神の袂で
1982年元旦
「うわぁ!綺麗!!」
「ほんとそれ、毎年言うよな。」
山頂の神社から見える初日の出を見るのは、3回目。一年生の時、先輩に告白したのだ。あれから2年。私は立派な受験生となっていた。先輩が卒業しても変わらず、この景色を毎年見に来るのだ。地元民しかあまり知らないので人も少ない。そんな中で今年の夢を語り合うのだった。
「私の今年の夢はね、変わらずに当麻さんといちゃいちゃすること!」
くすくす笑って言う私に、当麻さんは優しい眼差しを向けた。
「それも毎年だな。」
2人で笑うと白い息が私達を包んだ。
繋いだ手が暖かい。
「俺はね、君を幸せにすることを誓うよ。」
「本当に?」
「ああ、もちろん。」
するとおもむろに当麻さんがポケットから箱を取り出した。物心がついた時から、母が持っていた似たようなそれに、心臓が速くなる。
「卒業したら、俺と結婚してください。」
その言葉を引き金に、顔に熱が集まってゆく。しばらく無言でいると、
「へ、返事聞かせてください。」
と、マフラーで当麻さんは口元を隠した。
返事?そんなの決まってるじゃない。
「はい。私を幸せにしてください。」
嬉しさで涙が溢れた。その滴は頬を伝ってマフラーに染み込んだ。
神の袂で今、私達は誓いを交わした。