友達ができました?
気づいたら寝てしまっていました。厳密な時計はない世界ですが、多分今は深夜ではなく夜程度だと思います。なので食堂へ移動です。
予想通り、少し遅めの夕飯を食べに来た人たちが、ちらほら見かけられます。
「こんばんは。新しい人?」
「こんばんは。今日この町に付きました」
最初は話しかけてきたのは誰だろうと思いました。当たり前ですね。
ですが、その人はすぐに魔術師カードを見せてくださって、魔術師の方だと判明しました。警察手帳みたいで便利ですね。
「そう、まあ自己紹介させてもらうわ。アタシはカリュラ・ラリアル。魔術師歴が今年で1年になる、貴方のひとつ上の先輩よ……多分。あれ? 魔術師なのよね、多分」
「そうです。一応、今年からプロ魔術師です」
挨拶もほどほどに、夕食を頂いて席につきます。そして、隣に座られます。
「えっと……他に何か? 言えることは言ったのですが」
「ま、まあ、そうね。その、あの」
そういえば、この人の周り誰もいないですね。いや、早とちりはいけません。夕飯をひとりでとるくらいは普通にありえますし。むしろ、四六時中一緒なんてほうが疲れちゃうと思いますし。
「いや、あのね。違うのよ! あの」
「何も言ってないじゃないですか」
「はいっ……」
なぜ、落ち込んでるんですか!? え~、えっと、どうすればいいんでしょう。
別に隣りに座るのはいいですし、なんでしょうこの感じ。
「あの!」
「ひゃいっ!?」
突然の大声に、驚きました。
「ア、アアア、アタシと、友達になってくれない?」
「それはかまいませんが……えっと、なんでそんな緊張して、涙目に」
「だ、だって……同期の人がこの変には誰もいなくて、少し遠くの学園で魔術師資格とったせいで、ひとりで……それでいて、この辺の子たちはみんなグループができたような人ばっかりだったんだもん! その他は先輩が多くて、話しかけにくいし!」
可哀想な人ではないみたいです。転勤先で人間関係がうまくいってない人とかそんな感じみたいですね。
「よろしくおねがいします。ナル・ラトラ・テップです」
「ナルね。よろしく!」
かくして、学園外で初めて名前を教え合った人ができました。
末永い関係を築ければいいです。人間関係は広く深くが理想ですが、いまはとりあえず狭く深くで長い付き合いの方を作りたいのですから。