二十話
「……ん、……ん?」
気が付くと、目の前に行地の顔。うぇ。
「あ、起きたんだ良人。おはろー」
「……ああ、おはろー」
“おはよう”と“ハロー”を同時にこなし、俺は欠伸をしながら伸びをする。
どうやら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。寝ていた? いつから? なぜ?
ええと、確か俺は、さっき行地の顔を拝みに救護室に来て、軽く会話して、篤木と彦星の微笑ましい親子なやり取りを見届けて、それから、それから――――、
それから?
そっから何かあったっけか?
「いやあ、びっくりしたねえ。良人いきなり倒れちゃうんだから。あれだよ、大分無理してたんでしょう? いくら丈夫でも、そんな包帯だらけの身体で出歩いちゃあ、気絶するのも無理はないね」
と、いつもの制服に身を包んだ行地が、やれやれといった風に両手の平を上に向ける。
……まあ、よく分からんがそういうことにしておくか。いちいち疑っていても仕方ない。
「つうかお前、歩いて大丈夫なのか?」
「ああ、うん、どっかの誰かさんが倒れてベットを占領しちゃったからね」
そう言えば、ここは先ほどまで行地が寝ていたベットの上だ。うぇ、そんなとこで気を失ってたのか、不快だな。すぐさまベットから降りる。
「んで、俺はどれぐらい寝てたんだ?」
「十分ぐらいだよ。早いね起きるの」
ふうん。そうか。ふうん、そうか。何か腑に落ちないが、まあいいか。
そんなことよりも、今はもっと考えるべきこと、話すべきことがある。
「で、行地。何でまだ生きてんの?」
さっそく俺は、本題を切り出す。
「死ねと?」
苦笑いで答える行地。
「それもあるが」
「それもあるんだ」
「お前、あの狂人の特大ビームに直撃してたよな? 見間違いか? それとも実は超再生能力を持ってたとか?」
「いや、僕にもよく分からないんだけどね。どうにも僕、運良く床下に逃れてたみたいでさ、致命傷ではあったけど何とか生きながらえてたみたいだよ。薄らぐ意識の中、自分が居るところが床下だってことだけは把握出来た」
?
それは苦しくないか?
「で、それよりも聞きたいんだけど、まずここはどこって話しなんだけど。ていうか、僕達あの後どうなったんだっけ? ほら、なんか突然よく分かんないのに襲われて、なんかよく分かんない内にやられて、で、よく分かんない内にここに居るわけだけど。何? 助かったの? 良人は知ってるんでしょう? 事情を、僕よりは。この部屋の外から来たんだからさ」
行地にあるまじき真剣な面持ちで、一気に聞いてくる。
おそらく、こいつもこれで戸惑っているのだろう、そりゃそうだ、こんなのに巻き込まれて平気なはずがない。その証拠に、この病室に来た時から行地は、平常を装いながらも、表情の中には困惑の色が見え隠れしていた。俺が入室して来て、起こされても、すぐに事情を聞いて来なかったのは、少なからず思考やら記憶やらの整理が付いてなかったからだろう。
「そのことなんだが、ここはどうやら『烏合の衆』っつうやつらの拠点らしくてな――――」
事の顛末を、今の状況を、推測や憶測も交えながら説明する。
◆◇◆◇
「――――それで、奈々乃さんはどこ行ったんだろうね」
一通り説明し終えたところで、行地が当然の疑問を聞いて来る。
「分からない。……だが、あいつはあの時……閃光野郎に――――」
「――――大丈夫。きっと大丈夫。だってこの僕がこうしてピンピンしてるんだ、彼女だって案外なんだかんだで助かってるよ、絶対そうだ」
「気休めだな」
「気休めだよ。こんな時だからこそ、少しでも気を休めなきゃ」
ああ、と軽く頷き、俺はどこを見るでもなく、ただボーっと壁を見つめる。
あいつ――――現のやつは言っていた。
行地は生きている、と。死ぬわけがないと。
それは正しかった。行地はこうして、無事な姿で目の前に存在している。ちゃんと、生きて存在している。
だが、現はこうも言っていた。女の子の方は死んでいる、と。確実に死んでいると。
それは……正しいのだろうか?
