【110】佑奈。検証ははかどり、澪奈は怒れり。
額に生えた宝石みたいに見える何か。
頭の中で理解が進むにつれ、その正体がわかってきた。
『接触対象理解』
簡単にまとめればこんな感じ。触ったものがどういったものか? それがわかる……解析みたいなことができる器官っぽい何か。
うん、余りに漠然としすぎてなんのこっちゃ? って感じになるな。対象はもうね……なんでもいい。物でも動物でも植物でも。無機物、有機物なんでもアリ。
まじアバウトすぎるでしょ、これ。でも逆にそれだからこそホントにやばいって思える。
「何か試しに見てみよ……」
ドレッサーの上に放り出してある紅白編み紐を手に取って知りたいと念じる。すると頭の中にイメージが浮かんでくると同時にスマホに着信が入った。まぁ、これはわかってたことだけど……。とりあえずスマホを異空間収納から取り出し、いつものアプリを確認する。
ちなみに頭の中のイメージとして浮かんできたのは編み紐がどういったものかという説明だったけど、アプリにはそれが新たなタブとして追加され、キッチリ箇条書きされたものがログとして確認できた。
【紅白の編み紐】
巫である川瀬佑奈のために手染めされた絹で編まれた逸品。
江戸時代から続く老舗で制作されたこの世に二つとない品。
「うわぁ、なにこれ……」
別のものを手に取って念じる。またもや頭にイメージが湧くと同時にスマホに通知が入る。
【ハンドミラー】
松木彩如の私物。
ひえんの社勤めで初めて得た給金で買った国外ブランド品。
シルバー&クリスタル風仕上げはエレガントかつゴージャス。
お姫様気分を味わえる。
なんか、めちゃツッコミたい。すっごくツッコミ入れたい。なんだよ、このステータス風というか、まるで小説とかである『鑑定』みたいな表現。
ひえん様……。
なんか面白がってない?
それはともかく、調子に乗って十を超える数を試してみたけど、どれもキッチリ確認できた。それだけしても額の宝石モドキは熱を持つとかの異常も出ず、俺自身も頭痛とかすることもなく、今のところ調子はすこぶる良い。
うむ、次は生き物でも試してみるか。
ってことで寒いけど窓を開け、さっきまで遊んでた小鳥たちを探す。というか呼びかけて集める。
「ちちちちっ」
すると、待ってたかのように俺に向かって集まって来る小鳥たち。かわいい。
でもごめん。そんなにいっぱい来ても対処できないから。一羽確認出来れば十分だから。
窓から身を乗り出し、手を差し出せば我先にと止まりに来る小鳥たち。かわいい。
一羽止まったところですかさず手を引っ込め、その子のことを知りたいと念じる。他にも頭や肩に数羽止まってるけど気にしちゃダメだ。手に止まってる子だけに集中する。
「おおっ、きたきたっ!」
しっかり頭の中でイメージが浮かび上がってきた。うんうん、ちゃんと手に止まった子のイメージきてる。んでもってアプリにも通知入った。
【エナガ】
スズメ目エナガ科。
オス。一歳十ヶ月。彼女募集中。
佑奈が大好き。
いや、最後の一文いらんやろ。と、ともかく生き物にも有効と。せっかく集まってくれたのでさらに何羽か視てしまった。エナガにコゲラ。メジロにスズメ。ウグイスまでいた。
ウグイスは俺でも知ってる。ホーホケキョって鳴く奴ね。
さすが山の中。種類豊富だわ。
ま、こんなところだろうけど、最後にやっぱこれ確認しとかないとだな。そのためにちょっと来てもらおう。メンドクサクなるのはこの際、仕方ないな。
「彩如~、いる? いたらちょっと来て~」
そう、人。人の確認しときたい。
「は~い! はい、はい!」
もう食い気味に返事返って来たかと思ったら、扉開けて入って来た。
こいつ……、外で扉に貼りついてたんじゃないだろな? 早すぎじゃね?
ま、まぁいいや。とっとと済まそう。
「ちょっと手出して?」
「あ、はい」
素直に差し出してきたので手のひらを俺の手で下から支えるようにして持つ。
「佑奈様が私の手を自分からとるだなんて奇跡! 今日は手を洗いません。でも、いったい何が始まるんですか?」
「いや、洗えよ! ……コホン。ちょっとね、能力の確認中。で、彩如のステータスもあばいちゃおうと思って」
うん、赤裸々に暴いちゃる! 頼むぞ鑑定モドキ!
