32.ありふれた「巨大ハルキ」と「巨大オド」と「巨大ダンコア」
「温泉。いいわね。でも。ガーディスト・デ・ラ・サノに温泉施設なんてあったの?」
とビビ。ボクの横を走りながら水筒から水を飲んでた。ビビは走りながらとか揺れる二角馬の上とかで水を飲むのがうまい。ボクなんかいまだに苦手で必ずむせちゃう。
「ガーディスト・デ・ラ・サノにはないみたいだけど、ベルダ・ステロに我が愛しの温泉旅館『ゆのか』がある。札束で頬を叩いて大浴場を貸し切りにしちゃうから」
「ベルダ・ステロまで戻るとしたらガーディスト・デ・ラ・サノ周辺の警戒とか他に任せなきゃならないし。こんな騒動の後で抜け出せる休み取れるのかしら。早馬飛ばせば往復で4時間だけど」
ってちょっと残念そうな顔をした。
「やだー。ビビってまだ警備隊のクセが抜けないみたいね。ウチら、誰に縛られることもない自由気ままな冒険者だよ」
シオンが走りながら携帯糧食バーをハムスターみたいに噛って話しかける。
「だな。今回俺たちの受けたクエストはガーディスト・デ・ラ・サノが通信途絶した原因を探ることだから、昨日で任務は達成してるってことだ。この騒動を切り抜けたら自主判断で休暇取ってもとやかくいわれる謂はない。で。ベルダ・ステロに戻るとしたら温泉のあとは当然宴会だよな。『ビストロ・ブタリー』あたりで飲みまくろうぜ」
ノアが走りながら右手に持ったバスタードソードに魔力をチャージしてる。その横を並走していたラウリがニヤッと笑う。
「それはいい。それを聞いたら、こんなところでもたついているわけにはいけないな。デカブツが2体。超巨大ダンジョンコアが1個。慎重に。でもさっくり倒せば、夜までにはベルダ・ステロに戻れるだろう」
ラウリの半歩後ろを走るシオンが携帯食のバーを噛り終えて歌うみたいに声をあげた。
「温泉。温泉。宴会。宴会。ハライソ。ハライソ。楽園じゃー。おーい。ミナトー。どっちいけばコアがあるんじゃー」
全員が走りながらてんでに話すけど息切れもしない。かくいうボクもオリンピックマラソン選手並みに走ってるけど余裕でオシャベリできる。ステータス様々だ。
「シオン。よくハライソなんて言葉知ってるなあ。ポルトガル語で『楽園』とか『天国』って意味だよね。んで。えーと。南に続く街道を0時に取って2時方向。森の中500m。4階建てビルくらいあるキラキラ虹色に光る卵型。ダンジョンコアっていっても生き物だから接近注意ね。なんらかの物理攻撃してくるだろうし、魔法を使うって話もある。ダンジョンにあるっていうダンジョンコアの巨大版だから、ダンジョンコアのできることはこっちの巨大版もできるって考えたほうがいいと思う」
「2年生のときの文化祭の出し物で歌舞伎をやろうって話になって、鶴屋南北って人が江戸時代に作った『天竺徳兵衛韓噺』っていう早変わりの元祖みたいな歌舞伎をね、早変わりシーンがメインのダイジェスト舞台でやったのよん。クラスメイトのひいおばあさんが江戸文化の研究者でねー。やるなら本格的にって協力してくれまくって。すっごい舞台になったんだけど、主人公の天竺徳兵衛が劇中で「デイデイ、ハライソハライソ」って呪文唱えるんだよ。なにを隠そうウチが男装してその役やったんだー」
「へー。人に歴史ありだねえ」
「聞いたか。『妖精と牙』のミナトが温泉と宴会に招待してくれたぞ。全員、生き残れ!」
背後から隊長のダミ声。え。いや。ボク。自分のパーティのみんなを鼓舞するつもりだったんですけど。警備隊のみんなも招待って、いったいいくらかかると思ってるんじゃ。破産するぞ。と思ったけど、振り返ると多脚蚯蚓が蒸発した後に転がったままの超巨大魔石がちらっと目に入った。飛竜に暴竜に多脚蚯蚓の分、合わせて魔石が3個。無事生き残って残りの怪獣2匹とコアを破壊できたら、たぶんさらに3個追加になる。1個は領主に。1個は騎士団に。1個は警備隊に。残りの内2個を避難民の復興資金に充てるとして最後の1個くらいはボクたち『妖精と牙』に貰えるだろう。それを売っぱらえれば、店1軒貸し切り大宴会程度なら10回は開けると思う。取らぬ狸の皮算用ってまさにこのことだけど。ま。いっかー。
「わかったー。もう、全員招待しちゃうからねー。みんなー。命大事に戦って。相手は地獄へ、こっちは天国で飲めや歌えだよ。いくぞー」
振り返ったまま叫ぶと、大歓声が畑の土を拭きあげんばかりにあがる。全員がレイ男爵の山城と大怪獣討伐でレベルアップしているから、フル装備で街道を走るくらい余裕だ。
「でもタイチョー。第2警備隊が宴会で抜けちゃって大丈夫なのー?」
