【117】集結、お花見会参加メンバー!
佑奈さんが『ひえんの社』の巫になった。
部活引退後もちょくちょく部室に顔を出していた式守先輩にそれを聞いた時、正直僕はよくわかってなかった。せいぜい、巫? 巫女さんみたいなもの? とか思った程度で、人に会うのが苦手な佑奈さんがよくそんなアルバイト始められたな~? くらいの感想だった。でも無駄に博識な式守先輩からどんなところなのか聞かされ、僕は驚いてしまった。
もう会えないかも? と、一緒に聞いていた小峰さん共々愕然とした。
『ひえんの社』は、さすがに僕でも知ってる神宮の次に権威があるお社らしい。知らないって言ったら呆れらるくらいには有名なとこみたい。
なんでも、そこで戦争前《第二次大戦》からずっと巫をしてる斎姫様が凄いらしい。
部のPCで『ひえんの社』のWebサイトを出し、食い気味に説明された。お姿が写ってる写真とかまで見せられた。戦前から居るって聞いて、どんなおばあさんだろと見せてもらったその姿は中学生といっても通じる若々しさで、へたすれば佑奈さんより若く見える。
まぁ、佑奈さんのが百倍かわいいけど!
ともかく見た目がバグる。この人は異能力の持ち主で、『ひえん様』の【神託】を受けたり【先読み】を行うことで日本の行く末をずっと守ってくれている凄い人。
と、ここまで聞けばさすがに僕も多少は聞きかじったことがあることを思い出せてきた。なるほど、『ひえんの社』の人だったんだ、この人。
そんな『ひえんの社』の巫となり、爰姫って名をもらったらしい佑奈さん。
会えなくなってしまうと思うのも仕方ないことだよね。
サイトを開いたついでに、式守先輩や小峰さんと一緒に色々見てるうちに更に驚くこともわかってしまった。佑奈さんにも異能力があって、見た目だってちょっとすごいことになってるってことに。
「ラノベの主人公きたー!」
そのときの式守先輩の喜びようったらなかった。詳しいことまでは先輩も知らなかったみたい。
【異空間収納】に【転移】って聞けばそりゃそういう反応にもなるか。【対象理解】っていうのはよくわかんないけど、これもなんかすごそうな感じはする。まぁ収納に転移って、異世界もの小説の定番みたいな能力、僕だって驚いちゃうし小峰さんですら頬を赤めて興奮気味だ。
ま、実際見たわけじゃないからまだ半信半疑だけど……、こんなほとんど国営みたいなサイトでさすがに嘘はないか。
で、とどめに佑奈さん、爰姫様って言わなきゃマズイのかな? とりあえず考えてるときくらい佑奈さんのままでもいいよね。その佑奈さんの見た目もヤバかった。
「エルフだよエルフ! モギモギ。佑奈ちゃんエルフになった! これはコスプレはかどる。額にもなんかキラキラしたの付いてるし誰得ですかこれ~!」
式守先輩の興奮もヤバかった。僕だってヤバイ。小峰さんもヤバイ。みんなヤバイ。
いったいどうなっちゃってるんですか? 佑奈さん!
そんな驚きだらけの佑奈さん事情もあり、僕、それにもちろん写真部のみんなだってもう佑奈さん、爰姫様とはもう会えないのかも知れないと……思い始めていた。連絡先はまだちゃんとスマホに残ってる。LINIEだってまだ繋がったまま。
それでも僕から連絡を入れるのは余りにおこがましい気がして、佑奈さんの状況を知って以来、全然やりとりがないまま四月も半ばになろうとしていた……そんなある日。
僕のスマホにLINIEのコメントが入った。
誰だろと確認してみればクリスマスパーティー以来になる新野見さんからだった。あのとき、参加メンバーとLINIE交換したはいいもののそれ以来のやり取りはまったくない。正直、直接やりとりするような間柄でもなかったし。
だからめちゃ驚いた。なんなんだろ?
『お久しぶりです。本日はこちらで主催する催しについてご招待したく、ご連絡をさしあげています』
なんかめっちゃ堅苦しい挨拶書き込んできた。
や、やりずらい!
でも既読つけたからにはとっととコメント返しとかなきゃだし。
『お久しぶりです。催しに招待って何でしょう? それにこちらって?』
『ああ、そういえばそこからご説明しないといけませんね。詳細は別途招待メールを送付させていただきますが、まずは概要を――』
年上の綺麗なお姉さんとこんなにLINIEでやりとりしたの初めてだった。めちゃ緊張したけど、そこから仕入れた内容のほうが凄すぎて、もうそれどこじゃなかった。
やばいヤバイ、めちゃ嬉しいんだけど!
佑奈さんとまた会える!
夢じゃないだろうか?
もちろん僕だけじゃないけど……、それでも。もう会えないとあきらめかけてた僕にとって、そんなの些細なことだ。
会えるならまだお終いじゃないんだから!
