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「ねぇ。ヒーローって五人組でしょ? まぁ稀に三人って設定も無きにしも非ずだけれど。――まぁ人数の話は今はいいわ。本題はね、どうして私の目の前に居るのが赤じゃないのかってことなのよ。あんた黒じゃない? 黒って言うとそんなに目立った活躍をしないポジションだと思うのよ。やっぱりヒーローの花形は赤っていうのは今も昔も変わらないと思うわけ。いや、分かってるのよ? 私の実力じゃまだ赤と対峙するのは早いって。だから軽く黒のあんたから各個撃破していこうって上の命令だしね。や、全然不満はないのよ? だってまだまだヒーローと戦う機会を与えられない同僚だっているわけだしね。でもさ、でもね? 私だって一端の悪の組織の幹部なの。悪の組織に属したからにはやっぱり赤と対決してみたいと思うわけなのよ。夢見ちゃうのよ。だからね、お願いがあるんだけど、赤、紹介してくれない?」
「友達紹介してくれない? みたいなノリで言うことなのかなぁ、それ」
「いいじゃないの。私だって私の部下だって黒よりは赤の方が士気も上がるのよ。自慢できるのよ」
「誰に?」
「ど、同僚とか両親とか?」
「平和な答えだなー」
「とっ、とにかく、赤を紹介して!」
「却下」
「なんでよっ」
「赤は暑苦しいから基本絡みたくないんだよね。っていうか俺あいつの連絡先知らないし。知りたくないし。聞きたくないし。興味ないし」
「じゃ、じゃあ他の色紹介してよ。毎度毎度あんたが相手じゃこっちもやる気でないのよ」
「却下」
「だからなんでよっ」
「だってさー、五人の中で一番俺が紳士的だよ? 他の奴らなんかと対決したら白藤泣いちゃうよ? 泣かされちゃうよ? そんなのダメだって」
「私が泣こうがわめこうがあんたに関係ないでしょ!」
「関係大有りだって。白藤が他の男に泣かされるの俺が嫌なんだもん。ほら俺たちは恋人になって愛し合っちゃって、最終的にヒーローと悪の組織の架け橋的存在になるシナリオじゃない」
「そんなシナリオは存在しない」
「じゃ、これからそういうシナリオにすればいいだけの話で」
「だー! そんなシナリオないっていいってるでしょうっ」
「もぅ白藤は素直じゃないなぁ」
「うるさいっ」
「もうさ、いいじゃん。ココにサインしちゃいなよ。俺の分は不備なしだからさ。あとは白藤のサインだけなんだし。しあわせになろうよ」
「婚姻届なんぞに誰がサインするかボケェェェ!!」
「もー。照れちゃってー」
「きぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! あんたの脳味噌の中は一体どうなってるのよっ」
「心配しなくても白藤のことでいっぱいだよ」
「気持ち悪いからその頭燃やしてこいっ」
「頭燃やしたら死んじゃうだろー。ばかだなぁ」
「馬鹿はあんただあああああっ」
今日は地元の花火大会だとか。家族連れやカップルで大いに賑わうんでしょうね。いいですよね、浴衣姿の女の子。自分には縁遠いですけど。