プロローグ_前編
通知が溜まったスマホの電源を切り、布団に横になる。
髙橋琉和、中学2年生。
明日から始まる夏休みを心待ちにしているような、遊びの予定ばっかりで勉強に目を向けないような、ごくごく普通の中学2年生。
明日はイツメンでカラオケに行く。初日から羽目を外し過ぎではないだろうか。
彼女の特技は寝ることのようで、何を歌おうかな。なんて考えているうちに深い眠りへと落ちてしまった。
翌朝、と言うには早すぎる時間に、彼女は目を覚ました。
それも、硬すぎる床で。
「ん、痛ぁ‥」
見渡さなくても分かる。ここは学校だ。天井には片方の電気が切れた蛍光灯があるし、右にも左にも机と椅子の脚が並んでいる。
どんなにやんちゃな生徒でも、こんなに悪い環境で眠りにつこうなんて考えないだろう。
優等生なら尚更だ。
体のあちこちが軽く痛む。随分と長く眠っていたようだけど、空を見る限りそうでもないらしい。
ご丁寧に教室の丁度真ん中に横たわっていたので、窓際に寄り外の景色を眺める。
自分の経験上、夢の世界でみる景色というのは、実際と異なる点があることが多いのだ。
ところが残念。見る限りこの校舎からの眺めは本物だった。
「いや、なんで私なの?」
ここはどこだとかどうしてここに来たのかなんて考えている場合じゃない。
目が覚めたら何故か学校に居て‥なんて内容のテレビが放送されていようと、そういうこともあるんだな。で済まされる話なのだ。
世の中にはどうやら神隠しというものも存在するようだし、これも一種の夢遊病かもしれない。
その体験をしているのが自分自身となれば、話は別だが。
暗くてはっきりは見えないけれど、自分以外にも数名ほど来ているようで、校庭の中央に集まっている姿が確認できた。
「‥行かなきゃ」
不思議と自分の心がそう言っている。
夢であろうと何処であろうと、行動を起こさなければ解決するものもしない。
誰もいない教室を後に、下へ向かう階段を駆け下りていった。




