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最強の無能力者  作者: まさかさかさま
第一章・動き出す指針
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三十三話

 薄ぼんやりとした意識の中でも、その感触だけは確たる実感となり私の唇に染み付いていた。

 興奮状態なのかただの出血多量なのか、頭がぽーっとする。

 全身にべったり張り付く自らの血が、私を暖かく包んでくれる羽毛布団のようで心地よい。

 全身でべったり張り付いた地面が、私を受け入れてくれる敷布団のようで心地よい。

 五感が受け止める全ての感覚が心地よかった。

 満身的に慢心していた。

 満身創痍に総意していた。

 望み続けた結果が訪れたのだ。

 不幸に囚われた少女を、颯爽と主人公が助けに来てくれた。

 なんて非現実的で、なんて曖昧模糊な話しだろう。

 なんて甘美で、なんて完備な話しだろう。

 全てが全て、こうなることを望んでいた結果としか思えない。

 全てを統べて、こうなることを望んだのかも知れない。

 だけれど総ては、凡てから毅然とした偶然なのだ。それは慄然とした必然でしかない。

 森羅万象、どんな出来事だって最初から偶発的に必然性を秘め、世に蔓延っているもの。

 人生という概念を一つの一本道に例えるなら、目の前の光景は偶像であり、それは辿ることにより現像と成る。

 やる前は未確定でやった後は確定。出来事なんてそれだけの話し。

 言ってしまえば、必然も偶然も何も無い。正確に言えば、必然と偶然の境などない。国境がなければ二つの国が存在し得ないのと同じで、境がなければ必然も偶然も存在はしない。あるのはただの自然。

 成ることが成す術なく成ること。成り行き。行ったら行けた、成せば成った。即ち自然の意。

 奇跡などという陳腐な不自然は、所詮自然の産物でしかない。不自然も腐自然も自然の内と言う。ちょっと腐ってたりするだけで。

 だから私を追いやったこの現実も、だから私を報いたこの幻実も、自然な成り行きが自然に成っただけ。奇蹟として遇定していたわけでもないし、軌跡として確定していたわけでもない。

 そんな風に当然のことを、頭では陶然と解釈しているのだけれど。どうやら私の願望は、頭とは別の位置に居を構えているらしい。だから頭も解釈だけするばかりで理で解しようとはしない。理解の域には達しないし息も掛からない。

 私の願望は、自然などという諦念を受け入れてくれない。望むものなどもう何もない、これで私の全てが報われた、などと綺麗にまとめてやるつもりはないということ。

 絶対にない。私の渇望がこの程度で潤ったりはしない。これまで気が遠くなるほど積み重ねてきた、気が遠くなり途絶えても重ねてきた、感情を押し殺すことで反発的に蓄積されていった私のいくつもの切望。

 現時点では慢心総意だけれど、それはあくまで現時点。これからも、いくらでも望んでやる、苦渋に見合うだけの結果を。

 甘えまくってやる。あの甲斐性無し野郎が甲斐甲斐しくなるぐらいには。これから先ずっと、多分死ぬまで。


 だからね。

 もう、死んじゃやだよ?


