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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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【24】もうすぐ夏。夏はイベントの季節です

 六月に入り、鬱陶しい梅雨の季節となった。


 ま、さらされてから、ずっと引きこもってる俺にはどうでもいいことだけどね。あれで俺に何か影響があったかといえば特にない。


 いや、ないってことは無いか。


 家族の俺への過保護ぶりが一層激しくなった。


 母さんは、事あるごとにもう帰ってこいって言うようになって面倒くさいったらない。父さんは今のところ俺の意志を尊重してくれてるけど、これも母さん次第でいつ意見をひるがえすかわかったもんじゃない。


 そんな中。妹、澪奈みいなの立ち位置は微妙だ。俺のことが心配なところは両親と一緒なんで、帰ってくればいいのに……と思ってはいるはず。


 でも。


 将来自分も上京したい澪奈としては、俺が地元に帰ってしまっては、拠点にしようと目論んでる俺のマンションに居候いそうろうできなくなってしまう。俺が戻るとなったら当然、高額な賃貸マンションを維持する必要なくなるからな。

 澪奈が引き続き借りるってのは無理だ。こっちに来るのは大学に行くからであって、そんな立場の妹に賃貸料なんか払えない。もちろん今だって父さんが補助してくれてるけど、その額は三割程度であとは当然俺が出してるわけで。


 ま、最初の内はもうちょっと多めに出してもらってて、親に甘えてるのは俺も一緒だけど……。


 もちろん安価なアパートを探せば親の補助だけでやっていけるだろうけど、お嬢様暮らしに慣れてる澪奈にそれで我慢できるかどうか微妙。っていうか絶対無理だと思う。そもそもろくなセキュリティのない安アパート暮らしなんて両親が許可しないと思う。


 今まさに俺のことを心配してる母さんを見ればわかる。最近よく言ってるんだよなぁ、どうして佑奈ゆうなに上京許可を出してしまったんだろ? って。すまない母さん。その時はまだ男だったし。だから考え方も違って当然だと思う。


 俺のことはいいや。


 とにかく、澪奈は俺に戻ってこいとは強く言えないのである。


 俺としてはしばらく大人しくして母さんの帰ってこい熱が冷めるのを待つ。それ一択だ。なので引きこもり活動を鋭意続けていこうと思う!


 そんな引きこもり中の俺だが、ただいま女性特有、月に一度のアレがまた始まってしまった。俺の人生で二度目のアレ。


 今度は前回みたいなミスはしない。俺は学習出来るいい女なのだ。しかし、外は雨で鬱陶しいは、晒されて気分は落ちるは、とどめにお腹シクシク痛むわでいいことない。


 こういう時は趣味部屋で頭空っぽで積みゲー崩しでもして、溜まったゲームの消化に勤しもう。そして疲れたらひたすら惰眠をむさぼる。俺は痛みが強く出るみたいで、母さんに勧められた鎮痛薬を飲んだりもしてるから、すぐ眠くなるし。


 うん、そうしようそうしよう。




***




 特に変わったこともなく六月はうつうつと過ぎ去り、七月に入りジメジメ梅雨ももうすぐ明けそうな今日この頃。


 ずっと引き籠ったおかげか、実生活において晒された影響を受ける……なんてこともなかった。ま、今どきちょっとネット上に顔が出たくらいでなんか起こるとか、考えすぎだとも思う。

 

 SNSで自ら顔を晒してるやつなんてごまんといるし。


 うん、考えすぎ。


 月初め、多少のずれはあるものの恒例となった例のアレもなんとかやり過ごし、雨もひと段落したところでさすがの俺もたまには外に出てみようかな……って考え出したころ。


 例のごとく、夜になって一階のコンビニに買い出しに出たところで店員の茂木もぎクンが俺に声をかけてきた。もう茂木クンとは完全に馴染んでしまって、人見知りを発揮することはない。逆に向こうの方が未だに少し緊張してるくらいで、俺の可愛さのなんて罪深いことか。


「あの、店もう上がるんで、ちょっと話し、いい、かな?」


「え? あ、うん。いいよ。じゃ、いつものとこで待ってる」


 軽いノリで約束し、俺はエントランスホールのロビーへと向かう。さっきみたいなやりとりも慣れたもので、彼とは一度キリの関係では終わらなかったわ、うん。


 はたから見れば「付き合ってるの?」とか言われそうなシチュだがそんなことは全くない。趣味の話をしているだけだ。きっかけは、めちゃわかりやすく、俺が店でひく『頂点くじ』だ。頻繁にくじを引く俺を見て、彼におそるおそる問われたから答えた。「アニメとかサブカルは大好物!」と。