シオンが『隊長』って呼ぶとなぜか漢字に聞こえない。シオンがヒップバッグの中から水筒に似た金属筒を取り出してる。おなじみシオンのチョコレート配りだ。『妖精と牙』メンバーだけじゃなく、つつつっと後ろにさがっていき、警備隊のみんなにも1個ずつ配ってた。冷却魔石式の魔法瓶を買い足したらしい。ヒップバッグからもう1本出てきた。
「第3警備隊がいるし、ベルダ・ステロの城塞警備隊もいる。なにより第1騎士団と第2騎士団までいるんだ。連戦した俺達が息抜きするのを止めるような御仁はいないだろう。いたら俺がぶっ飛ばすしな」
豪快に笑う隊長の口にシオンが百発百中の精緻さでチョコボールを投げ込んだ。ボクもありがたく口に入れ、ひんやり硬いチョコボールをじわっと溶かしていく。甘い。大怪獣と死闘を繰り広げるなんて気力も体力も抉り取られる体験をした後に血管を流れる甘ーい糖分は、ゾンビでも復活できそうなくらいシャッキリさせてくれる。しゃっきりした脳で考えた。ダンジョンコアが突き出しているのは森というより里山の雑木林に近い。巨木はほとんどなく、日本でコナラやクヌギや杉とか呼ばれている細めで背の高い樹木に似た木々が間隔を密集させて生えている。全体に細めなので怪獣の体躯があれば容易くへし折られそうだから遮蔽物や掩体として使うには心許ない。かえって視界を狭め、通り抜けるのも難儀なためスピード戦の障害物になりそうだ。
「これがチョコレートってもんか。美味いものだな。ところでミナト。ベルダ・ステロに戻って宴会するなら早馬の準備をさせたほうがいいんじゃないか。いまなら二角馬があまってるし。ひとり外して手配にいかせようか?」
隊長が背中越しに声をかけてくる。
「いや。えと。その。ちょっとした裏技みたいのがあって。もっと楽にベルダ・ステロに戻れます。裏技なんで、バレるとたぶん怒られちゃいます。おおっぴらにできないので、やり方はいくときに見せますけど内緒の内緒で。隊のみんなは信頼してますのでよろしくです」
「わかった。まあ、あいつらは飲めて食えるなら無駄口きかないからな」
「ははは。で、隊長。怪物はまだあの林の中なんですけど、細くて背の高い木が多くて怪物に押し折られて倒れてきたら危険だし視界も悪いので伐採しちゃいます。なんで先にいきますね」
そういい置いてスピードをあげた。街道から外れ、畑に降りて土埃を立てる。収穫が終わっててよかった。先頭に出て走りながら魔法陣を展開する。水鉄砲の魔法陣を5個。正面向きと左右に30度ずつ角度をつけて全部で5方向。用水路が街道の脇にあるから水源には不足しない。
「ファイヤー。いえぃ!」
シオンがボクの代わりに叫んでくれたけど、残念ながら火魔法じゃなくて水魔法なんだよね。1回につき1000mlの水を20000気圧まで圧縮して直径0.05mmの穴から噴出させる。ウォータージェットカッターは切断する物体に接近させて使用するものだけど、圧力倍加で遠距離にも対応させている。シュパッと掠れた音がして前の林の木々が8分割されてドザザッと地面に落ちた。一瞬で左右に8回ジグザグに振り回してやった結果だ。できるだけ切り株の高さが低くなるよう最初の噴射を地面すれすれに飛ばしたから、畑がしっとり湿ったけど泥になるほどじゃない。それでも気を抜いてると滑るので、注意喚起のために後ろへ叫んだ。林が左右700m、奥行き100mに渡って伐採地になった。怪獣の内、巨大ハルキゲニアが林の奥200mのあたりで高木をへし折りながらこっち方向へ進んでいる。巨大オドントグリフスは巨大ハルキゲニアの左200m、奥へ200mの位置を西方向に進んでいた。まずは巨大ハルキゲニアだ。伐採して現れたゆるい丘に足を踏み入れたところで、もう一度伐採を試みる。さっきは8分割にしたけど、枝葉が上を向いてよけい障害物が増えちゃった。もっと細分化しないと。踏ん張って魔法陣をふたまわり大きく取り、1秒間30往復の振りでぶん回した。丸太と枝がバラバラに微塵切りされる。その向こうの林の中からバキボキと木々をへし折って背中の棘の先端が高さ10mにもなる巨大ハルキゲニアが姿を現した。
「ごめん。かえって足元を不安定にしちゃったかも。みんな注意して」
「うい」
気の抜けた返事をしながらシオンが突っ込んでいく。丸太状に積み重なった枝葉を避け、踏み台になるものは踏み締めて危なげなく飛び跳ねていく。慌てて光魔法陣を展開する。光球が着弾して巨大ハルキゲニアのバリアが消えた瞬間、シオンの魔剣が巨大ハルキゲニアの脚を1本バッツリと切断した。液体の中で金属を擦ったみたいな鈍くて高音の悲鳴を発して巨大ハルキゲニアが身体をくねらせる。背中の14本の長い棘が、バサッと倒れるように八方に拡がった。一瞬、ブンッていう振動音がしてすぐ聞こえなくなる。ボクの感度を増した耳は、その音が瞬間で振動数を増して可聴範囲を超えていく変化を捉えた。