確かに狂人は、俺の目の前で奈々乃を手に掛けた。それはこの目でしっかりと確認している、だがそれでもだ、どうやってかは知らないが、行地はちゃんと助かっているんだ。なら奈々乃も掻き消されたとは限らないだろう、行地と同じように難を逃れているかも知れない。
いや……やはり気休めか。
所詮、希望的観測でしかない。
奈々乃は、おそらくもう――――、
「ああああああ、やめだやめ!」
ベットから勢い良く立ち上がり、俺は自分の両頬をピシャリと叩く。
「うわびっくりしたっ、どうしたのいきなり」
「うだうだ考えんのはやめだっつってんの。とにかくなんだ、要は奈々乃の無事を確認すりゃいいんだろ? そうすれば万事解決だ、今からあの訓練場に行って――――」
「――――無駄だよ」
っ!
背後から否定の声が掛けられる。
あまりに唐突過ぎて心臓が目玉が飛び出るかと思った。
振り向く。するとそこには……何やってんだこいつ。
「やあ。こんなところで会うなんて奇遇だね」
ベットの上に、布団から顔を出した神々 鬼々が居た。
「いやお前、脈絡が無いにも程があるだろ。確かに奇遇ではあるけどな」
よいしょ、とほざきベットから姿を現す神々。本当に何なんだこいつは。つうかいつから居たんだよ、全く気配がしなかったぞ。まあ、首が落ちたりくっ付いたりを目の前で見せられた後だからそこまで驚かないが。
「ええ!? いや……ええ!? ベットから美人が生まれた! ……ハッ。ま、まさか良人、気絶している間に美人の卵を産んで、それが孵ったとか」
「ちげえ」
美人の卵って何だよ。
「ふむ。おめでただね、良人君」
あんたは黙ってろ。
「ふう。用が済んだら客室に戻って来てほしいと言ってあったのに、良人君ちっとも戻ってこないじゃないか。待ちくたびれてボクの方から出向いてしまったよ。――――ふむ。自己紹介がまだだったね、ええと、行地君だったかな?」
「は、はあ」
神々の登場に戸惑った様子の行地。
「神々。神々 鬼々、ボクの名前だよ。ここの家主といったところかな。大体の事情は良人君から聞いているね? 玄関の前で倒れていた君達を治療してあげたんだ、感謝してくれ」
「えっと……有難う御座います?」
促されるままに礼を述べる。なぜか疑問系。
「うん。どういたしまして。それで良人君、話を戻すけど――――」
神々は、呆然としている行地に構うことなく、俺に向き直り、
「あの場――――君達が謎の超能力者に襲われたという、第五十学区六番訓練場は跡形もなく撤去されていたよ。既にもう更地さ、君の言うところの奈々乃君とやらはもう、あの場にはいないだろうね」
俺達が六番訓練場で襲撃されたというのは、篤木から聞かされているのだろう。もしそうじゃなかったとしても、見透かしたこいつのことだ、何を知っていてもおかしくはない。
「……学園の仕業か?」
「うん。仕事が早いね。それだけじゃないよ、あの訓練場のことは、一般人の記憶から消されている。証拠隠滅するために、存在そのものを無かったことにされているんだ」
存在を消された、か。神屠学園の常套手段だ。やつらに都合の悪い出来事は、生徒達の記憶を操作するという形で存在を消し去られるのだ。
「学園は何のために俺達を襲ったんだ。なぜあの場にあんな狂った超能力者を寄越したんだ、何が目的だ?」
「さあ。僕には知る由もないねえ。もし知っていても教える義理はないよ。まあ、君も篤木君もそこの行地君も、生きていたんだからそれでいいんじゃないかい?」
「奈々乃はどうなるんだよ!」
「ああ。すまないね、これは失念していた。そうか、その奈々乃君とやらは行方が分からないんだったっけ。確か数日前、彦星君がスカウトした子だ――――もっとも、次の日に“奈々乃 水羽は要注意人物です”とかなんとか彦星君は言ってたけどね。ボク達からしたら要注意人物が一人減ってラッキーだよ」
