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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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123/196

【123】グチグチしつつ、のんびり……からの急転?

 お花見会をした四月が終わり、ゴールデンウィークもいつの間にか過ぎ去った。今となっては全てが遠き日の思い出。


 世の中はもう七月。梅雨が明けるのはまだ少し先だ。


 俺がこんな体になってしまったのは去年のGW。恐ろしいことにすでに一年以上を女の体で過ごしたことになる。さすがの俺も、もうすっかりこの体になじんでしまった。つっても、たまにあぐらかいて座って巫女さんズに怒られたりするけど。別にいいじゃん、楽なんだからさ。


 言うと怒られるから言わんけど。


 一年以上たったけどこの体に成長する気配は微塵みじんもない。いや、まぁ二十四歳な俺が今更成長しないだろって話だけど、なんせ見た目が高一女子レベル。紡祈様と五十歩百歩なガキっぽい見た目なわけで。


 もう少しくらい成長してもよくない?


 まぁそこそこ胸がある分、紡祈つむぎ様には勝ってるけどな!


 そんでもって相変わらず月が変わるたびに月のやつで苦しむ。そんな嫌なサイクルにも馴染んで……るわけあるか!


 それだけは何回体験しても慣れない。しかも俺のは重いらしいし。巫女さんズがそう言ってた。


 二人には迷惑かけてる自覚は……ある。


 イラついて当たり散らしたり、あからさまに不機嫌になったり、引きこもって私室から出ないとか……色々。ほんとすまない。


 元男だった俺のこんな苦労。この広い世界で絶対俺だけに違いない。なんでEXレベルアップ済のチートボディなはずなのに痛みに耐え忍ばなければならないのか!


 もしかして高性能ゆえに、そっち方面も助長されたりするんだろうか?


 ま、まさかぁ?


 いや、案外そうかも?


 つか、そんなのどっちでもいいけど、なんにしろ理不尽すぎる~!


 まぁ、でもこんなので人生悲観してたら生まれた時から女だった人たちに俺、白い目で見られちゃう。


 うん、愚痴はほどほどにしとこう。

 これからだって、ずっと付き合うわけだしな。


 はぁ……。

  

 毎月同じような葛藤かっとうをしてる俺。



「そっか……、もう一年以上たっちゃったんだ……」



 マジ進歩ないな。



「はい? 佑奈ゆうな様、何かおっしゃいました?」


 いけね。つい声に出してしまった。


 梅雨の合間の晴れ間。


 俺は今、何をするでもなくぼけ~っとしながら庭をプラプラ、時おりやってくる小鳥とたわむれてたりしてる。


 俺のひとり言に後ろから当然の如く付いてきてる楓佳ふうかが聞き返してきた。今は楓佳が俺付きで彩如さゆきは宮の雑務をこなしてるとこである。


「あ、いや、別に。ただの独り言。気にしないで」


「ふふっ、でも聞こえちゃいました。佑奈様がお力を授けられたのが去年のGW頃だったのですよね? そのころの佑奈様のことはよく存じ上げませんが、その頃からすれば随分環境が変わってしまわれましたね」


 楓佳がちょっといたわるような声音こわねで俺に話しかけてくる。


「そうだね……。変わっちゃったね。あの時の私は、まさかこんなことになるだなんて夢にも思ってなかったなぁ……」


「はい。今や佑奈様は爰姫えんひめ様。日本の第二(かんなぎ)であり、そのお力は国外にすら知らしめられています。先日、瑛莉華さんに会った時もぼやいてましたよ? 爰姫様にぜひ我が国を訪れて欲しいって要請が各国からひっきりなしにくるそうです。国内のことで手一杯なのに勘弁してほしい……ですって」


「ははっ……、それは私も勘弁してほしい、切実に……」


 いやマジで。



 『ひえんの社』が公表されてからこっち、ずっと忙しかった。 


 公表、マジでくそ。ほんといいことない。自業自得なのが余計俺のメンタルエグった。もう世の中で俺の顔知らない人いないんじゃね? ってくらい知れ渡ってしまった。ちょっとばかりファンタジーな見た目の俺の姿は世間に相当強いインパクトを与えた。


 でも、それがかすんでしまうほどの影響を与えた最たるものは俺の異能力。世間様には神秘って言葉で広まった感のある、ひえん様由来であろうぶっ飛んだ能力のせいだ。


 そんな能力を当てにした……、特に国がらみのメンドクサイ依頼とか一杯入ってきた。もちろんしょーもない話は瑛莉華さんや橘川課長がバッサリお断りしてくれてるんだけど、中にはどうしても断れない依頼もあるわけで。


 しかもそのどうしてもって依頼だけで、結構な案件が溜まってくるからたちが悪い。


 つらい。


 ちなみにしょーもない依頼の栄えある一位は『ハゲ対策』だ。おかしい。くだらなさすぎる。(世の中のそんな方々、ごめんなさい)


 俺の改変オルターはごく一部にしか公表されてないはずなのに。


 どっから漏れてんだよ!


