて赤く腫れあがり、血まで滲んでた名刺サイズくらいの傷。ジュクジュクしてたはずのその部位に今やその面影はないように見える。


「ええぇ?」


 軟膏とかで肌がべとついてるので手早く水で流し、濡れタオルでそっとぬぐいとった。


「やっぱない。治っちゃってる? これ」


 傷があったことは薄っすらわかる。周りの白い肌にくらべ、そのあたりは淡いピンク色で……そのあれだ、かさぶた取れた時みたいなちょっとツルっとした肌してるから。


「あ、ありえないって。たった数時間であのズル剥け傷が治るはず……ない」


 俺、もう混乱の極致。


 とりあえず、もうケガはなくなってしまったので後始末だけしてベッドに戻ろう。ただでさえ寝つきが悪かったのにこれ以上夜更かししたら明日の帰省に響く。つうかもう充分やばい。


 俺、体力の無さだけは自信ある。


 最後にもう一度鏡とにらめっこする。


「うん、どう見ても傷治ってる。つか、なんかさっきよりピンクみ薄れてて、もう傷だかどうだかわからんくなってきた……」


 で、更にもう一つ。今更ながら気付いた。


「ぶつけた頬とかひねった首とか……、痛くないし」


 どーなってんのよ、もう!


 ぐちゃぐちゃな思考を引きずりつつも、ベッドに戻り横になる。寝なきゃいけないのに頭が冴えてしまいなかなか眠れそうにない。


 けど横になってしばらくすれば、さすがに冷静になってきた。


改変オルター……、そいつのせいに違いないよなぁ」


 逆に、それ以外になにがあるというのか?


 でも改変は物の造形とかは変えられない認識なんだが……。


 俺の目の届く範囲、10m圏内の物、それも二次元的な物だけ変えられる。あと人の記憶をいじるとか……。それでも十分すごいけど、ケガを治すとか、そんな魔法みたいなことは出来ないはず……。


 …………。



 あっ!


 いや、ちょっと待て。


 あるじゃないか。盛大に形が変わった例が。



 俺だ、俺。


 俺、男から女に変わってるし!


 盛大な物理的変化じゃん、コレ。



 俺は過去のレベルアップ時のログみたいなのを確認するため、スマホのメモを開く。メールは消えてしまって確認しようもないから、覚えてる限りをメモっておいたのだ。


 

「も、もしかしてコレ? コレのせい?」



 LVアップ時のログの定型文みたいなやつ。


 『改変の姿がふへん的に固定される』


 LV2でも3でも同じようにこんな文言が出てきてたはず。


 『ふへん』……が、『普遍か不変』、どっちだったか記憶があやふやなんだよなぁ。でも改変的にはやっぱ『不変』か?


 いや、不変って改めて考えるとかなり強烈じゃね? 意味をネットで調べてみれば……、


 不変=変わらないこと。変化しないこと。いつも同じ。


 そんな説明が出てくる。


「……これ、どう捉えたらいいんだ? 変化しないって、どういう……」


 今の、改変された俺の姿が不変的?


 さっきの話でいえば、怪我した姿がイレギュラーとして捉えられ、改変のルールにのっとって元の状態に戻されたってこと?


「いや、まてまて。それってどこまで当てはまるの?」


 百歩ゆずって怪我はいいさ。すぐ治って非常に助かる。病気にかかったらどうなるか……とかも気になるけど。


 でもそんなことより!


 不変的って、改変のルールの中で成長とか老化って、どういう扱いになるわけ?


 まさか今のこの姿のまま、一生この姿のままってことないよね?


 ず~っと少女っぽい見た目のままとか……。



 そんなこと……、まさかない、よね?


 月のアレも毎月来てるし、お腹も減るし、汗かいたり泣いたり、色々新陳代謝だってある。生きた体なんだからちゃんと年も取っていくよね?



 俺はスマホを投げ出し、目をつむる。もう寝て忘れてしまいたい。こんなこと気付かなきゃよかった。


 なんで怪我なんかしちゃったんだろ。


 すぐには答えの出せない問題に、さっきまで以上に頭が混乱してしまう。ぐるぐるグルグル、いやな考えが頭に浮かんでは消える。


 薄暗い部屋の中。


 俺はいつしか眠りに落ちるまで、ずっとそんなことを考えていたのだった。



***



「あ~、もう最悪……」


 翌朝、スマホの目覚ましで強制覚醒された俺の気分はサイテー最悪だった。


「俺自身の内面は改変されないのな」


 ブルーな気分も改変で、爽快そうかいにしてくれや!

 『俺』って言葉は人前で口に出せなくされたのに、どういう違いがあるんだっつうの。


「あれだな、一人でいると独り言が増えるってほんとなんだな……」


 ダメだダメだ。夜の出来事をまだ引きずってる。あんな考え、なんの根拠もない……とも言いきれないけど、そうなってしまうと決まったわけでもない。


「くっそ、マジ改変オルターってなんなんだ。こんなの俺いらないよ、もう」


 改変がなけりゃこんな思いをすることも……、って、そ、そうか!


 改変で変わったのならまた改変で戻せばいいじゃん。今は無理でも、レベルアップしていくうちにいつかは……、いつかは自分自身を戻す改変だって出来るようになるかもしれない――。




 気分転換のつもりでバルコニーに出た。

 

 早朝のまだ涼しい空気の中、朝日を浴びれば、寝起きで低体温な体も温まり陰鬱いんうつな気分だって多少マシになろうというもの。


「だいたい考えすぎだって。改変で不老みたいなこと、なるわけないって。何考えてたんだ、夜中の俺!」



 ……はぁ、カラ元気、おつ。



 でも病は気からとも言うし。とりあえずできること、地道にレベル上げ……しよ。


 ま、次のレベルアップの条件、わからんけどね。



「でも、何よりまずは帰省しなきゃだ。てか、やっば。こんなにのんびりしてたら新幹線に間に合わんくなる! 母さんに叱られる」



 先のこと考えてもしゃあないし、ひとまず日々を堅実に暮らす、だな。


 うん。


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