「シオーン。超音波ブレードだ。距離取って」
巨大ハルキゲニアが体躯を丸め、振動する棘をシオンに押し当てようと闇雲に身をくねらせる。さすが魔物。地球に存在した古生物のハルキゲニアは超音波ブレードなんか使わなかった。
「超音波ぶれーどってなによー」
振り回される棘の刃をシオンがひょいひょいとかわしていく。ボクのウォータージェットカッターが切り刻めなかった奥側の木々を棘がかすめると、鮮やかに断ち切られてバキバキと倒壊した。
「刃物を毎秒4万回くらい振動させて、物体に当たったときに強烈な摩擦熱を生じさせて切断しちゃう方法。切れ味凄いからー。普通の剣や防具なんかだとあっさり切断されちゃうかもしれない。魔剣や魔法シールドでなら受け止められると思うんだけど‥‥」
「わかった。試そう」
ラウリが左腕の魔法シールドを起動させ、あたり構わず振動棘を振り回している巨大ハルキゲニアの右後方から突っ込んでいく。巨大ハルキゲニアの身のくねらせ方を予測し棘の長さと軌道を見切って、棘の先が胸前5cmを薙ぐだろう立ち位置に滑り込む。完璧なタイミングと浅さで、棘先がラウリの掲げた魔法シールドに受けられた。黒板を爪で引っ掻いたみたいな不快音が鳴り響く。
「大丈夫だ。打撃力は軽自動車に衝突したくらい重いが、シールドは持ちこたえる。精神力的にがっつり削られるが、連打されなければ大丈夫だ」
そう伝えながら棘のバリヤーの中に入り、ぐにゃぐにゃした脚に斬りつけて1本を切断する。返す刃で振り回される棘を1本叩き斬った。その横に隊長の巨軀が踊り出す。腕の魔法シールドなしで背に負った魔剣の大剣を青々と輝かせ、裂帛の気合とともに振る。青い帯が棘の数本と交差し、大きく吹き飛ばした。さらに隊長は身体ごと大剣を加速させて巨大ハルキゲニアの懐へ入っていった。合計で7本の棘が刈り取られる。ギギィィっと歯なのか棘なのかわからない擦過音を響かせて巨大ハルキゲニアが身を翻した。けれどステータスが超人レベルにあがった警備隊の目にはスローモーションにしか映らない。超音波ブレードの斬れ味がどれほど凄くても、当たらなければ棍棒にも劣る。警備隊の隊員はいつの間にか火魔法まで使えていた。背中の棘のつけ根を焼かれ、脚は手当たり次第に切り刻まれついには転倒する。ただどんな場合にも不運な奴というのはいるもので、この場合は第2班のフランス系男性、19歳のシャルリー・コルビエール2士だった。186cmの長身で明るめの栗色の髪、やや四角い顔立ち。垂れ目が温和な印象だけどなかなかやんちゃなナイスガイだ。横倒しになる巨大ハルキゲニアの身体に押し潰される位置から横へ逃げたところに、斬り取られて宙を舞った棘の1本が接触した。魔剣での切断があまりにも綺麗すぎて振動が残ってしまい鎧の脇腹を貫通してしまう。負傷者第1号だ。3班のロジェ・ドパルデュー士長とニコラ・ギャバン士長が両脇を抱えて引き離し、ポーションを飲ませる。グレードIIIだから出血は止まり傷もほぼ瞬時に塞がったはず。ただ流失した血液や修復に酷使された免疫機能はすぐには回復しないから、今夜の宴会でたっぷり飲み食いしてもらおう。シャルリー・コルビエール2士が手当されている間にノアとンガバ副隊長のバスタードソードが巨大ハルキゲニアの背と腹を長く斬り裂き、それが致命傷になった。
「やったぞ!」
という誰かの声に呼応してあがりかけた凱声が中途で途切れる。南側から木々の折れる音。巨大オドントグリフスが木をへし折って姿を現す。なんたることか、巨大オドントグリフスは空中に浮いていた。ザトウクジラくらいな量感がある。体重は40tをくだらないだろう。その巨体が地上3mほどの空中で、軟体の身をくねらせるように泳いでる。全長12mの体側に瘤のように連なる器官をざわつかせ、そこから空気を噴出しているようだ。それが草履の底みたいな扁平な身体の下でエアクッションになり、重力魔法で自重を中和することで滑るように移動する仕組みみたいだ。発症前に渋谷に1軒だけ存続していたレトロゲームセンターにいったことがある。そこにあったエアホッケーゲームのパックみたいに40tの重さを失くした巨体が高速で空中を滑る。引っかかる木々がなければ新幹線並みの速さを実現してたかもしれない。キュイーンと耳の奥に不快な蚊の飛ぶ音が聞こえる。これはモスキート音っていわれる高周波だ。ボクたちや警備隊のメンバーでこんな音を出す人はいないから、当然この音は巨大オドントグリフスが発しているってことになる。超音波で周囲をスキャンしながら移動しているのかな。それにしても速い。