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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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【19】こんびにクライシス(後編)

 マンションでの一人暮らしは気楽でいい。


 それはもちろんそうなんだけど、人は生きるためには物を食べる必要がある。仙人じゃないからかすみ食って生きてくわけにはいかないのである。


 けど俺は極力外には出たくない。出たくないのでござ~る。


 そんな俺の強い味方の宅配サービス。


 日々の食事は弁当の宅配。しかも普通にうまい。おまけにカロリー計算とかもバッチリでとてもヘルシー。最高。


 日用雑貨のたぐいも大手スーパーやドラッグストアとか、大抵たいていの物を宅配してくれる。なんなら女性用の()()も届けてもらえるから、店で面と向かって買わなくていいというね。


 最高か。


 今の世の中、なんて引き籠りに優しいんでしょう! もしかして永遠に引きこもって生きていけるのではないだろうか?


 答え.できません。


 そう、残念ながらさすがの俺をもってしてもそれはできそうもない。


 ま、必要なものはほぼそれで事足りるけど、それでも急に買い出したいものが出てくるのは生きてる人間としては仕方ないところ。


 急に甘いケーキが食べたくなったり。

 急にサクふわお菓子が食べたくなったり。

 急に甘ったるいエナジードリンクが飲みたくなったり……。


 ついでの車の税金の納税だってしなきゃいけない。クレカでもできるけど、それはそれで手続きとかめんどくさい。


 言い出したら案外出てきてしまう。


 そんな俺の『急』に対応できる強い味方。それが『コンビニ』!

 なんと俺の住むマンションにはコンビニが住み着いている。つうかそれがあるから選んだまである。遥か一階まで降りて行かなければならないが、それでもマンション内であるのは変わらない。


 コンビニに行くのは今の姿になってからは特に夜になってからになった。なぜそうなったかと言えば、単純に目立つから。男の時でも人ごみは嫌だったけど、それでもここのコンビニなら外に出なくていい分、まあ我慢できた。


 でも今はダメだ。人の視線が鬱陶しすぎる。意識しすぎかとも思うけど、気になるものは仕方ない。危険な目に合うよりはマシだし。


 外出するにはそれなりの覚悟が必要なんだ。今の姿だと。妹や母さんがいる時はまだ良かった。隠れみのがあるからその分気を抜くことも出来た。一人っきりだとそれが出来ない。一人で出かけるのはもう前回の本屋(めぐ)りで懲りた。


 二度と行かないとまではさすがに言えないけど、積極的に出ようだなんてとても思えない。


 まぁそう言い切ったものの例外はある。


 それは車で出かけること。ドライブなら人と絡むことはほぼないから余計なストレスもかからない。しかもストレス発散にはもってこいだし、そもそも車には結構うるさいんだぞ、俺は。


 うん、そうだな、この体になってから一度も車に乗ってないし、たまにドライブもいいかもしれない。検証も兼ねて今度ドライブに行こう、そうしよう。



 さて、そんな訳で今日はちょっとコンビニに行こうと思う。ちなみに目的は今日から始まった推しキャラフィギュアのくじを引くことである。二次元以外に浮気をしないとか、そんなことを決意した気もするがそれはそれ。元ネタは二次元ってことで、自分の中で問題ないと都合よく判断する。うん、問題ないね!


 外に出るので着替える。ジャージで出てたら妹に散々ぶつくさ言われたので今は一応着替えるようにしてる。いや、俺だって美少女がジャージで夜のコンビニうろつくのもどうかと思うし……。


 Tシャツにショートパンツ、そこにパーカーを羽織った姿で、サンダルをひっかけ外に出る。髪は母さんにもらったヘアゴムで一つにまとめて背中に流してる。編み込みとかも教えてもらって、髪を色々アレンジするのも面白いとは思ったけど、それは今することじゃない。めんどくさい。


 外への行き来は当然エレベータ―だ。二十三階から一階までなんてあっという間だ。


 ボタンを押してエレベータ―を呼ぶ。三基あるエレベータ―の一番奥がすぐ上がってきたのでそれに乗る。


「よっし、誰も乗ってない!」


 ラッキーだ。エレベータ―は知らない人と一緒になった時が困るんだよなぁ。あのシーンとした無言の時間が辛すぎ。今の姿になってからは特にそう。密室だし。まぁ当然のごとく防犯カメラはついてるし、同じ住人同士でそうそう変なことは起こらないとは思うけど……、やっぱ慣れない。やっぱ外行くのはやだ……ってなる。


 ま、それでも出るしかないんだけどさ。


 エレベーターが一階まで降り到着音が鳴ると、ドアが開いた。俺はそそくさと逃げ場のない密室から抜け出し、目指すコンビニへと向かう。


 夜も八時を回ればマンションの一階はさぞガラガラかと思いきや、さすがにそうもいかず、ちらほら見かけるくらいにはまだいる。けど昼間の観光客だらけの通りを思えば気にするほどでもない。


 しかも。


 コンビニ店内をちらりと見た感じ、俺目線では客の姿は見えない。いても一人二人くらいだろ。チャ~ンス!


