良い宿です
地図はとてもわかりやすく、宿屋には簡単にたどり着くことができました。
お姉さんに感謝の極みですね。
「いらっしゃい」
「こんばんは。えっと、ミリアシアってここであってますか?」
念の為に確認です。こういうことは癖にしておいたほうが、生きていくうえで恐らく役に立つでしょう。
「あってるよ。うちにお泊りかい?」
「その予定なのですが、これを渡してと」
ワタシは受付にいた女性に手紙を渡します。
女性はすぐに、その手紙を読むと「あの子からの招待状だね」と呟いて、部屋の鍵を渡してくれます。
「あの、宿代は?」
「あの子の招待なら今日はただでいいよ。普段は100リランで一泊3食付きだけどね」
「そんな悪いですよ」
「じゃあ、立派な魔術師になったら、贔屓にしてくんな! 私はそれで十分さ。そもそもこの宿屋も実は趣味で始めたのがきっかけだしね」
趣味で宿屋経営して、生計が立てられるレベルになるってすごい才能なんじゃ。
「まあ、そういうことだから遠慮はいらないよ!! 一週間くらいは面倒見てあげるから!!」
こういう時って、どうすればいいのか正解がいまだに分かりません。合計すれば40年近くは生きているはずなんですが。
今回は遠慮するのも悪いのでご好意に甘えさせていただくことにします。
「それじゃあ、ありがとうございます」
「あいよ。2階にいって右奥の部屋だよ。夕飯とかは1階にある食堂でだしてるから、早朝とかド深夜じゃなければきな」
「わかりました」
ワタシは挨拶を済まし、部屋へと入ります。結構いいお部屋だと思うのですが100リランなんですか……やっぱり、ここの女将さんは太っ腹な気がします。
でも、招待状とかそういうのがないと実はお高いとかそういうあれがあるのでしょうかね。もしくは魔術師割引とか? まあ、考えても答えはわからないのでやめておきましょう。
「もふっ!! ――ふっかふかぁ」
思わず声を出してしまいました。ベッドがあったので箒を壁に立てかけて荷物を机においてダイブしたらすごい柔らかい。
この世界って中世的なのですが、意外と生活環境はいいほうですよ。想像上の宿屋とかベッドは薄くて硬いものだったわけですから。
ドラモンクエストのあれとか絶対硬そうでしたからね。ドット絵でしたけど。
「このまま眠れそう……でも、おなかへったからやっぱりダメそう……」
ワタシは睡眠欲より食欲がまさるタイプに育ったようです。前世は睡眠欲だった気がするけど、そもそも仕事でその睡眠もギリギリだったような気がします。そういえば、死因覚えてないんですよね。過労死とかじゃないですよね……。
「もうすぐ日も落ちるんですよね……どうしましょう」
宿代が浮いたなら、ローブとか装備買おうかなぁ。