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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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【29】トラブルのアフターコスイベ

 コスプレイベントは俺の人生の中で一二を争う、人と話した日になった。


 休憩してても、みんなと歩いてても、至る所で声をかけられた。俺はもうずっとテンパってて、人とのやりとりは澪奈やめぐちゃんに任せっきりだったけど、それでもずっとしゃべらないってわけにもいかず。


 いや、ほんと、大変だった。


 写真撮影も最初は断ってたけど、残念そうな顔をされたり、何でだめなの? って食い下がってくる人もいて、結局もう撮ってもいいってなってしまった。


 ま、そもそもコスプレしてる時点で普通断る奴なんていないよなって話し。


 澪奈たちもそこまで深く考えてなかったみたいで、多少申し訳なさそうな顔を俺に見せてはいた。ちょっと前にネットでさらされて母さんにあきれられたばかりなのにまたコレだと、次は何言われるやら?


 とは言ってもマナーなんて無いに等しい匿名掲示板で晒されるのと違って、趣味のイベントでの撮影なんだし、早々変なことにはならないだろ。きっと。


 所詮俺はただの一般人に過ぎない。

 意識過剰はほどほどにってね。


 そもそも俺だって結構人のコスプレ撮らせてもらってるし。お互い撮りあいっこだってしたし。俺の髪が地毛だって知るとみんなビックリしてたし、なかなか信じてもらえなかったのは面白かった。


 よっぽど変な奴とか、勝手に写真撮る奴いたら、改変オルターで写真データを改ざんしたろって思ってたけど、そんなことにもならなかった。また来てもいいと思えるくらいには、みんないい人ばっかだった。


 なにはともあれ、引きこもり系社会人の俺氏がんばった。



***



「お姉ちゃん、ぼーっとしちゃって、もう疲れちゃった?」


「え? いや、別に……、ううん、そうだな。疲れた。精神的に。もう当分人の前に出たくない。何もしたくない。マンションに引き籠っていたい」


「そ、そんなに~?」



 俺たちは会場を出て、隣接してる高層ビルの最上階近くにあるレストランで遅めの昼食にありついてる。地上二百メートル以上の高さからの展望を前にしての食事は格別だ。格別のはずなんだけど、今は疲れた気分のほうが大きくて景色楽しむ気分に全くなれない。


「ゆーなさん、がんばりました! よしよし」


「ちょ、めぐちゃん。やめ~」


 丸テーブルの四人掛け席で互いに対面して座ってる中、右隣に座ってるめぐちゃんが俺の頭を撫でてきた。年下に頭撫でられる元男ってどうなの?


「もう、照れなくていいのに。絵面えづらはぜんぜん悪くないです。むしろモギモギにとってはご褒美です! 見てください、顔がにやけてます」


「え? そうなの?」


 ついめぐちゃんの口車にのって茂木クンの方を見てしまう俺。茂木クンはめぐちゃんの正面だ。ってことで俺の正面は澪奈が座ってる。この微妙な席の配置な。ま、茂木クンは俺の正面に座れるほどの根性なかったってことだな。


「へ?」


 口いっぱいの食べ物でほおがパンパンになってる茂木クンが、話を急にふられて目をパチクリさせてる。見てないし。食べるのに必死じゃん。


「モギモギ、さいてー。話あわせろや、この~」


「ええっ? な、なんだかわかんないけど、ひどくない?」


 めぐちゃん、茂木クンに理不尽すぎワロタ。よっぽど腹減ってたのね? 茂木クンには色々面倒かけたしな。そりゃ色気より食い気だよな。すまん。


「う~ん、まだまだだね、モギモギ。……ま、いいか。私もごはんた~べよ」


「食べたら周辺色々散策しようね! 気になるお店とかもいっぱいあったし。ね、めぐ」


「そだね~。せっかく来たからにはトコトン行っとかないとね。楽しみがすぎる!」


 こ、こいつら。体力底なしか? 俺は食べることすらしんどくて、頼んだパスタ半分食ったところで力尽きてしまったというのに。


 これが若さか……。


 

***



「あ~あ、ゆーなさん、寝ちゃったよ。どうするのこれ」


「う~ん、ちょっと私ら調子にのりすぎちゃった……、かもねぇ」


 色々見たり買い物したりした後、茂木君とは行きに待ち合わせた交番前で別れ、私たち三人は帰りの電車に乗るべく、駅のホームへと向かった。途中まで送ろうかって言ってくれてたけど茂木君も疲れてそうだったから断った。


 ちなみに買い物した荷物やコスプレグッズの入ったリュックとかはもう宅配でマンションに送った。手元には小ぶりなショルダーバックを残すのみ。とても身軽になった私たち。


 そんなわけだけど。


 ちょっと座りたいと言ったお姉ちゃんの言葉に乗り、通りの所々に設置してあるベンチに腰掛けてしまったのがいけなかった。


 ほんの少し、ちょっと目を離した隙にお姉ちゃんは眠りこけてしまった。はやいよ。はやすぎだよ!


 お姉ちゃんの頭がこてんと私の肩に乗ってきた。何この可愛い二十三歳。


 肩に頭を預けて眠るお姉ちゃんを二人して見つめる。ちょっと疲れた表情を浮かべてるものの、眠ってるお姉ちゃんの顔を見てるだけで癒される気がする。我が姉ながらほんと可愛いがすぎる。


「これ、起こす? でも起きたとして電車やバスの乗り継ぎとか大丈夫かな? 不安しかない」


「だよねぇ……。よ~し、これはもうタクシーで帰ろう! 安心安全だし、何より私らもラクチン!」


「おおっ、みーな太っ腹! ここからマンションまで高そー。大丈夫なわけ?」


 そんなのお姉ちゃんのカードがあれば余裕!