 俺はここぞとばかりにコンビニの自動ドアの前に立つ。俺を迎え入れてくれるようにスルスルとドアが開き、俺はすかさず突入した。時間との戦いだ。他の人が来る前に目標に到達。遅滞なくミッションをクリアせねば!


 なんだろ、異様に静かだ。


 店内の音楽だけが妙に耳に入って来る。



「おい、そこの女! 手ェ上げて、こっちこい。ゆっくりだぞ。余計なことすんなよ、したらこいつ刺すからな!」



 な、なに?


 レジの方からヒステリックな男の声が聞こえてきた。


 そこの女? えっ、誰?


 あ、俺のこと?


 一瞬何のことやら訳が分からず、頭真っ白になった。俺は慌ててレジの方に目をやれば、いやでもその異常な光景が目に入ってきた。


 なに、コレ。


 ちょっと! なんかこれヤバくない?


 っていうかマジやヴぁい。異常な状況を前にし、頭の中が色んな考えでごちゃごちゃになってくる。


『……これ、コンビニ強盗……、……店員、ナイフで脅されてちゃってる……』


『……俺にこっち来いって叫んでる……、……行かなきゃ店員、刺されるかも……』



 他人なんて関係ない。今ならじゅうぶん逃げれる。


 そんな心の声が大きくなる。


驚きと恐怖で泣きたいし逃げたい気持ちでいっぱいだけど……、それでも体は自然と動いた。俺ならやれる。やれ! と、誰からともなく背中を押された気がした。


 ああやだやだ、逃げたいよ~。


 強盗犯が店員さんにグダグダ言ってる。あの店員さん可哀そうに。……そうだ。やると決めたんだ、早くなんとかしてあげなきゃ。


 真っ黒なサングラスで奴の目が見えない。あれを何とかする。


改変オルター……】


 黒かったサングラスのレンズの色が透明に変化し、その目があらわになる。


 その目をぐっと凝視。こんな使い方、どうかと思うけど……強盗犯の意識をいじる!


改変オルター……】


 てめぇはもう寝なきゃいられない。寝てしまえ!

 まる一日ぐらい起きてくんな!



 効果はすぐ現れた。奴は何が起こったか気付くこともなくあえなく脱力し、手に持ったナイフも落っことし、自身も床に崩れ落ちた。


 

「やった……」



 お、俺はやり切った。


 と、同時に今更ながら恐怖で腰くだけになり、俺はその場にぺたんと座り込んだ。



***



「ええ? な、何が起こったの?」


 強盗犯がいきなり床に崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。と思ったら女の子まで床にへたり込んじゃった。そりゃ仕方ないよね、あんな怖い目にあったんだもん。


「も、茂木もぎ君、今緊急通報のスイッチ押したから。すぐ警察が駆けつけて、き、来てくれるよ!」


「え? あ、ああ、ありがとう、ございます?」


 今更ながらバイト仲間の大学生店員がそんなこと言ってきた。いやまぁ助かるけど、ほんと今更。


 強盗犯はどうしたわけか、その場に完全に倒れ込んでて、動く気配はまったくない。これって気を失ってる?


 何これ?


 脳梗塞とかそんなの?


 ま、とりあえず危険は去ったみたい。僕も脱力して思わず倒れ込みそうになったけど、ここは必至で耐える。だって目の前にあの女の子がいるんだ。かっこ悪いとこなんて見せられない。


「あの、大丈夫?」


 ここぞとばかりに声をかけた。これは必要なこと。下心なんてなにもない。安否確認で声かけるのなんて普通のことだし!


「だ、だいじょぶ……です。え、えっと、君……こそ、だいじょぶ、ですか?」


 初めて耳にする女の子の声はとても涼やかで優しい声音こわねで、さっきまでの嫌な気持ちが洗い流されるような気がした。こんな状況なのに、今ここにいてよかった……、なんて不謹慎なことまで考えてしまった僕は絶対悪くない。


 しいて言うなら女の子が可愛すぎるのがいけないんだ。


 誰だってきっとそうなる、うん。


 そして僕的には気になってた女の子と話せてよかった。

 これをきっかけに、これからも話せればいいな、なんて。


 都合よすぎ、かな? でも、ワンチャン、ありえなくない?


 な、ないか。

 ない、よね……。



 はぁ。



 と、とにかく、なんだかわかんないけど、みんな無事でよかった!

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