巨大オドントグリフスが林を割って出現した南東側にいちばん近かったのが、ピリッポス・カラマンリス曹長率いる第2班だった。幸いにというべきかレイ男爵の遺産で警備隊に寄付した10個の魔法シールドを、いちばん多く4個持っているのが2班だ。木の破断音がして巨大オドントグリフスが姿を現す前に、危険を察知した盾持ちの4人が腕の魔法シールドを全開で展開していた。仕事できる人たちなのだ。現れた巨大オドントグリフスの滑空速度があまりに速くて逃げ散る余裕がない。盾持ちがシールドを高く掲げ盾を持たない隊員がそのシールドの傘に入る。のしかかるように2班の上空にさしかかった巨大オドントグリフスの腹部がささくれ立ち、気の抜けたおならのようなフシュっという音とともになにかが大量に噴き出す。タイミングが悪かった。その直前、倒された巨大ハルキゲニアの分解が始まったのだ。強烈なオゾンと柑橘の香り。後ろからビビがレベルアップ目眩で悶える声が聞こえる。と同時に、警備隊の全員が飛竜討伐時に続いて巨大ハルキゲニア討伐でもレベル109へアップしてしまう。体細胞が再構成されるような強烈な違和感で、魔法シールドを掲げていた隊員の身体がよろめきシールドに隙間ができてしまった。ザザザザザっと、突然の豪雨が叩きつけるような音が響くと同時にアルキダモス・カサヴェテス1士とヴァランティール・フォレ士長が苦鳴を漏らしてうずくまる。カサヴェテス1士の脛とフォレ士長の左肩に、太さ1cmもある太い棘が突き刺さっていた。シールドで弾かれて周囲に落ちた棘を見ると長さが30cm近くある。シールドで覆われていなかった周囲の地面や切り倒された木に千本近い針が突き刺さり、まるで剣山のようなありさまになっている。カサヴェテス1士が脚を抑えて尻餅をつく。フォレ士長は肩から入った棘の先が肺を傷つけたのだろう、うずくまって血を吐いている。
「2班。引け。棘を踏まないよう注意しろ。安全を確保したら毒の有無を確認」
隊長が声を飛ばす。脚をやられたカサヴェテス1士はピリッポス・カラマンリス班長の肩を借り、フォレ士長はファビアン・ボーヴォワール士長とトリュファイナ・デュカキス曹長が両脇から支えて木々の方へ退避していった。巨大オドントグリフスの進行軌道から外れた1班と3班の隊員が光魔法を唱えるも、速度の差でことごとく置き去りにされる。シオンとラウリが全速で巨大オドントグリフスを追いかけながら光魔法を撃とうと試みるけど、走りながらじゃ狙いが定まらないしやっぱり光球のスピードが足りなかった。ボクはなにしてたかというと、ただ見てただけ。ボケーとしてたわけじゃなく、必死で観察して分析してた。モスキート音で獲物を定めて上まで滑り、無数の針を発射して仕留める。そういう狩猟行動のワンパターンみたいだ。あまり知能は高そうじゃない。高速で滑空するのは凄いんだけど、曲がろうして奥の木にぶつかりよたよたと方向転換してたりするのが間抜けっぽい。スピードだけはあるけど方向転換が苦手なようだ。日本にいた頃『youtube』の動画で見た軍用ホバークラフトより小回りがきかない感じ。巨大オドントグリフスはようやく方向転換を済ませ、次に3班を狙う。
「そっちいくぞ。棘はシールドで防げる。落ち着いてシールドからはみ出ないように対処しろ」
ンガバ副隊長が指示を叫ぶ。その声に反応して巨大オドントグリフスが軌道をふらつかせたように思えた。大きな音を出すものや激しく動くものを標的にして追う様子がうかがえる。なるほどね。空気クッションに乗って滑空する巨大オドントグリフスは鋭角方向転換ができない。知能が低い猪突猛進タイプってことは、罠にハメやすいってことだ。うまくいくかどうかわからないけどやってみるのはタダだしな。なんて考えているうちにも3班が襲われ、棘のシャワーを食らった。けど、今度は魔法シールドのカバー範囲にしっかり隠れて被害なし。切り拓いたスペースから林の中に退避した2班が、手当の終了と棘に毒なしとの報告を叫ぶ。3班を襲った巨大オドントグリフスがその声に反応するけど、勢いがありすぎて方向転換できず切り拓いたスペースの奥まで滑り流れていった。
「シオン。悪ーい。囮役やってー。あの空飛ぶ草履を罠にハメる。シオンの前に魔法陣で罠を仕掛けるから、大声出してぴょんぴょん飛び跳ねて注意を引いてー。空飛ぶ草履がシオンを狙って直線的に突進したらー、ギリギリまで引きつけて。罠で止められない可能性があるからー、念の為にギリギリ見切ったら瞬間加速して横に飛んで逃げて。頼むー」
「おーす。わかったー」
「みなさーん。シオンが囮を始めたらできるだけ静かに。話さず動かずでお願い」
奥の方で巨大オドントグリフスが方向転換を済ませる。ボクは巨大オドントグリフスとシオンを結ぶ線上の、シオン寄りの地面に巨大なトラップ魔法陣を仕掛けた。
