永遠に
「ねえ、なんかあったの?」
「うーん。今日はあんまりなかったかな?」
「あら、良かったわね。でも、疲れた顔してるわよ」
「えっ、本当? やだ今日は帰ってからパックするわ」
「それが、いいわ」
「ねえ、いつも私の話し聞いてくれてるじゃない」
「そうね。それで?」
「だからたまにはあんたの話しも聞きたくなったんだけどなんかある?」
「ある訳ないでしょ。暇だったら帰ってパックして寝なさいよ……いや、待って話す事あったわ」
「聞かせて」
「ええ、いいわ。あれはあたしがまだカロリーナだった頃」
「そこまで戻る?」
「戻るの。ケルヴィン様程じゃないけど遊んでたでしょ」
「そうね。私のところまで聞こえてきてたから相当だったわね」
「そうね。今世ではこうやって友達になってるけどさ、前世はあたしたちあんまり喋んなかったものね。懐かしいわ」
「何? 前世に戻りたかったって話しだったの?」
「戻りたいけど、違うわよ。ちょっと感傷に浸ってただけよ」
「そう、じゃあ、さっさと話して」
「んもう! せっかちな女は嫌いよ。それで、あんたが死んでからだいぶ経った頃だったわ。あの頃はケルヴィン様の遊び癖もすっかり鳴りを潜めてた何年経ったんだっけ? ……多分10年かそこらだったと思うけど、20年だったかしら? ちょっと思い出せないわ」
「ちょっと待って、あんたいつまで遊んでたのよ」
「運命の人に出会うまで」
「……マスター、こいつに塩まいてやって」
「やめてよ! もう、これからその運命の人の話しすんだからやめてちょうだい。……マスターも本当に塩なんて用意しないで!!」
「チッ」
「舌打ちとか下品よ! 全くもう……それでね、どこだったかしら? どっかのお茶会にお呼ばれした時にね、とってもダンディーな男性がいたのよ。最初はいい男がいるなって思ったぐらいであたしも声は掛けなかったのね」
「それって私も知ってる人?」
「ええ、でも、ネタばらしになっちゃうからまだ誰か言わないわ」
「ケチ」
「ケチじゃない。それで、声を掛けたのはそこから3年ぐらいだったかしら」
「長いわね。どうして声を掛けなかったのよ」
「うん。その人ね、大切な妹が死んじゃってからずっと妹の事を考えて生きてたらしくて、みんな辛気臭いって避けてたのよ」
「そんな男によく声掛けたわね」
「うん。好みだったし、もう何十年も前に亡くなった人の事なんてそろそろ忘れてるだろうと思ったから」
「なるほど。ちなみにカロリーナはそん時いくつだったの?」
「女性に聞くもんじゃないの! でも、確か三十代後半か四十代だったわよ。彼があたしだけって言うからあたしも付き合ってた男たちを次々切って彼だけになったのよ」
「結局言うのね。ふーん。遅い春だったのね」
「遅いって言うかカロリーナの時は年中春だったような……でも、そんなカロリーナを夢中にさせるなんてやっぱりいい男だったわ」
「あんたがそう言うんだったらそうなんでしょうね」
「でね、今世でもロージャン様に会えたの」
「!!!!!!?????? えっ、ちょっと待って! それ私の前世の兄じゃない! どういう事!?」
「今世もやっぱり素敵でね。こんなんになっちゃったあたしでも受け入れてくるっていうの。来世でも、会えたら結婚しようってさ。あたし嬉しくて嬉しくて」
「ちょっと待って、ら……今世の兄の性別は男? それとも女?」
「あ、あんたの事言ったら会いたがってたから今度連れてくるわ。性別はその時のお楽しみにしてて」
「……なんか凄く複雑だわ。前世の兄ならあんたみたいに男とっかえひっかえみたいな人嫌いだったのにどういう心境の変化があったのか」
「詳しくはロージャン様に聞いて。マスター、X・Y・Zちょうだい」
「待ってマスター。X・Y・Zなら私に奢らせて」
「あら、ありがと」
「あんたが前世の私の兄とずっと一緒にいてくるって言うからこれはお祝いよ」