守ってあげる
「ねえ、同僚が隣に越してくる事ってある?」
「さあ? 漫画ならよくあるシチュエーションだけど、実際はどうなのかしら? 社宅とかならありよね」
「社宅じゃない。普通のマンションで」
「偶然ならいいけど、ストーカーの場合もあるから気をつけた方がいいんじゃない?」
「じゃあ、これから防犯グッズ買いに行くから付き合ってくんない?」
「……ケルヴィン様なの?」
「そうなの。昨日日曜日だったから家にいたんだけど、チャイム鳴って引っ越しの挨拶に来たって言うのが奴で、しかも隣だったのおかしくない?」
「もうあんたお祓いに行った方がいいんじゃない? それかロージャン様に新しい就職先と新しい部屋探してもらってもいいわよ」
「兄さんにまで迷惑掛けたくはないんだけど……兄さんって何してる人なの?」
「ケルヴィン様の話ししちゃったらロージャン様かなり驚いて、もうちょっとでケルヴィン様のアレちょん切りに行くところだったわよ」
「ちょっと! 私が今世でした黒歴史話しちゃったの!?」
「当たり前じゃない。ロージャン様にも話しとかないと、前世だけじゃなくて、今世でもずっとあんたの事心配してたのよ! ちょっとはロージャン様の気持ちも考えなさい!!」
「うっ……そりゃ、兄さんと会えるのは私も嬉しいけどさ、その辺はちょっとボカしてくれてても良かったんじゃない?」
「でも、今世のケルヴィン様しつこい上に危ないんでしょ? なら、ちゃんと話しておいた方がいいわ。今度あんたの身に何かあったらロージャン様も後追い自殺しかねないもの……そんなの許せない。ちょっと待って、今から来てもらうわ!!」
「ちょ、ちょっと待って! まだ心の準備が出来てないの! あと、30分は待って! ……ってもう電話しちゃってるし……」
「うんうん。そうなのシュネーがまだうだうだ言ってるだけなんだけどね、今世のケルヴィン様もかなりイッちゃってるみたいで隣に越して来たみたいなのよ……うん、分かったわ……15分ぐらいで来るって……あんた何してんの?」
「ねえ、服はもうどうにもならないとして、化粧落ちてない!? 大丈夫??」
「なんか、あんた憧れのアイドルに会えるオタクみたいになってるわよ」
「オタクって失礼じゃない!? だって死んでからどんだけ経ってると思ってんの!! しかも今世では初対面だし!! ああ、もう、緊張するなって方がおかしいわよ!」
「……まあ、そうかもしれないけど……でも、あんたね。あたしのロージャン様なんだからそこんとこわきまえてくれる?」
「もちろん。この間お祝いしてあげたの忘れたの? 兄さんには憧れのアイドルに対するように接するわよ」
「やっぱりアイドルなの? ミーハーね。って、そろそろ時間かしら……ほら、トイレで化粧直して来なさい。ロージャン様来ちゃうわよ」
「えっ、もう、そんな時間なの!? 兄さんにはちょっと待っててもらっててちょうだい!」
「はいはい。あたしはその間お酒でも飲んで待ってるわね。マスター、ブルドックちょうだい」
「ゆっくりね。ゆっくり飲んでて!」
「はいはい」