【12】next レベル?
〚ΣΘξφΩΨζ♯ξ♮ζ♭∞ж〛
なんとなく拝んでたら頭の中に意味不明な言葉というか想いみたいなものが、伝わってきてちょっとビックリした。
「ふぁ?」
驚いてつい声を出してしまった。
「どしたの?」
隣で拝んでた妹が不思議そうに聞いてきた。
「べ、別になんでもない。ちょ、ちょっとひょろついちゃって、つい……」
「ぷふっ、なにそれ。お姉ちゃん運動しなさすぎ。だからひょろけちゃうんだって」
妹と二人、両親の後に続いて拝殿から戻りながらもそんな風にからかわれた。ほっといてくれや。
結局、神様に拝んでみたものの、わかったようなわからなかったような。でもさっきのアレからして……、なにがしかの関係があるような気がしないでもないでもない。
ま、考えてもしかたないか。
広い神宮、神々しい雰囲気をそれなりに堪能し、小腹が減ってきたところで昼食である。ここで有名なグルメといえば言わずと知れた『にく』、黒毛和牛である!
俺たち一行はそんな黒毛和牛を美味しくいただける専門店へと足を運んだ。もちろんイケてる我が父様が事前予約済みで待ち時間などなしであ~る。
「おいひぃ~」
澪奈が食欲をそそる匂いを辺りにまき散らす、すき焼き鍋から程よく煮込まれた極上の和牛を取り上げ、取り鉢に入れられたとき卵に少しばかり漬け込んだのち、可愛らしい口の中へとそれを豪快に放り込む。
うむ、思い切りがよくていい。お上品に食べるのを気にしていては、そんなの全然うまくない。だからそれで正解だ。
肉や具材のうまみ、この店の自慢であろうタレなど諸々が合わさった最高のすき焼き。口の中でとろけるように柔らかく、それでいてちゃんと肉の食感を残した極上の和牛。
至高である!
これだけで今日出かけてきた甲斐あった。
「こら澪奈、食べながらしゃべらない」
「はは、満足してくれたようでなによりだよ」
うっとうしい父さんもたまにはいいことするな。
「佑奈もちゃんと食べてるか? たくさん食べないと大きくなれないぞ~」
ほ、ほっとけ!
つか二十三歳にもなって、成長なんかしねぇ。
しないよな?
いや。背はもともと、もうちょっとあったのに縮んだんだ。逆に伸びないだなんてどうして言えよう!
ふとそう思った俺は、より箸を早めた。
「お姉ちゃん、ムダムダ。その歳でもう背なんか伸びないから。それで大きくなるのはせいぜい胸の二つの塊だけじゃない?」
うう。ああそうさ、わかってるさ。だからって口に出して言うなや。
「澪奈ったら、バカなこと言わないの」
「はっは。まぁここは家族だけだし。それくらいいいさ」
「パパ!」
母さんに睨まれた父さんが一瞬でしゅんとした。
「はぁ、平和だね……」
ぽろっとそんな言葉がでた。
「お姉ちゃん、ババくさ」
う、うっさいわ、ほっとけ!
***
昼食を終え、神宮のある町を後にする俺たち。車に乗り込んでしばらくすれば後ろに座る妹から軽く寝息が聞こえてきた。
「澪奈、寝ちゃったみたい」
「ははっ、随分はしゃいでいたからなぁ。佑奈と一緒に出掛けられてうれしかったんだろう。佑奈は寝なくていいのか? モールに着いたら起こしてやるぞ?」
「いい。別に眠くないし、澪奈みたく子供じゃないし」
「くすっ、さっきお店で精算するときね、言われたんだけどね。姉妹で可愛らしいですねって。ピンク髪の妹さん、大人しくてしっかりしてますね、だって」
い、妹……。妹か。仕方ない、仕方ないんだ、この見た目ではな。くっそ。
「ああ、そうだったね。僕はうんうんと頷いておいたさ。我が家の娘たちは最高に可愛いし賢いからね!」
く、このオヤジ。娘好きはいいけど、時々締めたくなるぞ。
「……そう。まぁいつものことだし。気にしない」
「佑奈。人は見た目で判断するからね。佑奈には面白くないかもだし、気にしないでって言ってもなかなか難しいだろうけど。佑奈は佑奈。自分をしっかり持ってれば大丈夫。それに……、嫌なことがあったらいつでも帰ってくればいいんだから。そうしたらいつでも甘やかしてあげる。今日みたいにね」
珍しく長話して、後ろから俺の頭を撫でてくれる母さん。この歳でそれはちょっと恥ずかしい。
「うっ、ほんとに気にしてなんか……。でも、まぁ、ありがと」
ま、好意をむげには出来ないから甘んじて受ける。べ、別に嬉しくなんてないんだからな。ないったらない。
「うんうん、我が家は平和だなぁ」
あんたが一番平和だろ、オヤジ!