「シオン始めてー」
そしてその巨大魔法陣の周りに光魔法陣を20個配置し始める。シオンが両手を大きく広げて振りながら、うさぎダンスを踊り出した。
「きゃほー。こらー。そこの空飛ぶさつま揚げー。おとなしくおでんの具材になってなさいー」
シオンを除く全員がその場にしゃがみ、微動だにしなくなる。予想通り巨大オドントグリフスはシオン目指して滑空を始めた。目標多数で目移りしない分、スピードが出てる。時速80km。90km。100km。そんな高速で暴走列車のように1直線にシオンを目指す。シオンの20m手前で、ものの見事に魔法陣の罠にすっぽりと入った。ステータスアップさせた動体視力などを駆使し、ジャストタイミングで罠を発動させる。巨大オドントグリフスを中心として直径15mの円内の重力が瞬間的に100倍になった。太陽の表面に立つと(ガス体なので立てないし、そのそも高温と爆発で一瞬にして気化するだろうけど)重力は地球表面の23倍。100倍の重力といったら恒星の残骸である白色矮星の表面重力に近い。60kgの人が一瞬で6tになる。ボクの背中に突然アフリカゾウが乗っかったようなもん。巨大オドントグリフスの身体を支える空気クッションは、100倍の体重を支えきれるわけもなく、ほぼ垂直に地面へ墜落した。ときどきジュラにご馳走してる中性子星クラスの超高重力を使えば、巨大オドントグリフスを圧死させることも可能だろう。ジュラにあげてる1千億Gもの超高重力はジュラが吸収して消えちゃうから問題ないけど、そんな桁外れのものを自然環境の中で開放したら地殻まで変動させて惑星を破壊しかねない。時間がなかったので安全係数をたっぷり取りつつアバウトに計算して、導き出したのが100G。巨大オドントグリフスは軟体組織を地面に打ちつけて歪ませたけど、バリヤーのお陰でダメージなくのたうっている。重すぎて動けないのだ。その身体にむけて周囲に展開していた20個の光魔法陣から光球が発射され、スルッと吸い込まれてバリヤーが消えた。
「バリヤー解除!」
ボクが大声で叫ぶと、じっと動かずいた警備隊メンバーと我が愛しの『妖精と牙』メンバーがいっせいに動いた。囮になったシオンがいちばん近くにいて、双剣を背後でクロスに構えながら低い姿勢で駆け寄っていく。疾い。ボクが切り刻んだ枝や丸太、残った木の切り株などで障害物山盛りの地面を、残像が見えるくらいのスピードで飛び、跳ね、ジグザグに抜けていく。シオンが初太刀を浴びせる直前にボクは重力魔法陣を解除した。じゃないとシオンの体重も100倍になってぺしゃんこになってしまう。シオンが巨大オドントグリフスの側面に沿って走り抜け、双剣の魔力光が光の2重螺旋に見えるくらい流麗に振り重ねられた。空気噴出口である瘤状突起をずたずたに切り刻んでいく。巨大オドントグリフスは必死で身体を浮きあがらせようと悶えるも、棘の発射機構は身体の下面にしかないらしくまともな反撃ができない。瘤を切り刻まれた痛みで体側を持ちあげシオンを押し潰そうとしてもすでにシオンはそこにいない。中学バスケ全国クラスがステータスを延伸するとこんなレベルになるという見本だな。1班と3班の隊員も巨大オドントグリフスに到着し、反対側の体側も切り刻む。こちらは斬り込んで離れる、を繰り返すヒット・アンド・アウェイ戦法だ。ナメクジみたいな軟体生物だから刃がズバズバ切れ込んでいく。デスピナ・クセナキス1士とダフネ・パパンドレウ士長が巨大オドントグリフスの背面に駆け登り、無防備な背中を微塵斬りにした。最後に巨大オドントグリフスに登ったニコラ・ギャバン士長が突き刺した剣が脳か心臓かなにかの重要な器官を破壊したようで、巨大オドントグリフスが糸の切れたマリオネットのようにベシャっと潰れ伏す。やった。倒した。
「うきー。やっぱ疲れるねー。まだお昼前だっていうのにヘトヘトだよー」
そういう割には元気に倒れた木々を飛び越えてシオンが戻ってきた。
「連戦だものね。体力も気力もザクザク削られるわ。戦闘中は過集中して戦闘が終わったら弛緩するっていうやり方もあるけど、私はそれだと気力を再始動させるときがキツイのでずーっと最低限の緊張を保つようにしてる」
ビビが剣を鞘にしまいながらシオンの後ろに回り、ガシッと肩を抱き寄せてヒップバッグから3本目の魔導保冷瓶を取りあげた。
「ぎゃー。それ取って置きのなんだよー。なんで持ってるのわかった?」
「チョコ臭い息してるから1発よ。今度からこっそり隠れてひとりでチョコ食べるときは、風下で食べたほうがいいわよ。後で倍にして返してあげるから」
