【126】澪奈、佑奈の会見に憤(いきどお)る?
大雨で起こるはずだった災害。それをお姉ちゃんが発生直前で防いだってことで日本中大騒ぎになった。
気象情報とかニュースとかで起こるはずだった土石流を抑えてしまったってしきりに報道してた。しかも何か所かで多数発生しそうだったものを防いじゃったみたいで、それが無ければたくさんの人が巻き込まれて、被害も凄いことになったみたい。
第一位巫である斎姫様はすでに二日前に会見を済ませてて、それはそれで大勢の人が詰めかけたけど、なんというか斎姫様は存在感というか雰囲気というか、なんともいえない迫力があったし取り巻きの人たちの圧もすごく強くってマスコミの人たちも及び腰だった。内容的にも少なかったし。
先読みで見えた、このままでは起こるであろう未来を爰姫に伝え、爰姫はそれに見事答えてくれた……と。あとは爰姫が答えてくれるだろうと。
それで終わりだった。
スパッと切られて、はいお終い。って感じだった。
うん。斎姫……紡祈様は体よくお姉ちゃんに対応をぶん投げてくれた感じだった。見た目は中学生でも百歳オーバーのおばあちゃんは違うね。経験豊富っていうか……ずっるい。
私のお姉ちゃんに面倒ごと押し付けてさ。
なんか、その、好きになれない。
まぁ、それはともかく……、その時はお姉ちゃんもすぐ目を覚ましてすぐ会見も開かれるだろうってみんな思ってた。
でも結局お姉ちゃんは二日近く眠ったまま。中々目を覚まさないってことで、無理がたたったのではないか? とか、国は爰姫様に負担をかけすぎだ! とかで、それはそれでワイドショーとかでタレントの人たちが面白おかしく騒いでた。
バカみたい。
お姉ちゃんは今回のことに限らず、何をするにしても話題になってしまうし、TVとかはあることないこと面白おかしく騒ぎ立てるし、お姉ちゃん……にというか国に対して否定的なニュース出すところもあるしで、私としては色々心配で仕方ない。
そもそも、お姉ちゃんがだらしないのもイケないんだ。上げ足とかとられないようもっとしっかりして欲しいと思う。瑛莉華さんが付いてるからまだなんとかなってるけど。あれで二十四歳なんだから、ほんと呆れる。
で、二日近く過ぎたところでお姉ちゃんがやっと目を覚ました。ほんと心配かけさせないで欲しい。
お姉ちゃん。体大丈夫なんでしょうね?
いやまぁ、今や人間離れしてるファンタジー存在なお姉ちゃんにそんな心配するだけ無駄なのかもしれないけど。やっぱ心配は心配。
とにかく、伸びに伸びてた記者会見が行われるってことで、私はママやパパと一緒にその中継を見た。紡祈様の会見の倍くらい人が集まってた。
時間があった分より多くの人が集まった感じ?
いやいや、お姉ちゃん可愛いし。エルフみたいな見た目だし。人気ありすぎるから絶対そっちのせいだ。
普通、逆でしょ! 二日も開いたんだから諦めて帰れ! ほんとウザい。
お花見会の時に会ったお側付きの巫女さん二人に付き添われてお姉ちゃんが会場に現れるとすっごいどよめきが起こった。カメラのシャッター音とかフラッシュの光、凄まじかった。
いや、お姉ちゃんの注目度すごすぎでしょ。
あのお姉ちゃんだよ?
だらしない、引きこもりの。
今でもまだちょっと信じられない気持ちがある。
瑛莉華さんが場を仕切りつつ、前に会ったことのある公務員の偉い人が挨拶し、会見が始まった。
お姉ちゃんは用意された席のど真ん中に座り、巫女さん二人は後ろに立ってお姉ちゃんを見守ってる。お花見会の時は軽い感じの二人だったけど、今はすっごく鋭い目つきで周囲を睨みつける勢いで警戒してる。
災害についての話は二日前にだいたい終わってたから、この会見はもうお姉ちゃんがやったことに関する話に絞られてる感じ。全体的には好意的な空気の中で進んでいく。
「テレビ関東の水樹です。素晴らしい活躍でした。国民を代表してお礼申し上げます! ありがとうございました」
「あ、はい。あ、いえ……その、当然のことした、までで……」
「爰姫様の神秘の凄さ、全国民が再認識したかと思います。厚い雲に覆われ、降りしきっていた雨がサーっと上がり、日差しが差し込んだ様子は全国に中継されました。あの時の虹はそれはもう綺麗でした。その光景を見た視聴者からはたくさんのメッセージが届いております! かく言う私も大変感動いたしました!」
「はゎ、そ、そんなこと……、べ、べつに、その当然で……」
うんうん、あれ、凄かったよね!
