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少女改変-オルタードマン-  作者: あやちん


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102/191

【102】いざ対面! からの?

「さて頃合いです。爰姫えんひめさま、会場入りいたしましょう」


 スマホで中の誰かとやり取りしていた橘川きっかわ課長が、通話を切るとすかさずそう言った。


「は、はいぃ」


 思わず声がうわずってしまい恥ずかしい。


 ラウンジから出てすぐ引き合わされるのかと思いきや、『麒麟きりんの間』の前のロビーでしばし待たされる羽目になった俺たちだった。なんでも外務省のお偉いさんたちも来てて、まずはその人たちが先んじて挨拶してるってことで、それが終わったら俺たちが入るってなったらしい。


 で、それがやっと終わったみたいだ。


 結構待たされた。その間俺はずっと緊張しっぱなし。無駄に長すぎだっての! ちゃっちゃとしてくれよ、もう。


 橘川課長の言葉に瑛莉華さんやひっつめ髪のお姉さんこと、中村さんが座ってたソファーから立ち上がり、つられる様に巫女さんズも立ち上がる。俺は流れについて行けずにオタオタしてたら二人に手を引かれて半ば無理やり立たされた。


「ちょ、そんな急に引っ張り上げないでよ、もう」


 愚痴った俺は悪くない。俺の体は行きたくないって反抗してるから仕方ない!


「爰姫様、最後の最後まで往生際悪いです。あ、ほら、もう扉が開きます! 行きますよっ!」


 彩如(さゆき)のくせにまともに仕事してる。いや、さすがにそれは言い過ぎか。仕事はちゃんとしてるもんな。ただお調子者なだけで。


 よし、行こう!


 行って早く終わらせよ。





***



 入ったら早々に席の方に案内された。


 めんどくさい国同士のアレコレはすでに済まされた後みたいで、俺たちは終わったタイミングで呼んでもらえたみたい。


 愚痴言ってすまんかった。助かる!


 とはいえ挨拶をしないで済むわけでもなく、橘川課長が色々動いてくれてる。


爰姫えんひめ様、こちらへいらしてください。アレートス王弟殿下とそのご家族をご紹介いたします」


 ラウンジで話してた通り、あまりかしこまった風もなく、知り合いを紹介しますってのりで声がかかった。もちろんくだけすぎず、節度はしっかり守ったうえで……だけど。


 俺は巫女さんズを従え、慌てずゆっくり呼ばれた方へと歩いていく。急いじゃダメって散々言われてるからな。落ち着いてゆっくりゆっくりだ。


 

 お互い向かい合って並び立ったところで挨拶やら紹介の時間となった。同時通訳、中村さんの出番である。


 スケーリア王国の方々を王弟殿下から順に紹介してくれる。


 俺はようやく対面相手をしっかりと目に入れた。引きこもり系社会人にはこんな席で周囲も見渡す余裕もなかった。


 アレートス・マクリス王弟殿下。今いる人たちの中でもひと際背の高い、スーツをピシリと着こなした男性で身長百九十は楽に越えてそう。彫りの深い顔だけどスッキリしてて濃ゆくない。体つきもすらっとしててお腹も出てない、非の打ち所のない美丈夫さんだ。豊かな褐色の髪は綺麗に整えられ、髪と同じ色の目は優しく見えるけどきっとそんなことはないと思う。


 で、次にその隣にの二人。


 もちろん奥さんとその子供だ。


 ソフィーア・マクリス王弟妃おうていひ。奥さんも王弟殿下ほどでないにしても結構背が高く、瑛莉華さんと同じくらいありそう。見事なまでの金髪碧眼で、緩やかなウェーブを描く髪は背中に少しかかるくらいで揃えられている。細身のドレスをモデル並みに着こなせるそのスタイルも多少細目ではあるものの抜群な上に、なによりめちゃくちゃ美人である。優し気な碧い目は王弟殿下との間に居る小柄な男の子に向けられていて、すっごく愛情を感じるわ。


 で、今回来日した目的の主役であるはずの男の子。カイロス・マクリス殿下。


 やばい。母親に似てか、めっちゃ可愛らしい美少年! 噂のアイマスクは今はつけてないな。なんでだろ?

 白に近い金髪に目は翠緑すいりょく。大人になる前の中性的な雰囲気がそれを更に引き立ててる感じ。こんなのショタコンのお姉さんたちが放っておかないだろ。コスプレイベントに連れていってみたい。王族とは思えないちょっと痩せ気味の華奢な体格で、背の高さも俺より少しだけ低く見える。ふふん、勝った!


 俺が興味津々で見てたら向こうも同じように俺のことジーっと見てきて、ちょっと居心地悪い。


 こっち見んな~!


 圧に負けてつい後ろに身じろぎしたら楓佳が腰にそっと手を当てて前に押し返してきた。んでもって小声で「我慢してください」って言われた。


 うう。ちょ、ちょっと下がっただけじゃん。別にビビッてなんかないんだからね!



[我らの願いを聞き届けてもらい、こうして会う機会を設けていただいたこと、感謝の念に堪えない]


 俺がオタオタしてる間も対面は進んで行く。


 中村さんがしっかり同時通訳してくれてるのでとても助かる。言葉自体は英語なので所々わかるところもあるけど、絶対自分からしゃべるなんて無理!