「ふざ、けんな」
「はあ。落ち着きたまえよ、それより今はもっと考察するべきことがあるんじゃないのかい?」
そんなものあるものかっ。
「ふふ。好きだよ、そういう目。若いねえ。でさ、よくよく考えてごらんよ、君達は“生き残っているんだ”。学園の手に掛かっているのにも関わらず、ね」
「何が言いたい?」
「ふむ。だからさ、なんで学園は君達を生かしているんだろうなーって。連中は絶対に作戦をミスしたりはしない。絶対に、だよ。それなのに君達は生きている。つまりね、学園が君達を襲った目的は、君達を廃除することじゃなかったってことさ。君達を抹殺する以外の、何か別の目的があって君達は襲われた、そう推測出来ないかい?」
「……つまり、……学園の目的は奈々乃だったのかも知れない、と?」
「ふふ。そこから先は自分で考えたまえ。何やら面白い事情になっているようだし、存分に悩み足掻くといいよ。――――くすくすくすくす」
話は終わったとばかりに、神々は不快な笑い声を上げる。静かなのに、腹の奥底に響いてくるような、そんな笑い声。哂い声。
それから神々は、一転して顔に無邪気な笑みを貼り付け、行地に話し掛ける。
「でね。行地君、実のところ、本題は君なんだよ」
「は、はいっ?」
いきなりの話題転換に、戸惑いの色を隠せない行地。
「君は確か、十五組の生徒だったね? 二つある特級の内の、劣級、十五組生だ」
「そう、ですけど、それが何か?」
すると何のポーズのつもりなのか両手を広げて、
「ふふ。なら話は早い、君は今日から『烏合の衆』の仲間入りだ。ようこそ我が団へ」
「は、はあ? その、話が飛躍し過ぎと言うか……」
「ふむ。嫌なら日常に戻ってもらって構わないんだ。ボク達に関する記憶を消してからね」
「そうじゃなくてですね、何で僕があなた達の仲間に?」
「ふむ。ボク達の存在は極秘なんでね、万が一、一般人に知られるようなことがあったら記憶を消さなきゃいけないんだ。でも幸い、彦星君に聞いたところ君は劣級の生徒だそうじゃないか、これを仲間に引き入れない手は無い」
「なんで十五組だとお前たちの仲間入りしなきゃなんねえんだよ」
なんだか雲行きが怪しくなって来たため口を挟む。友人が怪しい宗教団体の勧誘を受けているという図を見過ごせるわけがない。
「ふむ。神屠学園がどういうところなのか、君なら知っているよね? 無能力者の良人君」
人を小ばかにしたような、そんな表情。
「……胸糞の悪い人体実験場だろ」
「うん。その通りだ。学園なんてハリボテの見せ掛けさ。実態は、異能力や念粒子関連の人体実験、研究、育成を主とする、軍部直属の研究所だね。あまりに公にはなっていないけれどね、“こちら”の世界じゃ常識だよ」
“こちら”の世界。学園暗部や『烏合の衆』側の世界。数々の思惑、野望、欲望、陰謀が錯綜する、日常の裏側。
「――――じゃあこれは知っているかい? 今や神屠学園の生徒のほとんどが洗脳状態にあるってことを」
「……」
隣では、行地の顔が険しいものになっている。
「ふむ。行地君は知らなかったようだね。本人達に自覚は無いけど――――洗脳されているんだから自覚なんて出来るわけがないよね――――小等部から大学部、職員に至るまで、学園に関わるもののほとんどが学園による洗脳を受けている。毎日毎日、気付かれることなく、少しずつ脳を侵していくんだ。記憶の書き換えも思いのまま、学園に逆らうことも絶対に出来ない、強力な洗脳さ。でもね――――、一つだけ例外がある。神屠学園に所属していながら、洗脳に強い耐性を持つ、例外がね。学園側も気付いてはいるけれど、洗脳なんかするメリットもないと判断された、出来損ないの集団がね」
!
