勇者だった俺、王国に裏切られ最弱スライムへ。進化を重ね、俺を捨てた王へ復讐する
魔王軍四天王――最後の一人。
“剛腕”ガルドの首が、聖剣によって宙を舞った。
鈍い音を立てて地面へ転がる。
「剛腕ガルド討伐!!」
「勇者様が勝ったぞ!!」
戦場が歓声に包まれる。
兵士たちは武器を掲げ、互いの勝利を喜び合う。
俺は聖剣を鞘へ納め、大きく息を吐いた。
これで四天王は全滅。
魔王軍の戦力は八割以上が壊滅し、残る脅威は魔王と僅かな残党のみ。
人類の勝利は目前だった。
⸻
数日後、俺は四天王撃破の恩賞授与として、王城に呼び出されていた。
王城・謁見の間。
「勇者よ。」
玉座に座る国王が俺を見下ろす。
「これまでの功績、誠に見事であった。」
「褒美として、王家に代々伝わる秘宝を授けよう。」
侍女が黒い箱を運ぶ。
蓋が開く。
中には青白く輝く宝玉が納められていた。
疑う理由などなかった。
「ありがたく頂戴致します」
俺は手を伸ばす。
パキッ。
「……?」
宝玉に亀裂が走る。
次の瞬間。
黒い霧が噴き出した。
「ぐああああぁぁっ!!」
身体が焼ける。
いや。
溶ける。
腕が。
脚が。
身体そのものが崩れていく。
「な……んで……」
声が出ない。
喉がない。
舌もない。
霧が晴れる。
視界が異様に低い。
床に映る自分の姿を見た。
青いスライム。
(……は?)
⸻
「成功です、陛下。」
宰相が笑う。
「殺しはせん。」
国王は俺を見下ろす。
「その功績を称え、命だけは助けてやろう。」
(何を……。)
(何を言っている。)
声にならない。
身体を震わせることしかできない。
「魔王軍は既に壊滅状態。」
「勇者はもう不要だ。」
「それに。」
「お前ほどの力を持つ者は、いずれ王権を脅かす。」
国王は俺を靴先で転がす。
「よく働いた。」
「お前は最高の駒だった。」
(違う。)
(俺は……。)
(この国を守るために……。)
「安心しろ。」
「人類を救った勇者は、魔王軍との戦いで名誉の戦死を遂げた英雄だ。」
「歴史には英雄譚として残るだろう。」
「そして余は英雄を導いた名君として語り継がれる。」
「民衆は英雄譚をたいそう好む。」
国王は薄く笑う。
「……英雄本人など、生きていては邪魔なのだ。」
「森へ捨ててこい。」
衛兵が俺を木箱へ放り込む。
「その身体では三日と生きられまい。」
「せいぜい魔物の餌になるがいい。」
高笑いだけが、いつまでも耳に残っていた。
⸻
森。
数時間後。
(これはまずいな……どうする。)
ゴブリンが三匹。
昨日までなら、一歩も動かず倒せた相手。
今日は。
命懸けで逃げ回っている。
(四天王を倒した翌日にゴブリン相手に逃げ回るとは……。)
(人生、本当に何が起こるか分からないな。)
棍棒。
ぷにっ。
『ギャハハ!』
(笑うな……!)
身体が吹き飛ぶ。
痛い。
情けない。
悔しい。
それでも。
(落ち着け。)
(身体は変わっても経験は残っている。)
(使えるものは全部使え。)
必死に森を転がる。
木を避ける。
岩を避ける。
木の根を飛び越える。
(身体の動かし方が分かってきた。)
(なら。)
(地形を利用する。)
倒木を潜る。
一匹が木の根につまずく。
『ギャッ!?』
折れた枝が喉を貫いた。
(今だ!)
飛びつく。
吸収。
ぐちゃり。
身体へ流れ込む力。
(そうだ。)
(モンスターは進化する。)
(スライムは生物を吸収することで進化する種族だった。)
残る二匹が後退る。
俺の身体が赤く染まり始める。
【条件達成】
【個体進化開始】
赤い光が森を包んだ。
⸻
吸血スライム。
新たな知識。
新たな力。
血を圧縮する。
撃ち出す。
ドシュッ。
一匹。
もう一匹。
一瞬だった。
静寂が戻る。
(進化……。)
国王の言葉が蘇る。
『お前は最高の駒だった。』
(待っていろ。)
(俺はもっと進化する。)
(進化を重ね。)
(必ず。)
(俺を駒として利用し、すべてを奪ったあいつらに復讐する。)
ガサガサッ。
「いたーーー!」
犬耳を揺らした獣人の少女が飛び出してきた。
肩には身の丈ほどもある巨大なイノシシ。
棒へ括り付けて軽々と担いでいる。
「えっ?」
少女はゴブリンの死体を見る。
「これ……君がやったの?」
俺は黙って見つめ返す。
「赤いスライム……。」
「初めて見た。」
「かわいい!」
(……え?)
「今日から君、うちの子!」
ひょい。
持ち上げられる。
ぽん。
イノシシの腹へ乗せられた。
(待て。)
(このイノシシ。)
(今の俺なら一撃で吹き飛ばされそうな相手を、一人で狩ったのか。)
少女を見る。
イノシシを見る。
少女を見る。
(…………。)
(逆らわない方がいいな。)
空腹が腹を刺激する。
目の前には新鮮なイノシシ。
身体が勝手に伸びる。
「こらこら。」
少女が慌てて抱き上げる。
「吸収しちゃダメ!」
「今日の晩ご飯なんだから!」
(……。)
大人しく身体を引っ込める。
「よしよし。」
「帰ったら君のご飯もあるからね!」
少女は鼻歌交じりに歩き始めた。
イノシシに揺られながら空を見上げる。
(前言撤回。)
(復讐までの道は。)
(思っていたより、ずっと長くなりそうだった。)
誤字脱字つたないところあるかもしれませんが完結目指して頑張っていきます!
温かい目で見守っていただけたら幸いです!評価、ブクマ、感想お待ちしております!
好評頂けたら連載化します!




