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独白1(sideニーナ)

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

※今回はニーナ視点のお話になります。

目を開けると、真っ白な天井が見える。

もう熱は下がったと言われたが、まだ身体は怠く重い。


(なんでこんなことになったんだろう?)


ぼんやりとした意識の中、私は考え続ける。


(おかしいな……私は『特別』なのに)




私、ニーナ・チェルニーは物心がついた頃には、平民として母と2人で暮らしていた。

母は娘の私から見ても美しい人で、そんな母に似た私も、周りからは可愛いとよく言われていた。


母は幼い私に「あなたは本当なら貴族の令嬢なのよ」とよく言っていた。

貴族の令嬢は、綺麗なドレスを着て、美味しいものを食べて、パーティを開くらしい。

私はその話を聞いて、私も貴族の令嬢になりたいと思った。


8歳の時に、私は光の魔力に目覚めた。

光の魔力はとても希少で、母も周りもたいそう驚き、そして皆が私を特別な子だと褒め称えた。

私はその時に自分が『特別』なのだと知った。


そして9歳の時に父が私を迎えに来た。

私の魔力が特別だから、これから私は貴族の令嬢になれると言われた。

私の父はこの地域を治める領主のチェルニー男爵だった。

母とは離れて暮らすことになってしまい寂しかったが、私は父に引き取られた。


新しい家はとても大きく綺麗で、たくさんの使用人が働いていた。

そして新しい家には継母と、歳の離れた異母兄が居た。

継母には実の娘のように愛されることはなかったけれど、衣食住の面倒をみてくれて、家庭教師を雇い、貴族の令嬢としての教育と礼儀作法を教え込まれた。


貴族の令嬢になったのだから私は毎日ドレスを着て、パーティに行くのだと思っていたけれど、それは高位貴族のすることだと言われ、がっかりした。

でも父も継母も、私の特別な魔力とその美しさならきっと高位貴族に見初められるだろうと言う。


(貴族の令嬢になりたいと思ってたら本当になれた。だからきっと、今度は高位貴族にもなれるはずだわ)


だって私は『特別』なんだから。



成長するにつれて、私はどんどんと美しくなっていき、私もそれを自覚していた。

そして15歳になった私は、多くの貴族の子息・子女が通うレクサード王立魔法学園に通うことになった。

継母には、そこで高位貴族の子息との出会いがあるだろうから、必ず縁を結ぶようにと言われた。


今になって思えば、継母は私のことを内心では良く思ってはいなかったのだろう。

でも、継母の息子である異母兄がチェルニー男爵の爵位を継いだ時に、私が高位貴族と結婚していれば、異母兄の強力な後ろ盾となる。

継母は自分の息子のために、私を我慢して受け入れたのだ。


◇◇◇◇◇◇


魔法学園の入学式、私は自分のクラスの教室で周りを物色していた。


(やっぱり私が一番可愛いわね)


さすが貴族ばかりの学園だ。

女子生徒は皆、身なりもきちんとして所作も美しい。

しかし、純粋に容姿だけとなると、自分が一番だと思った。

そして、肝心の男子生徒には目立つ容姿が何人か居る。

高位貴族と縁を結ぶなら、容姿も素敵な人が良いと思った。


(あの体格が良い赤髪と、あの長髪メガネも素敵ね。あとで爵位を確認しなきゃ)


そろそろ先生がやって来る時間だ。

皆が席に着いた頃、慌てた様子のメガネの男子生徒と黒髪の女子生徒が教室に入って来た。


その女子生徒が教室に入った途端、教室の空気がざわついた。

長い艶やかな黒髪に紫の瞳、シミひとつない真っ白な肌、そして制服からすらりと伸びた長い手足。


彼女はまるで人形のように美しかった。

先生が教室に入って来たあとも、皆彼女にチラチラと視線を向けている。

しかし、彼女はその視線に気付いていないのか、教卓に立つ担任の先生を凝視していた。


(なによ、あんなのが同じクラスに居るなんて……)


そのまま自己紹介が始まる。

黒髪の女子生徒は、自己紹介は名前だけで挨拶も簡素であっさりとしていた。


「えっと、前の人が属性を言っていたので、私も…。あの、私は光属性です」


私は自己紹介で自分の属性を控えめに公表した。

そうすることで、教室の生徒が今度は一斉に私に注目する。


(これでいいわ。ひとまず皆に私が特別だってわかってもらえたみたい)


◇◇◇◇◇◇


学園生活が始まった。


同じ貴族といっても、高位貴族と下位貴族の間には高い壁がある。

それは学園でも同じようで、すでに高位貴族には派閥があり、そこに下位貴族が入り込むのは難しい。

私の周りには同じ下位貴族や新興貴族の生徒が集まるようになった。


そして例の黒髪の美しい女子生徒、イリス・バーンスタインは公爵家の令嬢だった。

しかも王太子殿下の婚約者だという。

そんな恵まれた立場と容姿なのに、なぜかイリス自身はあまり存在感がなかった。

派閥を作ることも入ることもなく、昼休みは1人でどこかに消え、放課後も急いで教室を出て帰ってしまう。

そもそも、今までも社交にほとんど顔を出さなかったという。


(なんだ、たいしたことなかったわね)


それが私のイリスに対する評価だった。



そして私は当初の目的を果たすべく、婚約者探しに励んだ。

私が最初に目をつけたのは、担任のウィリアム先生だった。

先生は若く、整った容姿に落ち着いた柔らかい物腰で、女子生徒に絶大な人気を誇っていた。

私は担任である彼に近付くために、進んで彼の手伝いをし、勉強でわからないところがあると言っては質問をしに行った。

彼もかわいい生徒に慕われるのは満更でもないようで、少しずつ距離が近付いているように感じた。


(だけど、ウィリアム先生は爵位がイマイチなのよね)


ウィリアム先生はクルス伯爵家の次男だった。

もちろん、男爵令嬢である自分にとっては伯爵家でも充分良縁であることはわかっている。

だけど、ウィリアム先生は次男だ。

つまり、クルス伯爵家の後継者ではない。 


貴族のほとんどが、例外を除いて長男が爵位を継ぐ。

女の子しか生まれなかった場合は、養子をとるか、長女が婿をとり、その婿が爵位を継ぐ。

だから次男以降の子供は皆、自分で何かしらの職業に就いて生計を立てている者が多い。


(先生は教師だから、安泰と言えばそうだけど……)


本音を言えば、なんとなく物足りない。

学園ではウィリアム先生は人気者で、そんな彼の婚約者になれば皆から羨ましがられるだろう。

だけど、学園を卒業してしまえば、それもなくなる。


(もっと、誰からも羨ましがられるような、わかりやすい地位の人がいいわ)


そんな私は体育祭で運命の出会いをする。


1話に収まりきれず……。ニーナ視点もう1話続きます。

すみません。

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