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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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118/195

【118】お花見会当日!

「今、駅を出たそうです。みなさん問題なくお集まりのようで、良かったですね佑奈ゆうな様」


 迎えに行った瑛莉華えりかさんから連絡が入ったようで、楓佳ふうかが俺にそう報告してくれた。


「あ、そうなんだ。それは良かった。ははは……はぁ」


 お花見会当日の天気は晴れ。文句言いようのない晴天。よって予定通り実行の運びと相成った。


 いや、まぁ、雨降ったとしても形を変えて何らかのことはやったんだろうけどな。


 中止になんて絶対にならない。それはわかってはいたさ、うん。


「佑奈様、いい加減覚悟決めちゃってください! みなさんの前でそんな表情してちゃ()()ですよ?」


 俺がめんどくさがってることはバレバレなのか彩如さゆきがそんなことを言ってくる。いや()()ってなんだよ、()()って。俺は小さい子供か!


「わかってる、わかってるって。私だって別に会うの嫌な訳じゃないから、ちゃんとやるし」


「ふむ~。ならいいのですけどね~」


 疑いのまなこで俺を見つめて来る彩如と楓佳。こんな時はとっとと話逸らすに限る。


「そ、それでいつごろ到着予定なの?」


「……そうですね、順調にいけば一時間とすこしもあればこちらに到着されるかと。では最後にもう一度身だしなみのご確認、しておきましょうね」


 楓佳がそう言いつつ、いい笑顔を見せた。余計なこと言ってしまったか。ま、今更することもないしいいけど。


 ってことで身だしなみ最終チェックを受けた俺だった。ちなみに本日は『ひえんの社』第二(かんなぎ)爰姫(えんひめ)としての立場をみんなに知ってもらう意味もあるのでキッチリ正装をしてのお出迎えとなる。ようは千早まで羽織った巫女装束みこしょうぞく姿な俺である。


 ま、ここにいるときはいつも巫女装束だけど。普段は普通の紅白巫女装束だし、千早だって羽織ってない。


 顔に薄っすらメイクされ、ピンク髪も凝った編み込みがほどこされ、頭に任命式のとき頂いた髪飾り、『ひえんのかずら』をしっかりさされキメっきめである。お花見会に合わせたのか、羽織らされた千早はいつもの純白ではなく淡いピンク色主体となってて、これがまた可愛さマシマシに見せてくれる。


「いつにも増してヤバイ可愛さです。このお姿は絶対(やしろ)の爰姫様公式SNSにアップしなきゃいけませんね!」


 楓佳の鼻息があらい。楓佳は俺に必要以上にかまってはこないけど、ことファッションとかそっち系には非常にうるさい。ここは変に抵抗とかせず、流されるままでいよう。


「あはは……、まぁほどほどでお願いね」


 これからメンドクサイことがどうせ山と起きるんだ。今からわちゃわちゃするのはいやすぎる。


「はい! お任せください。佑奈様、いえ、爰姫様の更なる好感度アゲアゲのため頑張ります」


 はは、ほんとほどほどに頼むわ。そんなやり取りをしつつ、お花見会メンバーの到着を待つ俺たちなのだった。





***



 僕らは迎えに来たマイクロバスに乗せられ、集合場所の駅を出た。


 マイクロバスの中は学校の修学旅行とかで乗ったバスとは大違いの豪華さで、なんとも言えない格差を感じてしまったのはナイショだ。迎えにきた新野見にいのみさんともう一人知らない女性も居て、また自己紹介合戦になった。知らない女性は中村(はるか)さんって人で、瑛莉華さんとは仕事仲間なんだそう。ひっつめ髪がいかにも仕事出来そうな感じの、僕らよりかなり年上の……()()()()だった。うん、お姉さん。気をつけよう。


「到着まで一時間と少々かかります。備え付けの冷蔵庫に入ってるものはご自由に飲食いただいて構いません。短い旅をお楽しみください」


 新野見さんがそんな短い挨拶をした後はみんな思い思いの時間を過ごすだけ。


 女子組は早々に打ち解けだして、後席辺りを陣取って和気あいあいで話し出してる。けど、小峰こみねは俺の隣でスマホと向き合ってポチポチなんかやってる。あの中に入っていく気はまったく無さそう。しょうがない奴。


 ま、僕も無理だからスマホいじってよ。


 とはいうものの、今から会える佑奈さんのことを考えると嬉しいやら、ちょっと不安な気持ちも浮かんでくるやらで、なかなかスマホに集中できないのは仕方ないことだと思う。



***



 山深い道を進んだ先に『ひえんの社』はあった。天気の良い今日はそれでも頭上に光が差し、街中より多少気温は低いものの過ごし良さそうでなによりだと思う。


 無事到着した僕たちは車を離れ、新野見さんたちの案内でやしろへと向かう。広い敷地内は竹で組まれた壁で更に区切られてて、その竹壁伝いに玉砂利を踏みしめながら歩みを進めた。壁越しに和風な古いお屋敷が見え隠れする。基本平屋建ての古めかしい建物が軒を連ねてていやでも歴史を感じる。