 極力無言で通すに限るな、うん。


 あちらが済んだらこちらの番。橘川課長が紹介していくみたい。っていうかこの人も英語ぺらぺ~ら。凄いね。


 お役所メンバーの紹介をまず行ったうえで、最後に俺たち巫女組の番が回ってきた。


[それでこちらのお方が、王弟殿下がかねてから対面することをお望みになられていた爰姫えんひめ様です。今回は特別にお社より出向でむいていただきました]


 ほんと特別なんだからね! もう二度とゴメンなんだから。そんな愚痴を頭の中で考えつつも、とりあえず極力お淑やかにお辞儀しておく。


 ぺこり!


[おおっ、ようやくお会いすることができた。ふむふむ、聞いてはいたが本当にお若いプリーステス(女神官)なのだね。とてもキュートで魅力的チャーミングだ。我が息子と良い関係を築けそうに思える]


 キュートにチャーミングは聞こえた。

 そうだろう、そうだろう。俺の可愛さにひれ伏すがよい!


 絶対口に出しては言えないけど。


[大変ありがたいお言葉ではありますが爰姫さまは神に仕えるお立場でありますれば、交友を深めるといった俗世との関わりを持つことはなかなかに難しく]


[ああいや、これは済まない。いやなに、もちろん無理にとは言わない。お互い立場的に自由にできないことは十分承知している。今はこうして話し合う場を設けて頂いただけでありがたく思っている。さて、時間は貴重だ。早速本題へと移ろうではありませんか]


[はい、そうですね。未だ詳細を開示していただいてはおりませんし、どのような話が出て来るものかと、気が気ではありませんでした。こちらでお役に立てるような事案であればよいのですが]


 話が長すぎてついていけない。中村さんがんばって!


 ま、無理して知りたいとも思わないけど。このまま関係なく済んでいかないかな~。


 無理だろうなぁ。



[遠路日本にまで家族を連れて来た理由はただ一つ。わが息子、カイロスの身に賜った奇異なる力――。貴国で言う所の異能力。カイロスはその異能力を幼少の頃に発現した。『突発性自己実在相対座標転移』とお伝えしてあったものがそれだが。それをなんとか良いように対処してもらいたいということだ]


 そうして俺たちを前に、アレートス王弟殿下はカイロス殿下の現状について話を始めた――




[なるほど。それはなんとも大変な日々をお過ごしになられていたのですね]


 橘川課長がいたわりの言葉をかけてるけど、いやほんとに大変だったろうなぁ。


 目に入った場所に突発的に転移してしまうとかヤバすぎだろ。変なとこに跳んでしまったらへたすりゃ生き埋めコースだし。自分で能力を制御出来ないなんて怖すぎる。そういや以前橘川課長に始めて会った時見せてもらった資料にも転移系の能力者いたなぁ……。そいつは力無くしちゃったみたいだけど。


[アイマスクは目に入ったところに転移してしまうなら見なければよいという、対処療法的な苦肉の策であり、カイロスにはそのせいで、長きに渡り不便を強いてしまっていた]


 ほんとに対処療法だな。そりゃ目隠ししてれば跳ぶ先見えないもんな。で、今みたいな部屋の中くらいなら転移することもないからアイマスクしてないってわけかぁ……。


 こんなに可愛らしいのに不憫ふびんな子だなぁ。そう思いながらじっと見つめたらまた殿下と目が合ってしまった。はにかんだ笑顔をみせる殿下。


 くぅ、そんなところが余計に不憫に思えて泣けてくる。俺、こういうの弱いんだ。勘弁して!



[何とかする手立てはないものかと色々手を回した。王族という立場を用いてそれこそ手段を選ばず情報を集めた。が、長きに渡る努力も実らず、今に至ってもカイロスはアイマスクが手放せないまま――。もう諦めかけていたそんな時、友好国から耳よりの情報が舞い込んできた]


 王弟殿下が話しながら俺の方を見てきた。いくら美男子とはいえ彫り深外国人フェイスでじっと見られたらちょっと怖い。


[新年早々、小惑星の落下を嘘か誠か軌道をそらすことで防いだとか、ビルから落下する少年を救出したとか、変わったところでは動物を意のままに操るなど……聞けば聞くほど眉唾ものに思えた。だが、それは事実であると情報局の長官自らのサイン入りの書状まで送付されてきた。更にはつい半日前の不審者への対処――]


 ひぃ~!


 午前中のことはともかく、以前のことまで……なんかすべてがバレバレ?

 っていうか情報局ってなに? それどこのこと?


 俺って、外出歩くのマジやばくない?


 内心でビビりまくってガクブルしてたらアレートス王弟殿下が一層ジーっと見つめてきた。いや、だからそれ怖いんだって!


[プリーステスえん。お願いだ。我が息子、カイロスの異能力を消してやって欲しい! それが実現せしめたなら我が持てる力において可能な限り、貴方の望みを叶えると約束しよう]



 中村さんが必死に通訳してくれた。



 え、そんなの別にいらないけど。でも……




「わかった。やる!」




 俺にしては珍しく即答した。

 不憫な殿下のためにね。

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