 彼もそういうのが好きらしく――それはまぁ見るからにそんな感じではあるが――、趣味の話になると饒舌になる。まぁ、どこにでもいそうな、普通に気のいいやつだと思う。


 茂木クンの見た目は、まず背はそこそこ高い。向かい合うと必然的に上目づかいになるくらいには高い。癖のないさらっとした髪で、耳や首元はスッキリと出してて涼し気。長い髪の俺はすぐ蒸れて来るからちょっとうらやましい。顔はまぁ、普通。イケメンではないが、ブサメンでもない。でもフツメンというとちょっと彼に悪い気もする? くらいの顔だ。ファッションも普通だ。Tシャツにデニムパンツ。スポーツブランドのスニーカー。


「待たせちゃってゴメン!」


 息を弾ませながら登場した茂木クンは今日も安定の普通だ。

 

「で、何?」


 俺は単刀直入に聞く。ダラダラ話すのは嫌だ。それに余り外で長居もしたくないし。


「あ、うん。その、ですね。ちょっと、川瀬さんにお願いというか、お誘いというか……」


「え? ええ?」


「あ、いや、ダメなら……、ほんとダメならいいんだ。諦めるから! そのぉ、近々コスプレイベントがあってね。僕そこに来るレイヤーさん目当てで撮影しに行くんだけど……。川瀬さんそういうの興味ありそうだし、一緒にどうかなって……」


 な、なん、だと?


 こいつ、お、俺を誘ってやがる?


「そ、そうなんだ。コスプレ……イベント、ね」


 コスプレイベント。


 正直、行ってみたい。SNSでは散々見たけど……直接行ったことは、男の時を含め、一度もない。一緒に行くような友達もいなかったし。


 なんか悲しくなってくるけど、それが現実。


 ちなみに茂木クンは、アニメや漫画好きってのはもちろんだけど、何よりカメラで写真を撮るのが一番の趣味なんだと。好きなアニメや漫画のキャラを、趣味のカメラで撮影する。バイトしてるのもカメラのためなんだとか。カメラ一台買って終わりじゃなく、レンズとか色々お金がかかるらしい。


 オタク趣味も何かと大変だなぁ。


 とにかくどうしよ?


 まじ行ってみたいけど、でもちょっと怖いってのもある。元男のくせにって思うけど、女になってからというもの、外出した時にあまりいい思い出がない。いや、その時々ではモチロンいいこともあるんだけど、何かと後味の悪い出来事も起きる。


「あ、あの、ちょっと返事待ってもらっていい?」


「も、もちろん。イベントは二週間先の土日だから、えっと、三日前くらいまでに返事もらえれば助かる、かな」


「わかった。なるべく早く返事する。あ、そうだ、すぐ連絡できるようLINIE(リニエ)交換しとこうか?」


 LINIEも女相手だと何書いたりしたらいいかわかんないけど、男だとまだ気楽でいいわ。まぁ実際、家族以外の女性とLINIE交換なんてしたことないけど。


「え! いいの? じゃ、じゃあ、これ、僕のQRコード!」


 食いつき気味にスマホを差しだしてきた茂木クン。若いっていいねぇ。まぁ俺もまだ二十三歳。若いうちに入る、はずだ。


 少なくとも見た目は高校生か、それ以下らしい。ちっ、マジくそだ、あの掲示板サイト。


「はい。これで連絡できるね。もう遅いから私部屋に戻る。じゃね!」


 互いの登録を済ませ、俺はその場からとっとと離脱した。ちょっと居心地わるいっていうかね、照れくさいっていうか。


***


 部屋に戻ってお風呂の準備をしたところで服を脱ぎ捨て、下着姿でリビングのソファに倒れ込み、だらけた姿勢を取る。人がいたら見せられない。母さんがいたら速攻叱られる。


 風呂の湯が張られるまで時間もある。さてどうしよう。 


 一人で外出はもうこりごり。かと言って、茂木クンと二人で出かけるっていうのもなぁ……。かなりの年下とは言え相手は男。まぁ元男な俺は別に気にならないけど、それでも今は女。ましてや、男と二人で出かけたなんて妹に知られた日には……。


「ヤバイわ、これ」


 ではどうするか。


 う~ん。



「あ、そっか。いっそ澪奈みいなも一緒に連れてけば」


 二週間後の土日と言えばもう夏休みに入ってる。

 まぁ、コスプレイベントもそれに合わせてのものだろうしな。

 

 俺は我ながらの名案に思わずほくそ笑んだ。




 ――で、安心した俺は外から戻ってきたままの姿でソファで寝入ってしまい、そのまま朝を迎え愕然がくぜんとしたのはもう忘れてしまいたい出来事だ――。



 泣きたい。

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