魔導保冷瓶を手にビビが駆けていき、回復作業を終えて林から出てきた2班のメンバーにチョコを配る。血を失った負傷者にチョコボールを4粒与えて瓶が空になる。負傷者の滋養に配られたらシオンも文句はいえない様子だ。甘い甘いチョコとの別れに「あうううう」って嘆きと惜別でぽっかり開かれたシオンの口に、ボクは甘い甘い蕩けるチョコのボールを放り込んでやる。じつは断剣さんたちと『黒い森の井戸』ダンジョンに潜ったときシオンがくれたチョコと冷却魔石と保冷瓶に触発されて、希少な冷却魔石を使うのではなく刻印式魔法陣と通常魔石による魔導保冷瓶を作ろうと思い立ったわけ。『黒い森の井戸』からの帰路に馬上で居眠りしながらも魔法陣を組みあげ、ベルダ・ステロに到着して『断剣』さんたちと打ちあげを始める前に魔道具製作工房に制作を依頼して、そっからサーカス団とジュラの件でばたばたしてすっかり忘れてた。4日後に領主に謁見して依頼を受けてから戻った宿で試作のチョコ専用魔導保冷瓶3本を受け取ったので、今回の遠征に間に合ったっていう次第。結界魔導器に使うレベルのクズ魔石で2週間は保冷できるし、チョコの保存に最適な16度と湿度50%をキープしてくれる。制作を依頼した魔道具製作工房からは納品と同時にもの凄い熱意で量産と販売の許諾を求められ、口頭でオッケーしてある。売上の20%をくれるそうだ。
「2班は撤退しろ。慈療師の治療を受けること」
「あ。戻るならボワヴァン団長にありったけの結界魔導器を集めてもらってください。城塞の南側、避難民が通ってくる街道は空けて、農地や林などに広く配置するように伝えてください。ボクたちがコアの討伐に失敗してもガーディスト・デ・ラ・サノの人たちが避難する時間を稼げるかもしれません」
2班が無念の様相で戻っていった後、ボクは持ってきた魔導保冷瓶3本分を全部供出して全員にチョコを配った。
「休みたいのはやまやまなんですけど、ダンジョンコアを残しといたらまた大怪獣を召喚されてしまいます。いっきに潰すしかないんですけどダンジョンコアは普通サイズのものですら見たことがありません。こんな巨大なコアがどんな力を持っているのかまったくわかりません。なのでこのチョコで脳に糖分を与え、しゃっきりして戦いましょう」
警備隊のみんなの応じる声は頼もしかった。経験したことのない戦いに、そして勝てるかどうかもわからない戦いに、だれひとり怯えていない。こいつら全員抱きしめてやりたい気分だった。もちろん我が『妖精と牙』の面々も。身軽になるためヒップバッグは外して地面に置く。生きてたら後で回収に来ればいい。腿に固定したポーションポーチと剣だけになって林の奥に踏み込んだ。魔法盾持ちのメンバーが先頭に立って1班が右、ボクたちが中央、3班が左と、それぞれ20mの間隔を開けて進む。植物にはあまり詳しくないんだけど、あちらでいう杉の木に似た20mを超える高木が群生している。竹かよと突っ込みたくなるほど密集度が高いのは、こっちの世界産だからか。視界が悪く、暗く、密集によりまっすぐ歩けず難行っぽい。こっちの世界でも花粉症とかあるんだろうか。なんて考えながら木の幹を回り込んだら、木々の向こうに光る巨大卵がそびえ立っているのが見えた。重なり合って視界を塞いでいた木々が急に拓けた感じになる。もう1本の木を回り込むと木々の隙間に地面が見え、その理由がわかった。卵を中心に郊外小学校のグランドくらいの面積がポッカリと空き地化している。そこにあったはずの木々はどうなってしまったのかわわからない。伐採されたとしても根と切り株くらいは残るはずなのになんの凹凸もなく、拓けた地面全体がメロンの網目のような白い根で覆われていた。その網の中心に高さ10mを超える巨大な卵状物体が鎮座している。卵表面はやや縦に細長い6角形の鏡面を敷き詰めたよう。
「ミラーボールじゃん。キレイといえばキレイだけど」
シオンがどこでミラーボールを知ったかは知らない。身体が動かせなくなる病気にかかっていたボクは『youtube』の動画でスポーツやダンスを見るのが好きだった。そんな流れで80年代ディスコミュージックなど聞いたり古典映画『サタデー・ナイト・フィーバー』など観て、ミラーボールを知った。暗いディスコでのミラーボールはいい味出してるけど、青空バックだとミラー張りビルを見あげるレベルの感慨しかわかないかも。こっちの世界生まれの人たちは感嘆の声を出してたけど。
「シールド持ちは前へ。シールドを起動してカバーしろ」
隊長の声で魅入っていた隊員が引き締まる。あちこちでシールドを展開するブンって音が鳴る。ノアとラウリもシールドを起動してボクたちの前に出た。シオンが水筒の水を飲み干しながら聞いてきた。