 もちろん全部お断りである。ハゲでは死なない。潔くハゲで生きろ!


 逆に断り切れないのが難病といわれる病気や体の障害がらみ。瑛莉華さんの網を通り抜けた、そんな案件は俺も潔く力を使って対処せざるを得なかった。


 苦しんでる姿とか見せられたらさ……さすがに嫌とは言いにくいし、言えない。


 こういうのってやり出したらキリがないし、ある意味、差別っぽくて俺的にはかなり心が痛む……。俺が対処してるのはほんの一握りの人だけ。もっと言えば国がらみの重要人物繋がりの人たちだけ。


 世間一般の人たちがその恩恵を受けることなんてほぼない。

 かといって、そんな人たちまで俺が手を広げられるか――と言えばそれも無理。


 だから。


 ほんとなら、いっそ誰にもこの力を使いたくない。


 けど、かたくなにやらない。ダメ。とか言い張れない弱い自分。



 くぅ~、ほんと悩ましい。


 つらい。



 国内ですらこれなのに。更に国外のこととか知るか!

 面倒みきれん。



 ああもう、こんなこと考えんのやめやめ!


 

「ああ、そういえば。侍従長さんから聞いた話ですが、佑奈様のお宮、完成まであと半年ほどだろうって言ってました」


 俺の心を読んだかのごとく、楓佳が話題を変えてくれた。こういうとこ、彩如よりずいぶんマシ!


「え? そうなの? 随分早くない? あと七、八ヶ月はかかるって聞いてたけど」


「そうだったんですけど、昨今の佑奈様人気がすごくって、少しでも早く宮を立ち上たほうがよいのでは? ってお話がさるところより出たらしく……」


 楓佳が言葉をにごした。


 さるところ……ねぇ。まぁいいけど。偉い人がそう言えば工期を早めるしかないってか。大変だねぇ、宮大工さんも。

 

  別に俺の宮なんてゆっくりでいいのに。


 っていうか質素でこじんまりしたやつでいいんだけど。

 っていうか別に今のままで何の不便もないんだけど。


 宮を作るのだってただじゃないんだし。全ては税金でまかなわれてるわけだし。

 

 ま、今さら言えんけど。 


「そ、そう……。でもまぁ、あまり無理して事故とかあってもアレだし。ゆっくり丁寧にでいいと思うんだけどなぁ」


「ふふっ、そうですね! 佑奈様がそうおっしゃられてたって伝えておきます。宮大工さんたちもきっと喜びます。爰姫様はなんてお優しいんだろうって!」


「ええぇ……」


 ないわ、それはない。絶対。俺、ただの引きこもり系社会人。元は。


 ああ、なんか全てぶっちゃけて今世の中に広がってる俺への幻想、ぶち壊したくなってくるわ。マジやってみて……


「うくっ! イッタぁ~い」


 くぅ! コレって。


「佑奈様? 急にどうなさいました?」


「あ、いや、別に! な、なんでもない。あははっ」



 もう、『暖かき存在』さん。ひえん様?


 ほんの冗談。ジョークなんだから……、そんなの本気にしないで欲しいんですけどっ!


「あ、ひいっ」


 ああもう、ほんとゴメンナサイって。もう変なこと考えませんって!


「佑奈……様? ほんとに大丈夫……ですか?」


「……はぅ、うう……だ、だいじょうぶ、だいじょうぶぅ……」


 

 はぁ。やっと収まった。


 もうほんと勘弁してほしい。ひえん様、暇なの? いつもいつも俺のこんなどーでもいい思考にまでツッコミ入れてきてさ。



 っと。もう余計なこと考えんのよそう。もう頭痛はこりごり。



 そんな理不尽な目に会いながらも、まぁ平和な時間を過ごしてた俺と楓佳の前に息を切らして走って来た彩如が現れた。



「ゆ、佑奈様! 紡祈様がお呼びです。だ、大至急、大至急だそうです! はぁ~」



 そう一気にまくしたてるとその場に膝を落としてへたり込んだ。

 彩如、きみ、運動不足じゃね? もっと体力つけな?


「彩如、大丈夫? 力使ってあげようか?」


 改変で疲れてない状態に。こんなことに使うのはアレだけど。身内特典!


「ゆ、佑奈様? 何のほほんと落ち着いてらっしゃるんですか! 大至急なんですから! ほらほらっ、早く! 早く行きましょう!」


「ああ、はいはい。急ぎね。紡祈様のとこに行けばいいの? じゃ、私先行っておくね」


 面倒ごとの匂いしかしないけど。


「え? あっ、そんな佑奈様~! 私を置いてそんな、ずるい~!」


 彩如のバカ声と、楓佳の呆れ顔をその場に残し。


 俺はさっさと紡祈様のいる斎薙の宮。以前、俺の任命式をした社殿へと転移した。

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