◆◇◆◇


 こりゃ死んだな。

 死なば諸共、それも悪くない。何かしら成し遂げて死ぬのってちょっとした夢だよな、なんつうか(おとこ)の? 野郎と心中するのは趣味じゃないが。

 別に死にたいわけじゃない。ただ、やつを倒せるなら、もしくはあいつを助けられるなら死んでもいいか、という話だ。

 だから俺は念じる。『負価壊(ふかかい)』の効果領域を限定し、発動する。

 その代わりに代償を支払う。決して能力に見合わない代償。先程発動した二回で、既にその代価の大きさは把握している。

 一度目は右目の視力を失った。二度目は、おそらく臓器のどこかが破損した。

 さて、次はどこが壊れるのか――――っと、どうやら左耳の聴覚が無くなったようだ。

 代わりに、発光野郎の行動範囲を破壊することで、移動を妨げることに成功した。

 殲光が迸る。

 これを『悪懇望(バットコントロール)』で受けるのも、もう四度目、この行為自体に大して消耗は感じない。

 そして今回もなんとか凌ぐ。発光野郎の移動を妨害したことにより、その場に留まったまま――――後ろにいるあいつを守れる位置に立ったまま、光撃を防ぐことが出来た。

 だがこのままではいずれ突破されるだろう。それは時旅が死ぬということだ。

 何をしてでも発狂発光男を仕留めなければならない。だから足を前へと出す。

 一歩、一歩。

 もはや前へ進めているかどうかも怪しいほど消耗しているが、一心不乱に両足の筋肉に漸進しろと命令を下す。

「アッはァ、いいぜェ!? てめエがくたばるかボクがくたばるか根競べだァアアアア!!」

 野郎が瞬間移動しようとする。それを俺は五度目の『負価壊(ふかかい)』で阻止。代償を支払う。何を支払ったのかは今のところ不明。


 後は単純な闘争だった。


 俺が進み、野郎が攻撃を加え、それを防ぎ、代償を支払い、また進む。


 それだけが、それだけの行為が幾度も続いた。


 やつは俺の妨害で移動出来ない。その間に、俺はやつの懐まで歩きぶっ殺してやればいい。

 俺はやつの妨害で代償を支払い続ける。その間に、やつは俺を消耗させきりぶっ殺せばいい。


 俺の漸進が届くか、やつの光撃回数上回るか。


 策なんかあったものじゃない。文字通り根競べ。どちらが早くくたばるか。


 ざっと見たところ、後十メートルはある。


 長い……。


 十メートルってこんなに長かったか?


 毎日何百メートルも移動してる俺すげえ。


 ……どうでもいいか。


 駄目だ、少し錯乱して来た。


 自分が何を考えていたか分からなくなってくる。


 まずい傾向だ。


 状況は圧倒的に不利だ。


 彼我のダメージの差が大きすぎる。


 それでも容赦無く光撃は降りかかる。


 その度に右手の得物を構え防ぐ。


 やつが移動し、照射位置を変更しようとすれば、その度に『負価壊(ふかかい)』を発動する。


 これで八度目の発動。


 支払った代償は、右聴覚。


 ついに両耳聞こえなくなっちまったか。


 マイシスターの可愛い声が聞こえなくなるのは名残惜しい。


「――――! ――――、――――――――」


 まあ、あの野郎の声が聞こえないのは幸いだな。耳栓代が浮く。


 そして九度目の発動。


 支払った代償は、おそらく肺臓。


 いきなり呼吸が苦しくなる。必要量の酸素がなかなか取り込めず、ぱくぱくとアホみたいに唇を開閉する。


 続いて十度目の発動。


 支払った代償は、左腕の触覚。左肩から先の感覚がなくなった、と思ったら、事実左腕から先が無くなったらしい。


 右腕でなかったのが幸いだ。


 ついでに代償と関係なく、殲光を打ち漏らし右肩を半分ぐらい削ってしまう。ああもったいない、せっかくのストックが。つうか右肩が上げ辛い。


 十一度目の発動。


 左足の感覚が無くなる。ギョッとしてチラと見てみると、一応左足はついていた。良かった、感覚だけがなくなったのなら問題ない。動くには動く。


 十二度目の発動。


 舌の感覚が無くなる。味覚の消失。よし、これで美唯の料理をいくらでも食える。


 ここで、残り何メートルあるか確認。


 おそらく十二メートルぐらい、か?


 ……。


 十二?


 さっき十メートルじゃなかったか?


 二メートル増えてね?


 二十パーセント増量サービス期間?


 いらねえよ。百パーセントの時点で腹一杯だっつうの。


 ああ、あれだ。


 どうやら俺は前に進んでいたつもりが、やつの殲光に押し返されて後退していたらしい。


 そしてまたやつが移動しようとする。もはや反射的に、俺は『負価壊(ふかかい)』を発動する。


 十三度目の発動。


 支払った代償は――――、



 左視力。



 そして右視力は一度目に既に失っている。



 あー……、



 なんだこりゃ。




 おかしい……、




 なんも、





 見え、






 ね、








 はいこんにちは。

 最近のマイブームはFEです。買いました? この前発売されたファイアーエムブレムの新作。発売日と私の誕生日が一日違いだったため買ってもらったのですよ、私の兄の弟に。

 こんなステキなプレゼントを買ってくれたお礼に、次は私がプレゼントを買ってあげようと思います。絶対に喜ぶでしょうね、私の兄の弟。何せヤツの趣味は知り尽くしていますから。

 まあ、とりあえず超おもろいですFE。私を廃人にせしめるぐらいには面白いです。ぜひ一度お試しあれ。

 そんな感じで、相変わらず執筆は滞っています。3DSが私の手を離してくれないのです。持ち主ににて我侭なやつでして。

 では、今回はこれぐらいでおさらばしましょう。

 また会えることを祈って。

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