私だって感動しちゃったもん。マジ神秘って感じで、日が差してきたときは綺麗すぎて涙でそうだった。
「経産新聞の高山です。二日もお目覚めにならず、心配する声が全国各地から上がっていました。爰姫様から何かお言葉はございますか?」
「え、あの、そのぉ……、ご、ご心配……おかけ、しました?」
もうお姉ちゃん、しっかり!
質問されるたびにちょっとおどおどした感じで答えるお姉ちゃん。ほんと頼りないんだから。
「ちょっといいですか! 一部で本当に土石流は起こることになったのか? 実はあのままでも何事もなかったのではないか? あれほど大規模な避難は必要無かったのでは? など、疑問視する声が上がっていますが、それについてはどうお考えです?」
何こいつ、偉そうに。イラッときた!
声が上がってるって、どこからなのっ?
それってアンタだけのイジワルな意見なんじゃないの? そんなこと言ってる人ほんとにいるの? イヤいないって! あのネット掲示板ですらそんな書き込み全然見てない!
だいたい住民の避難はお姉ちゃん関係ないでしょうが! お姉ちゃんにそんな話振るな!
「えっ? ぎ、疑問? そんな、そんなの私……、その、つむ……」
ああ、お姉ちゃん泣きそう。もう、そんな奴に負けないで!
「西日新聞様? ですか。憶測による質問はお控えください。そのような問いかけは爰姫様に失礼です。一度目は見逃しますが再びそのような質問をされた場合、この場より退出していただきますのでご承知おきのほどを。他の報道機関の方々も同様です。第二位巫、爰姫様に対し失礼なきよう発言には十分注意を払ってください。くれぐれもこの場は爰姫様のご厚意で催されていること、お忘れなさいませんように!」
おおっ、瑛莉華さん。さっすが!
バッサリぶった切り。スッキリする。
「あ、いや。しかし! これは……」
「まだ何か? 西日新聞の……どちら様でしょう? そうそう、発言をなさるときは所属と名前もしっかり告げてからお願いします。あなたはまだ名乗っておられないのでは?」
「くっ……」
ふん、いい気味。
瑛莉華さん、やっぱ頼りになる。
「いやあ、新野見さんだっけ? 彼女はほんとうに素晴らしい。つくづく佑奈はいい人に面倒を見てもらっているね」
うんうん、パパもそう思うよね!
「ほんとね。でも佑奈がかわいそうで。二日も起きられないくらいに頑張ったんでしょう? なのにあんな言い方、ひどすぎ!」
ママ、私も同じ気持ち!
ああいう記者って、絶対わざと怒らすようなこと言って煽ってくるから大嫌い。
そんな風に、家族で一喜一憂しながらも会見を最後まで見続けた。
ま、ほとんどがお姉ちゃんの偉業を褒めてくれる内容だったけど……、どれだけ注意されても時々イラっとする質問とかする記者は出てきてほんとムカついた。
こんなのお姉ちゃんの精神衛生上よくないって思わざるを得なかった。
「絶対抗議しなきゃ。こんな会見、佑奈のためにならない! これならやらない方がましです!」
ママ、激おこ。
ムカつく質問は全体の一割にも満たないくらいだったけど、そんなのはたった一つあるだけでも気分最悪なんだから!
「爰姫様もまだ本調子ではありません。予定の時間より少々早いですが質疑はここまでとさせていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございました。以上で●◇地方土砂災害等発生の抑止成功に関する爰姫様の会見を終了させていただきます」
ここでも瑛莉華さんが素晴らしい動きしてくれた。
会見終了宣言でガッカリ声のどよめきが上がったものの、会場中で拍手が起きた。そんな中、どう見ても作り笑いなお姉ちゃんが席を立ち、巫女さんがすかさず両脇についてその場から去っていく。
お姉ちゃん、耳垂れてる。
感情わかりやすすぎ。
そんなんじゃ作り笑いした意味全然ないから。
感情がバレバレだから。
ふふっ、まぁ仕方ないか。
お姉ちゃんなりによく頑張りました。
うん、LINIEでお疲れさまってコメ送っておこう。
でもあんまり無理しないで。
そんでもって夏は一緒に海にいこうね!