 竹組の壁の所々に門が散見でき、いくつか過ぎたところで一つの門の中に入っていく僕たち。門番さんが居たけど特に何事も無くスルーだ。


 門の中はまた玉砂利が敷かれた道が続いていて、その先に庭園が見えてきた。テニスコート三、四面くらいの広さかな。小さめの池に灯篭、東屋とかもある中、要所要所にいろんな木が植えられてて、その中には当然桜もある。めちゃくちゃ多い訳じゃないけど花見するには十分すぎるくらい。桜は今まさに満開って感じ。街中はもう葉桜になりかかってるけどこの辺じゃ今がまさに見ごろみたい。


 そりゃお花見会をもよおそうってなるのも納得の景色。式守先輩のカメラを持つ手がせわしなく動いてる。ちなみに僕や小峰だってしっかり一眼レフを持参してる。腐っても写真部。抜かりなしだ。先輩は大学の写真部だけどね。


 よく見るとボンボリとかが所々に吊るされ、赤い布で覆われたベンチみたいなのが所々に用意されてるのも見えた。赤い傘が脇に添えられすっごい和風でみやびおもむき! 


 きっとあそこが会場かな?


「うわ~、凄い凄い。写真とか撮っても大丈夫ですか~? SNSとかに投稿とかも」


 式守しきもり先輩が空気も読まずずけずけ聞く。いや、それは僕も聞きたかったけど! いきなりすぎだよ。


「ええ、構いませんよ。特に隠し立てしているわけではありません。ただ、立ち入り禁止になっている場所には入らないようお願いします。まぁそういう場所は施錠されていますから普通に行動されていれば問題はないですが」


「了解です! そういうことならもうバシバシ撮っちゃおう」


「ああ、それと人を写すことも特に禁止はしませんが、一応写すときはお声がけしていただけると幸いです」


「はい! それはもちろん。マナーはちゃんと守ります!」


 まじ行動力!


 式守先輩のそういうとこ、まぁ呆れるけど凄いと思う。僕も多少くらいは見習いたいと思う。それを聞いた澪奈さんたちもしっかり写真撮ってるし、まぁ先輩はいい仕事した。


 玉砂利を踏みしめ庭園の中を抜けると目の前にこれも古めかしい平屋の建物が建っていて、僕たちはその中へと案内される。


「こちらが『ひえんの社』の爰姫様の仮宮への裏手側エントランスとなります。普通、外来の方がこちらから入ることはないのですが今回は特別です」


 土間で靴を脱ぎ、素足のまま上がらせてもらう。床は磨き込まれて黒光りしてる。いよいよ佑奈さんと会えるのかと思うと少しドキドキしてきた。みんなも同じみたいで騒がしかった式守先輩もさすがに大人しくなった。ずっとそのままでお願いします。


「少し手狭で申し訳ありませんが、こちらでお待ちください」


 新野見さんは僕らを六畳ほどの部屋に通し、そう言うと中村さんと共に姿を消した。佑奈さんに声掛けしにいったみたい。


 テーブルを囲んで座布団にすわり大人しく待つメンバー。六畳間は七人だと少し狭く感じ、妙にシーンとしてて緊張感が半端ない。待ってると巫女服の女性がお茶を出してくれた。巫女さんなのにアッシュグレイに染めたふわふわ髪を後ろで一本結びにしてて、ちょっと猫っぽくてかわいい。でも僕よりは年上かな?


「おいしいですね」


 澪奈みいなさんの従姉いとこ、めちゃ美人の佐久目さくめさんがお茶を飲んでそうつぶやいた。つられてみんなが飲む。いい香りだけど、ぶっちゃけ僕にはお茶の味なんて全然わからない。やっぱお嬢様は違うね。


「あっつ」


 式守先輩はかわらず先輩のままだった。だが今はそれがいい!

 緊張感ぶち壊し、たすかる。


 待つことせいぜい五分くらい。それがとんでもなく長く感じたそんな僕たち。


「お待たせしました」


 ノックとともに引き戸が開かれ、今日の主役。僕たちを招待してくれたお花見会の主催。


 佑奈さんが、巫女さん二人に挟まれてしずしずと、まるで世界から隔絶されてるんじゃないかって思えるくらいの静謐せいひつな雰囲気をまとい、現れた。



 うわぁ。

 こんな姿、反則すぎる!


 現れた佑奈さんの姿を見てみんな……、あの式守先輩すら無言になってた。



 もう自分なんてそばにいちゃダメなんじゃないかって……



 そう思えるくらい、薄っすら笑顔をみせてくれた佑奈さんの姿は神々しくて……、僕にはとてもまぶしくて遠い存在に見えた。

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