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独白2(sideニーナ)

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

※今回もニーナ視点のお話になります。

フィールドではノアとシオンが魔術による激戦を繰り広げている。


(凄いわね)


今日は体育祭だ。

私は魔術戦の決勝に出場したクラスメイトのノアを応援するために、競技場にやって来ていた。


ノアは侯爵家の長男で、彼の父親は王室魔術師団長だという。

そんな彼自身も魔力が高く、いつも成績上位者に名を連ねている。

容姿も端麗で、あのクールな目つきがたまらないと女子生徒の人気も高い。


ただ、あまり人と関わるのが好きではないらしく、愛想もない。

どちらかといえば、鑑賞していたいタイプの男性だ。


(それでも優良物件ではあるのよね)


この体育祭で、なんとかお近付きになれないかと密かに狙っている。


(この試合が終わったらタオルの差し入れでもしてみようかしら。クラスメイトとしてならおかしくないわよね)



そして、ノアと闘っているシオン。

彼はあのイリスの義弟だという。

クラスが違うので詳しくは知らなかったが、試合を見るに、凄まじい魔力量だ。

見た目は愛らしい美少年といった風貌なのに、闘い方は荒々しい。


(彼は養子だけど、バーンスタイン公爵家の後継者……。クラスが違うと知り合うのは難しいかしら)


そんなことを考えている時だった、彼らの試合はどんどんヒートアップしていき、ついには巨大な魔力同士のぶつかり合いにより、観客席に魔力塊の欠片が飛び散る。


観客席の生徒達は皆、悲鳴をあげながら身体を庇ったり、逃げようとしたり、パニック状態に陥っていた。


「アルフレッド様!」


ニーナの座っていた観客席の隣のエリアから、悲壮な男子生徒の声が聞こえた。

声のほうを見ると、アルフレッドが背中に火傷を負っている姿が見えた。

どうやら魔力塊に当たったらしい。


(これは、チャンスだわ!)


私は脇目もふらずにアルフレッドの元へと向かった。



◇◇◇◇◇◇


体育祭が終わると、ニーナの名前は学園中に広まった。

王太子殿下の傷を癒やし、他の生徒も救った『光の乙女』だと、たくさんの生徒がニーナのことを褒め称え、羨望の眼差しで見る。

正直、最高の気分だった。


やはり私は『特別』なのだ。


そして、あのアルフレッド殿下とお近付きになれたことがなによりの収穫だった。


(本当に素敵だったわ。男性なのにあの美貌で、しかも王太子だなんて……)


学園一の優良物件だ。


(それに、私の魔力をとても褒めてくださった)


殿下と共に他の怪我をした生徒達を探し出し、次々と癒やしていった。

その時に「君の魔力は素晴らしいね」「本当に助かったよ。ありがとう」と極上の笑顔で言われた。


(あんな素敵な方が婚約者ならいいのに……)


アルフレッドが怪我をした時、イリスも側に居たが泣いて動揺するばかりで、何の役にも立たなかった。

本当になんであんな女が婚約者なのか……。

彼女よりも、特別な私のほうがアルフレッドに相応しいと思う。



体育祭から数日後、私はアルフレッドから生徒会室へ呼び出された。

怪我を癒やしてくれたお礼がしたいという。


ノックをして生徒会室に入ると、中にはアルフレッドと、黒髪黒目の男子生徒が居た。


(なんだ、2人きりじゃないのか……)


