転生1
初めて小説を書いて投稿しました。
王道の転生悪役令嬢ものです。
よろしくお願いします。
「え?」
目が覚めて周りを見渡すと見たことのない部屋だ。
「ここどこ?」
広い室内は豪華だが、少し可愛らし過ぎるインテリア。
ベッドはふかふかで、いつも寝ているシングルベッドの何倍ものサイズ、しかも天蓋付きで薄いピンクのレースが上から垂れ下がっている。
「痛っ!」
上半身を起こそうとすると思わず声が出た。
後頭部がズキズキと痛む。
右手で痛む部分に触れると長い黒髪に気付く。
(こんなに髪長かったっけ……?)
キレイで艶のある黒髪は胸の下辺りまで伸びている。
その時、控え目なノックの音と共に扉が開いた。
現れたのは20代前半くらいの女性だ。
茶色の髪をきっちりとまとめ上げ、メイド服のようなものを着ている。
彼女は私を見るなり目を見開いて
「お嬢様!お目覚めになられたのですね!」
「え?」
(お嬢様?)
たしかに私は未婚の女性だが、お嬢様と呼ばれるような年齢ではない。
「すぐに医師を呼んでまいります」
彼女はそう言うなりバタバタと部屋から出ていってしまった。
とりあえず現状を把握しようと、痛む後頭部を右手で押さえながらベッドからそろりと降りた。
途端に身体に違和感が……手足が短い……。
言いようのない不安に駆られながら、急いで大きな姿見鏡の前に立った。
そこには長い黒髪に紫の瞳をした美しい少女が映っていた。
「何これぇ……」
泣き出しそうな顔の少女がその場に座り込んだ。
その後、医師による診察を受け、私には『記憶喪失』という診断が下された。
階段から落ちて後頭部を打ったことが原因だという。
今の自分……この少女の名前も年齢もここがどこなのかも、私には答えられないのだ。
もうこれは『記憶喪失』に反論できない。
医師が帰った後、最初に会ったメイドさん…私の専属侍女というミリーさんと、この屋敷の執事というオリバーさんが自己紹介をしてくれた。
2人共取り乱したりはしていないが不安気な顔をしている。
まず私は気になっていたことを聞いてみた。
「あの、私の名前って…?」
「そうですね…まずはお嬢様自身のことをご説明したほうがよろしいでしょう」
細身の身体にかっちりとした黒のフロックコートを着込み、銀縁のメガネをかけた執事のオリバーさんが、ゆっくりと話し始めた。
「お嬢様のお名前はイリス・バーンスタイン様です。10歳になられます」
「イリス・バーンスタイン……」
それがこの少女である今の自分の名前。
なんだろう、聞いたことがある気がする。
「イリス様は公爵家であるバーンスタイン家のご息女にございます」
オリバーさんの説明によると、私の母親は私が幼い頃に病気で亡くなっており、父親であるバーンスタイン公爵は王宮での仕事のため王都にあるタウンハウスで暮らしている。
この屋敷はバーンスタイン家の領地にあり、私と使用人達だけが暮らしているそうだ。
「私に兄弟はいないのですか?」
オリバーさんは気まずそうな表情を浮かべ、それを隠すように片手でメガネを押し上げる。
「お嬢様は一人娘です。しかし女性ですので……いずれは他家へ嫁がれる身……。バーンスタイン公爵家の後継者として遠縁のシオン様が養子となり、タウンハウスにて後継者教育を受けておられます。シオン様はお嬢様と同じ10歳でして、義理の弟になられます」
「シオン…同い年の義理の弟……」
つぶやいたと同時に冷や汗が出る。
(知ってる…私はこの設定を知っている……)
私の顔色が真っ青になっていたらしく、続きはまた明日以降にとなった。
1人きりになった部屋で私は頭をかかえる。
「これ、あのゲームの悪役令嬢だぁー!!」
誤字報告ありがとうございます。
少女が写っていた→少女が映っていた
修正しました。