辿り着いたそのさきへ4
レンの呟きにサナエは小さくかぶりを振った。
「それがおかしいのよ」
確信を持った声に、レンは何かを見落としているような気がして不安になった。
「ねぇ、私の言葉の意味、通じているのね?」
ゆっくりとしたサナエの声に導かれるように頷きながら、ふと、サナエはいくつなんだろうと疑問を抱いた。レンがサナエをここへ運んだ時、意識を失うサナエには成人した女性の色香のようなものがあった。だからこそ、余計な人間の目に触れさせておかしな騒ぎにならないよう、レンの師匠がこの部屋で一時的に匿うよう指示をしたのだが、目を覚ました今のサナエの視線には、甘さが含まれる余地など元からないようにさえ見える。
「階段から落ちた私を助けてくれたの?」
「意識を失っていたから運んだんだ。大きな怪我はなかったし、軽い脳震盪だろうってダイクン様も仰ってた。」
ダイクンという人間が誰かはわからないが、おそらく医者なのだろう。サナエが目を覚ましたとき腕には湿った布巾が添えられていた。薬草の匂いをかすかに漂わせていて、打ち身の痛みを緩和してくれている。
何にせよ、レンが部屋を提供し、介抱してくれていたのは間違いがないようだった。
寝台から出てみると軽い立ちくらみを起こしたが、それを見ていたレンが焦ってサナエの体を支えてくれた。
「助けてくれてありがとう。」
支える腕に縋りながらレンを覗き込む。初めて見るサナエの綻んだ表情に、レンは目を見張ったまま固まっていた。
だから、その次の言葉の意味を捉えることができなかった。
「あなたは、きっと“人”ではないのね?」