「ねー。ミナト。地面の網みたいなところにところどころ白い毛玉みたいなのがあるの、なんだろう?」
「なんだろうね。種とか新芽みたいなものかな?」
「ねえ。ミナト。このコア、怪物たちみたいに魔素のバリヤーを纏ってないんじゃないかしら。赤っぽくないし」
ビビにそういわれて見直すと、確かにバリヤーはなさそうだ。
「この地面を覆っている模様が気味悪いな。焼き払えるか試していいか?」
珍しくラウリが意見をいった。火を点けてボーボー燃え広がって本体を焼いてくれるなら簡単でいい。問題は森林火災まで大事になるかならないかだけど。半径100mまでならシールド魔法の応用で、最初直径0mmの点状から球状にシールドを拡張して真空を作り出す魔法陣を描ける。その真空ドームで火事部分を覆えば酸素0で火は消せる。水源も近くにあって水魔法でぶっかけ消しもできる。
「火が林にまで燃え広がっても消せるから‥‥やってみようか。ボクが消す用意してるから、ラウリ、火魔法出して」
「わかった。瞋恚の焔。顛動する赤光。灼熱の軋轢。浄化の凝縮。焦熱の拡散」
メラっと火の玉が生じラウリから数メートル前の網目に飛んでいく。ぶつかったとたんじゅっと音がして網がわずかに煤け縮小したように見えたけど、火は点かなかった。
「ミナト。見ろ。なにかが地面から‥‥」
ノアの声。もちろんさっきからずっと注視してる。魔法が当たったメロン模様の周りの地面からゆらゆらと白い筋が伸びあがっていた。
「なんだろう。湯気‥‥じゃないな。白い糸か。もしかして毛根が伸びてる?」
「根が上に伸びるのか?」
右横から声がする。隊長の声だ。
「損傷した組織を補修してるのかな。これがあちこちにある白い毛玉の元なのかな。わからないことだらけです」
「とりあえず斬ってみればわかるんじゃない?」
とシオン。
「脳筋かお前は。まずは魔法で遠距離攻撃をしてみよう。それで倒せればいいし、倒せなくてもなにか少しはわかるだろ」
「よしわかった。ウチの隊員は全員、火魔法を使える。爆発魔法もンガバ副隊長と1班のボワヴァン士長、ミツォタキ曹長、3班のクセナキス1士とギャバン士長の5人が使える。一斉攻撃をしかけよう」
「わかりました。反撃があったときのために魔法シールド全開で備えてください。こっちもビビとラウリとボクで爆発魔法をしかけます」
「聞こえたな。タイミングを合わせるぞ。3、2、1。唱えろ」
全員の詠唱がコーラスのように響く。ただ詠唱速度には慣れや性格も反映するので1秒前後のばらつきが出る。それでもこっちのシオンとノアの分も合わせて12個の火球がコアめがけて撃ち出され、速度のやや遅い爆発魔法の光の玉が8個追従した。飛翔時間2秒。最初の火の玉がコアの鏡面に到達して‥‥炎の花を咲かせるはずがクシュンと煤けて消滅する。続くすべての火球が潰れるように消えていく。爆発魔法が到達しても爆発は起きず、かすかに赤い炎が噴き出しかけて萎れるように消えてしまう。
「なんだ。魔法が消される。やっぱりバリアーがあるのか?」
怪物たちを覆っていた赤っぽい魔素のバリヤーは視認できない。揺らぎも感じないし振動も感知できない。周りに生える木々と同じくまるで無防備に見える。でもビルを1棟粉砕できるほどの魔法が直撃したはずなのに、なにもなかったように掻き消され反撃もこない。なぜだろう。
「ちょっと別の魔法を試します」
ボクは距離を目算し、コアの中心部で点シールドを発生させ、球状に拡大して内側から破裂させるような魔法陣を描いた。発動の魔力を魔法陣に流し込み、コアの内部で点状のシールドを発生させる魔法が起動したんだけど‥‥なんだこれ。初めての感覚。エネルギーが湿気っていくような、捻れていくような。なんともいえない感覚が伝わってくる。砂の城を手で押したかのような奇妙な手応えがして魔力が立ち消えてしまう。重力魔法陣も試した。魔法陣に不備があるんじゃなく、魔力そのものが劣化し魔法陣を発動させるプロセスがゴリゴリに錆びてうまく回らなくなる感じで発動しない。反動で頭の芯が痛くなる。これって魔法無効ってことだ。
「だめです。シールドとかバリヤーとかがあるんじゃなくて、あのコアの存在自体が魔法を鈍化‥‥無効化しちゃうみたいです。魔法も効かないし、同じ理屈で魔剣も斬れなくなると思われます」
「魔法が効かない。ならば‥‥普通に斬ればいいのだな。コアに触れるまでは火球も普通に飛んでいたのだから、シールドは接近中の防御に使えるだろう。1班、3班。盾持ちは持たないものをカバーしつつ分散してコアに接近しろ」
「ほら。結局斬るんじゃない」
「魔剣は使えないってわかった分マシだろ。シオンみたいにとりあえずで突っ込んでいっても手が痺れて終わりだ」