もしかしたら……と少しだけ期待していたのに。


「体育祭では君のおかげで、私を含め、皆を助けることができたよ。本当にありがとう。改めて君にお礼がしたいんだ」


今日のアルフレッドも最高に格好いい。


「お礼だなんて、そんな……私は自分にやれることをやっただけです」

「いや、是非受け取ってほしい。ドレスでも宝石でも、何か欲しい物があれば遠慮なく言って」


欲しいもの……。


たしかに高価なドレスや宝石も魅力的だ。

でも、そういった()を望めば、それをプレゼントとして渡され、そこでアルフレッドとの関係は終わってしまう。

私はもっとアルフレッドとの関係が続き、深まるようなものが欲しい。


「その、実は私は今まで王宮に行ったことがないんです。それで王宮で開かれるパーティに憧れがあるんです」


王宮ではアルフレッドが主催するパーティが度々開かれる。

しかし、そこに招待されるのはほとんどが高位貴族の令息・令嬢のみで、男爵令嬢であるニーナは招待されたことがなかった。


「なので、1度そのパーティに行ってみたいです」

「わかった。それなら年末に私が主催するパーティが王宮で開かれる。そこに君を招待しよう」

「ありがとうございます!」

「いや、それぐらい大したことではないよ」

「あっ、でも……」

「どうしたの?」

「あの、私、王宮のパーティに着て行くようなドレスを持ってないんです」

「なんだ、それならドレスもこちらからプレゼントさせてもらうよ」

「本当ですか?ありがとうございます!」


こうして私は年末のパーティに招待されることになった。


アルフレッドから呼び出されたことを知った私の友人達は、どんな話をしたのか聞きたがった。


「体育祭でのお礼に、年末の殿下主催のパーティに招待していただけることになったんです」

「まあ!それって王宮でのパーティですよね?」

「はい。ドレスも用意してくださるそうです」

「え?殿下がドレスを用意されるんですか?」

「はい。私にプレゼントしたいと言われました」

「それって、もしかして……」


それからは、私とアルフレッドとの噂が急速に広まった。

あからさまにイリスの(そば)で噂話をする生徒すら居た。


私から言い出したこととはいえ、あんなにすんなりとドレスを贈ることを了承したのだ。

皆が言うように、本当にアルフレッドは私に好意があるのかもしれない。


この頃の私は有頂天だった。


◇◇◇◇◇◇


噂が広まってしばらく経ったが、アルフレッドからの連絡は何もなかった。

周りからはどんなドレスなのか、エスコートはどうするのか、たくさんの期待に満ちた詮索をされる。

私は内心とても焦っていた。


そして噂の渦中に居るはずのイリスは、無反応だった。

噂のことはきっと把握しているはずなのに、何を言われていても、気にする素振りもない。

私に対しても特に何かをすることもない。

アルフレッドと共に登校し、昼食も共に摂り、そして共に下校する……相変わらずアルフレッドの婚約者のままだった。


そんなイリスを見る度に苛立ちが募る。


その日はアルフレッドが公務で学園を欠席していると誰かが言っていた。

その時、ふと思いついた。

私は自分で自分の魔法薬学の教科書を破いてボロボロにし、それを昼休みにあたかも今気付いたかのように友人達の前で見せた。


親しい友人の居ないイリスは、アルフレッドが休みだときっと1人で昼食を摂るはず。

いや、そうでなくてもいい。

ちょっとした疑念を周りに植え付ければ、それもまた噂になって広まるはず。


イリスがアルフレッドの婚約者としての資質を問われるようなことになれば……。

私はイリスをアルフレッドの婚約者の座から引きずり下ろしたかった。


しかし、そんな私の思惑は、レイラ・ヴェセリーによって呆気なく砕かれてしまう。


◇◇◇◇◇◇


その日をきっかけに、少しずつ周りの様子が変わっていってしまった。

私とアルフレッドの仲を応援してくれていたはずの人達がどんどん離れて行く。


あんなに仲の良かったキアラとカミーユにも距離を置かれてしまう。

理由を聞いても、「私のせいでこれ以上家に迷惑をかけられないから。ごめんなさい」と、青ざめた顔で曖昧な事を言うばかりで話にならなかった。


放課後、1人で裏庭のベンチに座る。


(少し前までは上手くいってたはずなのに……)


私は悔しくて仕方なかった。

どうにかしてイリスを婚約者から引きずり下ろしたい。

しかし、周りはもう頼れそうにない。


(イリスが用意してくれたドレスが破れていたことにして、パーティに参加しようかしら)


破れたドレスで登場すれば、他の招待客の目も引くはず……。

でも、あの『プラジェール』のドレスを破るなんて、もったいない気もする。


「あれ?ニーナさん、こんなところでどうしたの?」


そこに、クラス委員長、リアム・バーナードが現れた。



ニーナの話が終わらない……。

何故かどんどん長くなってしまってます。

すみません。

今日の夜にもう1話投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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