佑奈さんのいる『ひえんの社』、そこの佑奈さん自身の『宮』で催されるお花見会。
それに僕、いや正しくは僕らは……だけど、招待された。
***
「あ、モギモギ、こっちこっち~!」
僕たちが揃って集合場所にいけば、元気な声で久しぶりに見る――沢谷……えっと萌美さん――が、手を振ってぴょんぴょんしながら呼びかけてくれる。
いや、ちょっとソレ恥ずかしいから。目立ちすぎだから。っていうかこんな見知らぬ大勢の前でモギモギって呼ばないで。
歴史を感じる赤レンガの駅舎が特徴的な日本で一番有名な駅。僕たちは新野見さんにもらった招待状に従い、そこの駅前広場に集合することになってるわけで。そこに『ひえんの社』側からお迎えが来てくれる段取りだ。
で、まずは僕、式守先輩、そして小峰で集まり、それからココまでやって来た。最初は各自現地集合にしようとしたんだけど、小峰が泣きそうになったのでそうなった。
あちらさんは、佑奈さんの妹である澪奈さんを筆頭に、今もやたら元気だった沢谷萌美さんとそのお姉さんである奈津美さん。この三人はクリパでも会ってるからまだ気が楽なんだけど……今日はもう一人、佑奈さんの従妹で僕らは初対面の佐久目凜さん……も居るからちょっと緊張する。
あと、名前間違っちゃマズイと思って頑張って名前覚えた僕、自分で自分を褒めたい。ちゃんと名簿まで用意してくれた新野見さんにも感謝だ。
「沢谷さんたち、それに川瀬さんもお久しぶりです。あと初めましての方も……今日はよろしくお願いします」
「おなしゃ~っす!」
「ヨロシク……デス」
一応僕に続いて二人も挨拶した。式守先輩、お願いだからもっとちゃんとして! 小峰さんは……まぁ、挨拶しただけマシ。そう思っておこう。
「モギモギ堅苦し~い。ま、いっか。今日はよろしく! もう楽しみすぎだねー」
僕たちの挨拶で、街路樹一本一本を囲うように作られた石のベンチに座ってくつろいでた澪奈さんたちも立ち上がって僕らと向き合う形になった。
「茂木くん、お久し~! 奏多さん、相変わらず変な人ですね。それでもう一人が初めましての人か。あ、でもお姉ちゃんとスケート一緒にしてた人だよね? LINIEに貼ってもらった写真で見た覚えある」
澪奈さんが案外毒舌でウケる。式守先輩にはそれくらいでちょうどいいように思える。スケートも今となってはもう懐かしいな。あれ以来佑奈さんとも会えてないんだよね……。
「コ、小峰デス。初メまして……」
小峰、おまえ発音変だぞ。大丈夫か? ま、こいつはいつもこんな感じか。
それを皮切りに一応みんなが自己紹介始めた。僕も一応挨拶し、挨拶ムーブのトリを務めたのは僕も初めて会う女の人。
白を基調とした清楚でいかにもお嬢様って装い。背中まで伸ばした濡れ羽色の髪がすっごくキレイで、細面にスッキリした切れ長な目は少し近寄りがたい雰囲気すらあるけど……、はっきり言ってめちゃ美人! 美人見慣れてる都会の人たちも振りかえって見るくらいの美人。ヤバイ!
「はじめまして。佐久目凜です。澪奈とは従姉です。こちらに出て来るのは初めてで、見るもの全てがすごくって感動してます。今日はよろしくお願いします」
「凜ちゃん、箱入りだもんね~。この見た目なのに地元から全然出たことないんだよ。みんなよろしくしてあげてね~」
「もう澪奈。私も二十歳になってるんですからね。ちゃん付けされるような歳じゃありません。恥ずかしいからその呼び方やめてって言ってるのに」
とんでも美人とキレイ系のかわいい女の子が戯れてる。
あ、式守先輩、そんな二人をスマホでこっそり写真撮ってる? 初対面でも遠慮なしか? いや、式守先輩だし。通常運転……だな。
でもまぁ、みんな馴染んでるようで何よりだよね。ほら、駅舎や高層ビルを背景に写真とか撮り出しちゃった。ていうか僕も加わりたいけど男一人で中にめちゃ入りづらい。いつもながら……女が六人もいるのに、男は僕一人ってどうなの?
周りからの視線も凄い。そりゃこんだけかわいい女の子が集まってたら目立つよね。
ああ、新野見さん早く迎えに来て!
僕、男一人でめちゃくちゃ居たたまれないです!
あ!
まって。
この先も実は何気に女ばっかりじゃない?
お迎えの新野見さんからして女の人なんだし。
で、佑奈さんは当然超絶カワイイ女の子なわけだし、佑奈さんにはお側付きって呼ばれてる巫女さんが二人付いてるって話だ。
ヤバイ、僕この先に行ってしまって大丈夫なんだろうか?
お花見会に行く前から変な汗が出てきてしまう僕だった。