「それが、特別指導クラス、劣級十五組生、か」
神屠学園には、特別クラスを設けられた学区が、全体で十学区ある。その内の一つが、俺達の通う第五十学区十五組だ。それに対峙するように、同じ学区内に特級の一組も存在しているが。
「その理屈は分かった。つまりあれか、学園の洗脳が行き届いていない劣級に所属する生徒を、お前たちはスカウトしているってわけか。それはまあ、分かった、十五組生である行地が『烏合の衆』に誘われる理由も。だけどおかしいだろ――――」
「――――そもそも、学園にメリットなしと判断されるほど役立たずな連中を、仲間に引き入れても大した戦力にはならない。わざわざ学園内に拠点を構え、忍び込んでまでそんな役立たずをスカウトするぐらいなら、普通に神屠学園に所属していない一般人をスカウトした方が早い。君はそう言いたいんだろう?」
「ああ」
「ふふ。“メリットなしの役立たず”、ねえ。君は本当にそう思うのかな?」
「違うのか」
「ふむ。それが違うんだ。『種保有者』ってボク達は呼んでるんだけどね」
「なんだそりゃ」
「ふふ。君達のことさ。君達劣級の中にはね、この『種保有者』が紛れている確率が凄く高いんだよ」
またきな臭い名前が出てきやがった。
「ふむ。とりあえず『種保有者』の出生やら存在理由の考察とかは省いて、その特性だけ説明しよう。まあ、簡単に言うとだね。『種保有者』とは、『覚醒者』の素質がある者のことだよ」
「覚醒者……」
「そう。“覚醒者”だ。そこで仲良く眠りこけている二人も覚醒者だよ」
隣のベットで寝ている彦星と篤木を指差し言う。
数日前、魔獣との戦闘で十五組生とは思えない異能力を使って見せた、『烏合の衆』の二人。
「うん。『筋骨粒流』の篤木君と、『異心伝身』の彦星君、だったかな。二人ともB級かそこらの能力者だよ。昔は出来損ないのE級だったんだけどね、今では神屠学園第五十学区高等部一学年十五組の“勧誘班”を担う実力者だ」
いや……それは凄いのか? 細か過ぎてどうにも凄さが伝わらない。
「ふむ。今この第五十学区内の劣級十五組には六人の“勧誘班”が潜入しているんだけれど――――一学年につき二人潜入させてあるから、残りの四人は二年の十五組と三年の十五組を割り当てられているんだ――――で、その中でも特に優秀なのが、一年十五組の“勧誘班”を担当する彦星君と篤木君の二人だよ」
「へえ」
「ちなみに篤木君は見た目通りの年齢だ」
「……」
マジで年齢査証だったのかよ。
「むう。少し話が逸れたね、『種保有者』の特性についてだった。――――“覚醒者”っていうのは文字通り、固有能力が覚醒し、強力な異能力を手に入れた元『種保有者』の総称なんだ」
「だから、お前達は好き好んで十五組の生徒を勧誘するのか。『種保有者』を仲間に引き入れ、覚醒させ、強力な戦力を得るために」
「うん。そりゃあ、神屠学園外の一般人も一杯勧誘してるけどね、実力者を集めるだけなら劣級の『種保有者』をかき集めるのが一番手っ取り早いんだ。君も知っているだろう? “固有能力”を持ったB級以上の能力者が、どれだけ価値のあるものなのか」
“固有能力”。それは、一流の異能力者になるには欠かせない、自分だけの異能力。これを持っているかどうかで、実力は大分変る。“固有能力”を持ったC級能力者と、“固有能力”を持たないA級能力者で同等の扱いなのだ、それを考えるとB級の固有能力持ちというのは相当の使い手だ、少なくとも“固有能力”を持たないA級能力者と同じか、それ以上の実力は持っている。
「……んで、なんで劣級十五組にはその『種保有者』とやらが集まるんだ?」
