死んでしまったみたいです
僕というかワタシというかは死んでしまったようです。
理由は正直、よく覚えてませんけど、死んでしまったようです。
だって、目が覚めたらしらない真っ白い空間で、目の前に大きく『あなたは死んでしましましたァァァァ!!』と若干煽り性の入った文字で書かれているんですから。
「あ、どーもどもも!! 会いたかったですよ!」
「なんですが、そのテンション」
妙なハイテンションでひとりの少女が現れた。少なくとも、ワタシの目に見えてる限りはハイテンションな少女だ。
「テンションはまあいいじゃないですか。それよりも、驚きましたよ。まさか、死んでしまうとは!!」
「いや、もうそれはわかったので、輪廻転生的な何かか、閻魔様の前に行く的なあれに連れてってくださいよ」
ワタシがそう言うと、少女が突然現れたソファーに座って「ぶーぶー」と言い出す。
「つまらない人ですね~。死んじゃったんですよ!! あなた、死んじゃった! もっと、なにか感想ないんですかぁ!」
「いや、まあ……死んじゃったんだなぁ~ってくらいしか」
「暗い……とても暗い!! なんで、こんな人が選ばれちゃったんですかね」
「選ばれた?」
何のことかさっぱりなので、つい聞き返してしまった。
「そうなんですよ。この世界でではですね。いや、この世界っていうのも正しくはないんですけど、この多元世界? 世界樹? で、ではですね。何度かに一度。あぁ、この何度かっていうのも数度やそこらじゃなくて、万とか兆とかそれ以上の単位に一回ですよ。まあ、その一回に若くてして死んでしまった人を、別世界に転生とか転移させる的なのがあるんですよ」
「そうなんですか……なんか、どこかの物語みたいですね」
「まあ、そうなんですよね」
「でも、なぜワタシが?」
「ガラガラですね」
「え? ガラガラ?」
「はい。あ、正式名称のほうがいいですか? 新井式回転抽せ――」
「わかりました! わかりましたから! それ以上はいけない!」
ワタシの中の何かがストップをしかける。
「まあ、運ですよね。でもな~こんな人がな~っていうか、あなた自分の姿もすでに曖昧じゃないですか?」
「えっ!? ……そういえば、鏡なんて数年見てませんでしたね。男だった気がするんですけど」
「まあ、一応男って聞いてたんですよ。私も。でも、なんかもうあなたほど無頓着? な人見ると、むしろもっと楽しめよ! 人生楽しめよ!! と思っちゃうのは、性格なんですかねぇ」
「そうなんですか?」
正直、よくわからない。ただこの少女はつまり、ワタシを転生させてくれる神様ってことで良さそうということはわかった。
「まあ、いいです。とらいえず、どうしましょうかね~」
「どうするというと?」
「いえ、なんかこう。転生とか転移しても楽しめそうな力を与えようと思ってたんですけど、あなたが楽しめそうな力とかさっぱり想像つかないんですよ」
「はぁ……?」
すでに記憶が曖昧だから答えようもないです。
「えっと、どの世界でしたっけ……あぁ、ここですか。じゃあ、まあとりあえず魔法つかいの才でも上げますよ。楽しんでくださいな」
「はあ……?」
この後、視界が光りに包まれてすごい長い間記憶が途切れます。
たしか最後にぼそっと聞こえたのが。
「あっ、やばっ。この世界魔術師の才のがよかった……いいや、もう私の下の神様のひとりにしておけば、あとで修正できるし、しばらくはイレギュラーとして頑張ってもらおう」
だった気がするけど、魔法つかいと魔術師で何の違いがあるんだろう?