話題も尽きた俺たちはしばらく車から流れる音楽を聞き流しながら、しばしの時を過ごす。まぁ、父さんと母さんは時折り会話してるけどな。
俺はと言えば、出来た時間でちょっとした改変の確認することにした。
LV2の改変は一定時間見た物の改変。ただし、実際使ってみれば改変出来るのは形ない物の内容を変えることのみ。物体の形を変えるようなことは出来なかった。絵とか文字とか、更に言えばデータとか。要は二次元的な物に限ると言うわけだ。ちなみにLV1は見つめた人の記憶を変えることが出来る……だった。たぶん動物とかにも出来るんだろうけど、確認しようもない。
LV1って、LV1の割には相当チートだと思う。
まぁLV2だって、データ情報の改変とか、使いようによってはかなり物騒なことも出来そうではある。まぁ俺は悪いことなんかしないけど。今日までに俺がやったことと言えば、あくまで自分自身に関わる写真や情報をいじったのみ。決して金融関係のデータとかいじったりはしていない。
ま、とは言うものの、この力が及ぶのは俺の目に入るもののみ。だから金融情報なんかぶっちゃけいじりたくてもいじれない。画面上で見ているのはあくまで画面に写ってる情報であって、その物じゃないから。ほんとにいじりたければデータサーバーとか、実際の機器のあるとこまで行かないといけない。
なんとも融通の利かない力なのである。ま、この先レベルが上がればもしかして……っていう気もするが。今言っても仕方ないことだ。でもそれを思えば、LV2特典の名前の改変ってぶっ飛びまくったチート改変だよな。
世界レベルで俺の名前を佑奈に変えたんだから。まぁ世界中でほんとに変わってるのか? なんて確認したわけでもないけど。少なくとも国内で通用する免許証が変わってたのは動かしようもない事実。それだけでもマジチート。
実家の俺情報もこの数日でほぼ改変は完了したはず。部屋という部屋を見て周り、めぼしいものは皆改変した。両親の部屋も掃除にかこつけて突入し、澪奈の部屋も服見せてと言いたくもない嘘をついて入り込んだ。妹は嬉々として色々説明してくれたし、コスメとか余計なことまで話だし、部屋から脱出するのに一時間以上かかったわ。
そこまでやっても実際、俺に関しての情報などそう多くも無く、徒労感のほうがでかかった。おかげで精神的にめちゃ疲れた。
これって改変を使った影響もあるんだろうか?
ゲームでいう所のHPやMP。それに相当する、なにか消費するようなものとかあるのかね?
わからん。でも少なくともめだった実害はない。
家族において残る懸案事項は、じいちゃんばあちゃんだ。滅多に顔を合わすことは無いとはいえ、ゼロではない。確実にいつかは会う。う~ん、悩ましい。
「そろそろショッピングモールに着くぞ~。ママ、澪奈を起こしてやって。佑奈、考え込んでるようだったがやはり疲れたか? ここからはパパは荷物持ちだからな、好きに使ってくれていいから安心しろ」
無駄に元気な父さん。
やれやれ、父さんのお気楽なお頭も改変してやりたいわ。そう思いながら車のワイドディスプレイを適当にいじってたら、ここに来てまさかのデータに遭遇した。
と、父さん、こんなところにまで家族写真仕込んでるんだが!
いつ見るんだよ、こんなの?
俺は焦るも、さも何気ないふりを装い、その写真データの改変を行う。大丈夫、ばれてない。他にもあるかもしれないから念のためにどんどん送って確かめる。
ご、五枚もあった……。
父さん、あんた家族のこと好きすぎ。
ある意味感心するわ。
ま、何とかやり切った俺は、思わず出てもいない額の汗をぬぐった。そんな時、俺のスマホがプルプル振るえた。
「ん、着信? 誰から?」
確認すれば、着信はメールだった。
【Congratulations! 改変レベル更新の条件をクリアしました】
ま?
このなんとも言えないタイトル……。
これ、スマホにもきちゃうの?
届いたのは例の改変謎メールだった。




