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アクニナル?

「お世話になりました」

「そんな、かしこまんなって、まあ仕事頑張れよ!」


 美味しいお茶を頂いて、ドワーフのおじさまの家を後にします。

 たしか、ここから北でしたね。


「……林がたまにあるってなると空からだと見づらいですかね」


 まあたまには歩きましょうか。


 ゆったりではありませんが、走りもしないくらいの速度で北へと周囲を見渡しながら進んでいきます。バグの見た目がよくわからないですが、モヤみたいなの出してるって言ってましたし、動物とかに似てても見分けはつきそうでよかったです。


「たまの温泉はドラム缶~……キャンプしたいなー」


 でも、女子がそれはまずそうですよね。あれは男だからできたことですよね。

 うわっ、なんか意識しだすともっと男だからできたことやっておけばよかったって思いますね、転生って!

 まあ、どちらかといえば女子よりな趣味とよく言われてた生活でしたが。

 日曜日の朝は意地でもテレビに張り付いて、7時ぐらいから見続けてから出勤でしたし。まあ、そもそも日曜休みの会社のはずなのに2月に1回確実に日曜勤務があるのがおかしかったんですけど。平日に休み増えるわけでも有給もらえるわけでもなく。


「アクニナァァァァル!!」


 林をひとつほど通りすぎた頃、おじさまの家から3時間ほど歩いたところで、突然変な声を耳にします。

 その方向を向いたら――いました、バグが。


「これ……え? ワタシ異世界に転生したはずですよね」


 そこにいたのは謎でも何でもない――いえ、謎なことは完全に謎なのですが、知識的には謎のない掃除機が存在してました。

 丁寧にツッコミを入れていくと、なんで全長が3メートルくらいあるんですか。なんで自分でかってに動いてるんですか。何で勝手に声を上げてるんですか。アクニナルってもしかしてそれ『悪になる』とかそういうあれじゃないですよね。


「アク?」


 もはや鳴き声ですね。そうですか、この世界は日曜朝だったんですね。

 ということは、ワタシも変身ができる……わけないですよね。さすがに魔法はそこまで万能じゃ――。


「アックゥゥゥゥ!!!」


 そんなことを考えていると、バグはその体の吸引器部分をこちらに向けてきます。


「もしかして……ピュアラ・ラルラ! 箒よ飛べ!!」


 全速力で空に逃げます。反対方向に逃げます。

 数秒後、後ろにあった林が掃除機に吸い込まれていきました。


「なんで科学技術の何かが、この世界にあるんですか」


 バグに対する謎が減るどころか増えた気がします。


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