魔剣持ちのボクたちは今回は出番なしか。1班と3班の隊員が警戒しながらメロン模様の地面に侵入した。盾持ちが最初に足を踏み入れる。一瞬止まってコアからなんらかの攻撃がないか身構えていたけどなにも起きなかった。魔法シールドを先頭に後ろに盾のない隊員が続く6つのペアがそろそろと進んでいく。さすがに部下だけ死地に赴かせて自分は安全な場所で指示だけするような情けない隊長でも副隊長でもなかった。魔剣持ちで出番がないはずのンガバ副隊長とアチバドラフ隊長も、シールドなしで毅然と同行する。
「なんにも起きないっていうのが逆に気味悪いわね。召喚する怪獣はバリヤー持っているのにコアにはないし。いったいどういう生態をしているのかしら?」
ビビが呟く。
「ダンジョンにあるっていうダンジョンコアもまだ見たことないしね。こんな巨大なコアがどういう生態をしているかなんて‥‥あ」
「ん?」
そこまでいって、このコアのステータスを見ようとしてなかったことに思い至った。慌てて目を凝らすとダンジョンコアのステータスパネルが開いた。コアが巨大だから開くステータスパネルも巨大だ。内容を読もうとした横でシオンが脳天気な声を出す。
「なんにも起きないよー。ウチらもこんなとこでボーっとしててもしかたないから魔剣の魔力消してぶっ叩きにいこうよ」
『giganta labirinto kerno。巨大迷宮核。魔界の巨大生物。珪素生命体。卵型の部分はただの発光器と視覚器官。本体は網目状に拡がった糸状体。中心に魔界へ抜ける穴を持ち魔界にも糸状体を広げる。魔界と現世にまたがった存在のため、特殊な仕様の魔法陣しか機能せず通常の魔法は効果を及ぼさない。発光器は平均高さ12m。最大幅8m。表面を鏡面鱗で覆い、その鱗を様々なパターンで光らせることで脳と視覚を持つ生物の神経系に作用し昏倒させる。網状根の上で生物を昏倒させ、根から伸ばした根毛で刺し包んで養分を吸う。討伐時経験値80000。【強化状態】につき経験値3倍で240000』
『筋力: 1✕3【 3】
知力: 8✕3【24】
生命:28✕3【84】
敏捷: 8✕3【24】
精緻:18✕3【54】
感覚:12✕3【36】』
「みんな。目をつぶって」
大声で叫びボクも目をつぶったけど間に合わなかった。
「光って。虹色。きれいだよミ‥‥」
一歩進んで糸状体の上に乗ったシオンの声が途切れる。ドサッと崩折れる音。あちこちから呻き声に続いて倒れ伏す音が重なった。誰かの取り落とした剣が立てる金属音でエコーロケーションがブワッと拡がる。警備隊のメンバーは全員倒れていた。いや、ひとりだけンガバ副隊長が倒れず片膝を突いて光の攻撃に耐えていた。
「なにこれ。なにが起きたの?」
ビビの声。
「う‥‥かろうじて目はつぶったが、頭痛と目眩がひどい」
ラウリはうずくまっていたけど倒れてはいない。
「光による攻撃。てんかんの発作みたいな現象を起こすみたい。あ。なんだ?」
地面の下からモワッとした雲みたいのが沸きあがってくる。すぐにさっき見た根毛だと気がつく。昏倒して倒れた隊員やノアとシオンの身体の下からモワモワと湧き出した根毛が綿飴みたいにみんなの身体を覆っていく。
「みんなの身体が」
「ンガバ副隊長とラウリでこの根毛から仲間を脱出させてください。ボクとビビでコアを倒します。ビビ。目をつぶったままの戦闘だ。瞼の裏に発光を感じたら腕で目を覆って。エコーロケーションで動くよ。途中で誰かの剣を借りる。ビビはあの鏡張りを、ボクは地面の根を斬って斬って斬りまくる。こいつ体力がめっちゃあるから持久戦だ」
そういい置いてボクはおそらくカヴラス兄弟のお兄ちゃんだろうカヴラス1士の落とした剣に向かってダッシュした。もしコアが別の攻撃手段を持っていたら詰む。でも、そこはまあ、シオン様のいう通り。とりあえず斬ってみればわかるんじゃない。の精神で。
[参考資料]
【ハルキゲニア】『いらすとや』より
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgjabydk8DqJft31tSoUg5lqG5bwHE6lDe6QE3D1t5IP3BXbHSFFjG_Kj4Of4w6gVzkX8eRpzvq7G5oBg-UxTUKjve1HMLtWVJ0ldZ1Nd0GsdKPDbCiV6XgoY53JfXJXWWVt5DGAqNfBXYr/s800/kodai_hallucigenia.png
【オドントグリフス】『古生代水族館』より
https://www.paleoaqua.jp/paleoaqua/odontogriphus/odontogriphus.html