「お姉ちゃんを連れ帰る手間賃としてそれくらい出してもらおう。お姉ちゃん自身に!」


「いいのかなぁ? 今ネットで調べたら一万五千円越えは確実っぽいけど……」


「なんだ、それくらい全然問題ないでしょ。決まり、それで行こ~!」



 そうやって寝てるお姉ちゃんはさんで話し込んでた、そんな時。



「ねぇねぇ、君たち、どーしたの~? こんなところで座り込んじゃってさぁ」


「その、調子悪いの~? おれら~が手を貸したげよっか~?」


 しくった。お姉ちゃんに気を取られて気付くの遅れた。めちゃめんどくさそうなやつらだし、何より頭わるそう。


「あ、いえ、ちょっと疲れて寝てるだけだから。気を使ってもらってどうもです」


「そーそ、大丈夫だから。そういうことだからばいば~い、なんて」


 私もメグも断りの言葉を返したけど……、まぁ、絶対あきらめないよね、こんなやつら。


「まぁまぁ、そんなこと言わないでよ。ちょっとそこらあたりのカフェで休憩していけばいいじゃん。寝てるも、なんだったら俺たちが優しく運んであげるよ~?」


 そう言いながら下世話な笑い声をあげるやつら。ジャラジャラとチェーンやブレス、ネックレスとかのアクセを付けまくった男二人。チャラいけど、それなりの体格してて、ちょっと……、いや、かなり怖い。いつも元気なメグも、そんなのが相手ではさすがにテンション急降下したみたいで表情もかたい。


 どうしよう。


 メグと二人、知らず知らずのうちに握り合った手がかすかに震えてる。


「ほらほらぁ、早くいこうよ~」


 はっきりしない私たちに、男がしつこく声をかけて来る。私は誰か手助けしてくれないかとぐるりと周りを見渡すも、いつの間にか周囲から人が居なくなってた。ちょっと前までそこそこそばにいたと思うのに……。


 それでも興味はあるのか、離れたところからこちらを見てる人もそれなりにいるのがほんと腹立つ。見てないで何か言ってよ!


 私に寄りかかって寝てるお姉ちゃんを肩からぎゅっと抱きしめる。


「なんだよ~、俺たちやさしいよぉ、ほらぁ、立ちなって~」


 男二人が私たちの両脇に近寄ってきて、とうとう手を伸ばしてきた。


「だから、行きませんから。私たち、もう帰りますから!」


「だいじょうぶ、ちゃんと()()送ってあげるから~」


 ああもう、ホントしつこい。どうしたらいいの。


 あ、()()、助けて!


 な、何考えてるんだろ、私。私に兄貴なんていないのに……。困惑してると抱きしめてたお姉ちゃんの体がびくっとなって頭が肩から離れた。



澪奈みいないじめちゃダメ! めぐちゃん怖がらせちゃダメ! お前らなんかどっか行け!」


 

 お、お姉ちゃん?



 起きたと思ったらそんな言葉を発し、そしてまた私の肩に頭をこてんと乗せてきた。


「え?」


 うそ、また寝ちゃった? 寝惚けてるの?


「あっ」


 メグが男たちの方を見ながら驚きの声を上げた。その声ではっとした私もつられてそっちを見た。


「行っちゃった……」


「行っちゃったね……」


 あんなにしつこかった奴らが、何も言わずに離れて行った。わけわかんない。でもとりあえず面倒ごとにはならずに済んだみたい。これじゃこの前ナンパされてたお姉ちゃんのこと、もう笑えないな。


「はぁ、やばかったね。もう、どうなるかと思った。奴らしつこすぎ。そしてゆーなさんの声が尊すぎた!」


「また寝ちゃったけどね……。なんであいつら離れてったんだろ?」


「さぁ?」


 二人して疑問に思ってたらまた誰か近づいてきた。


「君たちかい、男二人にからまれてたというのは? 通報があってね。急いで駆けつけてきたんだが」


 お巡りさんだった。遠巻きに見てた人たちの中に通報してくれた人がいたみたい。さっき腹立つとか思ってゴメンナサイ。ってことは、奴らが離れてったのはお巡りさんを見つけて?



 私たちの無事を確認したお巡りさんは軽く説教たれてから、去っていった。理不尽がすぎる。最後の最後にケチがついて、楽しかった一日がなんとも締まらない終わり方になってしまった。


 寝惚けておぼつかない足取りのお姉ちゃんを二人で支えながら、タクシー乗り場までたどり着き、無事乗り込んだところで私たちの緊張の糸はプツリと切れた。


 反動でテンション上がりまくりの私たちは、寝てるお姉ちゃんを挟んでずっとしゃべってた。運転手さん、さぞうるさかっただろうなぁ、ゴメンナサイ。



 最後の出来事は私とメグの中で封印しとこうってなった。親バレしたら鬱陶うっとうしすぎるし、茂木君も気にするだろうし。



 しばらく行く気にならないけど、今度行くときはボディガードに彼氏連れてかなきゃね。



 ま、いないけど。



 とりあえず。お姉ちゃんが終始気持ちよさげに寝てたのがしゃくだったので、私とメグは柔らかそうなお姉ちゃんのほっぺをつねって憂さ晴らししたのもナイショにしとこう。


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