「うん。だからさ、さっきもちょっと言ったけど、『種保有者』は洗脳への強い耐性を持っているんだよ。だからね、洗脳するのには手間の掛かる、無理に洗脳する必要も無い邪魔者として、学園の監視下から離れた、洗脳効果の薄い十五組に厄介払いされるんだ。それに、“覚醒者”に昇格さえすれば飛躍的に能力値は伸びるけど、覚醒前である『種保有者』のままだと能力は非情に弱いんだ……行地君ならよく分かるだろう? とても実践向きではない、自分の能力の弱さが。だから自然と能力の劣るクラス、劣級に『種保有者』は集まってくるのさ」
「つまり行地も『種保有者』の一人なのか」
「うん。まだそうと決まったわけじゃないけどね。十五組生で固有能力持ちっていうのは、十中八九『種保有者』なんだ。彦星君の調べによると、行地君も固有能力を持っているそうじゃないか。せっかくの機会だ、仲間に引き入れない手はない。こちらも人員不足なんでね、なるべく良い返事を期待したいんだけど……どうだい? 行地君。君はこの世界を変えようとは思わないのかい? 知らないわけじゃないだろう、今の世の中がどれだけ屈折しているのか。人体実験を平気で行う学園。毎年軍部に大量入荷される洗脳漬けの異能力者。能力の強弱で差別される異常実力社会。紛争、内戦、冷戦の蔓延る世界情勢。私腹を肥やした権力者が上層部を握る『教会自治国家』の実態。着々と世界掌握を企てる『北軍事大国』。いつ総力戦が始まってもおかしくない『東経済大国』と『西資本主義大国』の対立。それらの犠牲になっている数え切れない民衆。そ知らぬ顔で暗躍する『南中立国同盟』。そして、遠からず訪れるであろう、この世の未来の姿『魔界』。その『魔界』から訪れる“魔物”の脅威。六十年前は均衡の保たれた、平和な時代が続いていたんだ。それが念粒子の実用化とともに、世界は混沌に陥った。ボクらの目的は世界平和だ。この屈折した世界を、元の正しく平和な世に導いてみせよう。既に革命の目処は立っている。無くせばいいんだ、そもそもの原因である念粒子を、異能力を。ボクらはそのために集い戦っている。あと必要なのは戦力だけなんだ、仲間は足りなくても、足り過ぎということはない、同士ならば誰だって歓迎しよう。君の力を貸してくれないかな? 行地君」
スッと、柔らかい笑みで手を差し伸べる神々。
その手に、どう応えたものかと逡巡する行地。
戸惑ってはいるようだが、断るのならはっきりと断るやつだ。
だから、すぐに断らないということは、つまり神々の手を取るかどうか迷っているということで……。
「……」
俺に、行地の意思をどうこうする資格はない。
全て、こいつ一人で決めることだ。
下手に口を出してしまったら……気の良い悪友は、俺の都合に合わせて自分の意向を曲げかねない。
やがて口を開ける。
「……その話、僕に何かメリットはあるんですか? 世界を平和にしたいとかそんな大それたものじゃなくて、現実的な、僕個人の利益が。僕が『烏合の衆』に入って得するようなことが、あるんですか?」
「入らない場合でのデメリットは明確だよ、僕達に関する君の記憶を消す。それに、メリットもなくはない。君が参入してくれたあかつきには、君の友人、良人君をボク達の保護下に入れてあげよう。残念ながら“白でも黒でもない無地”に脅されているため、良人君本人を仲間に迎え入れることは出来ないけれど、それぐらいならやってあげよう。彼の妹である美唯君もついでに保護してあげてもいい。見たところ、君の固有能力には相当の潜在能力が秘められているからね、大抵の我侭なら聞いてあげられるぐらいには魅力的な戦力だよ」
「……」
「ああ、それと奈々乃君の行方も気になるだろう?」
!
「どうだい? 悪いようにはしないさ。決めるのは君だよ、行地君」
「……」
やがて、
「……僕は――――、」
悪友は、
「――――『烏合の衆』に、」
神々の手を――――、
◆◇◆◇