「え? ええ? ステータス? な、なんですかそれ。ゲーム? ちょっとヤバそうな予感!」
「まあ、いいから、いいから。ちょっとジッとしてて」
慌てて手を引き抜こうとした彩如の手をぎゅっと握って確保。そのまま念じる。さぁ来なさい、来なさい。
頭の中でイメージが出来上がってくる。それと同時にアプリにも通知が入る。
「え? スマホに着信入りましたよね? なに? なんなんです、一体?」
さすがの彩如も怪しさ満載の俺の行動にちょっと不安げな様子。大丈夫だよ、怖くない、怖くないからね~。
「くふふ、ちょっと待ってね、今大事なとこだから」
【松木彩如】
『ひえんの社』後ろ盾である守護六家、松木家の次女。
七月七日生まれ、十九歳。
身長百六十三センチ、体重五十四キロ、B:83、W:60、H:84
川瀬佑奈のお側付き。
桃陰女子学院高等部卒
彼氏なし歴十九年。
ほうほう、なるほどなるほど。誕生日が七夕って、くふっ、覚えやすいな。他に特にこれって情報はないけど、スリーサイズやら体重やら出てきた。
むむ、こいつ俺より胸微妙にでかい。でも腰は俺のが細いから! で、身長が圧倒的に俺が負けてると。くっそ!
つうか、そんな数字、比べてどうする俺。彩如は女子学院の出か。いかにも良家のお嬢様っぽいとこ出てんなぁ。『ひえんの社』の巫女さん条件クリアできるのも納得だわ。
「ちょっとちょっと佑奈様~。さっきから黙り込んでスマホとにらめっこしちゃって! いったい何が表示されてるんですか? めちゃめちゃ気になるんですけど~!」
「あうあうっ」
うっわ、彩如がおもっきしガクガク体揺らしてきた。もうおあずけもさすがに限界か。
「ちょ、やめ、ゆさゆさしないで! わかった、わかった。教えるから!」
ってことで、洗いざらいさっきまでのことをゲロする羽目になった俺だった。
いや、催促されなくても話すつもり、あったんだからね!
「ううっ、佑奈様に穢されました。もうお嫁にいけません。仕方ないので佑奈様、もらってください」
いや、何言ってるのこいつ。俺、女。心は男だけど体は女だから!
「何をどう聞いたらそうなる? それ以上ふざけたらこれからもう何も教えないから」
「え~」
「え~じゃないの。まったくもう……」
ま、とりあえず額の宝石モドキ『接触対象理解』はこんな感じで把握できたと思う。相変わらずEXレベルアップはもらえる力が色々おかしい。
でもとりあえず見た目。見た目なんとかして!
***
その日の夜。
彩如や楓佳から解放された俺は部屋にこもってのんびりを満喫してた。
そんな折、久しぶりに澪奈からLINIEが入った。ほんとに久しぶりだわ。まぁ、なんというか俺自身がスマホの通信圏外にいることが多くなった関係で互いのやり取りが自然と薄くなってしまうのは仕方ないことだと思う。うん、思うな。
決して俺がめんどくさいから連絡を取ってないって訳じゃない。
全ては通信環境が悪いんだ、うん。
どれどれ、何て言ってきたかな?
『お姉ちゃん。元気してますか? 最近全然連絡くれませんね。おばあさまからのお話で巫女さんになったし、しばらくは忙しいだろからって……最初の時以来、こちらからの連絡を控えてたら全然連絡くれませんね』
……見なかったことにしたい。
『連絡くれたの、ほんとに最初だけでしたね。っていうか考えたらあれも私からでした……。お姉ちゃんの薄情もの! つめたい! いいかげん、なんか連絡してこ~い!』
うっわ。めっちゃ切れてる。
『ごめん。ほんとごめん。でもでもマジで忙しかったから。忘れてた訳じゃないから。ほんとだよ』
『ふ~~~~~ん、そうなんだ。ふ~ん。あ・や・し・い。お姉ちゃんのことだから、めんどくさいとか思ってたんでしょ? こうやって私が連絡入れなかったらまだまだ絶対連絡する気無かったでしょ? 絶対してこなかったに決まってるんだから!』
あ~、だめだ。さすがに放置しすぎた。澪奈様のお怒りが、全然お静まりあそばされないわ。
めんどく……いや、そうだな。さすがにこれは俺が悪い……か。家族だもんな。そりゃ心配するよね。
『もう言い訳しない。私が悪かったです。ほんと~にゴメン。これからはもっと連絡入れます。だから澪奈様、どうかお静まりください!』
『まったくもう……。もういい。そもそもお姉ちゃんの連絡を待つなんて馬鹿な選択した私が間違ってた。うん、私が悪いんだね、私が』
うっわ。もうめっちゃ拗らせてるよ、コレ。過去一コジコジだわ。
『だからこれからはコッチからガンガン攻めるから。そんなことより今日連絡したのは確認したいことあったからだし』
はぁ、自業自得とはいえ、これからうるさそうだ。ほんと自業自得だけど。で、確認ってなんだろ?
『コレ! コレどういうこと? きっちり説明して! ごまかしは一切認めないから。さぁ、キリキリ吐け!』
澪奈さんがこわい。こわすぎる。そんなこわい啖呵とともにどこかへのリンクのURLが貼り付けられた。
なんかその先、見たくない。コレ、見たら絶対ヤバイやつ。
あ~、見たくないよ~!




