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追放された元・大聖女の行方は誰も知らない。

作者: 五十鈴 美優
掲載日:2026/02/05

 謁見の間は、冬の寒さよりも冷たい沈黙に包まれていた。


 大理石の床に膝をつくユリアナの視界は、俯いたまま動かない。豪奢な絨毯の縁に刺繍された金糸が、ぼんやりと目に映る。


「ユリアナ」


 玉座から降りてきたリッドの声は、かつてユリアナが知っていた優しい婚約者のそれではなく、冷徹な統治者のものだった。


「顔を上げろ」


 命じられるまま顔を上げると、見下ろすリッドの碧眼には、もはや愛情のかけらも見当たらなかった。  

 隣には、公爵令嬢シャルロッテが勝ち誇ったような微笑みを浮かべて立っている。


「お前の大聖女の称号を剥奪する」


 リッドの言葉に、謁見の間がざわめいた。居並ぶ貴族たちの視線が、一斉にユリアナに注がれる。


「そして、我が婚約者の座からも退いてもらう」


 ユリアナの胸が、きりきりと痛んだ。


 あの日から一ヶ月。

 上級魔物との戦いで先発部隊が全滅し、ユリアナだけが生き残った。癒しの力で守るはずだった仲間たちは、全員死んだ。


 ユリアナの力が足りなかったから。休息を訴えても聞き入れられず、酷使され続けた癒しの力が、肝心な時に尽きてしまったから。

 ユリアナは、自分を責め続けた。


「リッド様……」


 掠れた声で名を呼ぶと、リッドは眉をひそめた。


「王太子殿下、と呼べ」


 上級魔物討伐の功績により、リッドは念願の王太子の座を手に入れた。

 そのために、どれほどユリアナを戦場に駆り立てたことか。「大聖女なんだからできる」「泣き言を言うな」「国民のためだ」。休みたいと訴えても、リッドはそう言ってユリアナを働かせ続けた。


「王太子殿下」


 ユリアナは震える声で言い直した。


「私は……全力を尽くしました。ですが、力が……」

「言い訳は聞きたくない」


 リッドの声が、冷たく遮った。


「お前の失態により、我が国土の十分の一が瘴気に汚染された。多くの民が住む場所を失い、今も苦しんでいる。これは紛れもなく、大聖女としての貴女の責任だ」

「でも……」

「何千年もの歴史において、大聖女が戦場で力を失った例など聞いたことがない」


 そこにシャルロッテが甘い声で割り込んできた。


「つまり、ユリアナ様は初めから大聖女などではなかった。偽りの称号を掲げ、国を欺いていたのではありませんの?」


 謁見の間が、再びざわめいた。


「違います! 私は嘘など……私の力は本物でした。ただ、連日の討伐で疲弊していて……」

「疲弊?」


 リッドが鼻で笑った。


「真の大聖女であれば、そんなことで力を失うはずがない。お前は所詮、普通の聖女に過ぎなかったのだ。それを大聖女と偽り、この私を……王太子を欺いた罪は重い」


 ユリアナの脳裏に、亡くなった護衛騎士ヴェルナーの顔が浮かんだ。あの日、上級魔物の攻撃からユリアナを庇って死んだ彼は、最期に何と言っただろう。


『ユリアナ様……どうか、ご自分を……』


 そこで途切れた言葉の続きを、ユリアナはもう二度と聞くことができない。


「よって、本日をもってユリアナとの我が婚約を破棄する。聖女の称号も剥奪し、王都からの追放を命ずる」


 がらん、と何かが崩れ落ちる音がした。それがユリアナ自身の心だと気づくのに、数秒を要した。


「一週間以内に王都を出よ。二度と戻ってくるな」

「リッド様……いえ、王太子殿下。せめて、汚染地域の浄化を。私の力はまだ……」


 疲弊し、一時は翳りを見せていた癒しの力も、休養を取ればまた元の強い癒しの力に戻るはずだ。


「貴女の力など、もはや誰も信用していない」

「新たな聖女を探す方が、よほど建設的ですわ。出来損ないの元聖女にこれ以上国の資源を割く余裕はありませんの。平民出身の貴女には、このような政治の仕組みなんて分からないのでしょうけれど」


 出来損ない。

 その言葉が、ユリアナの心に突き刺さった。


 かつて奇跡の癒し手と讃えられた大聖女は、今や出来損ないと蔑まれる存在に堕ちた。守るべき人々を守れず、婚約者からも見捨てられた。


「……わかりました」


 ユリアナは立ち上がり、深々と一礼した。背筋を伸ばし、最後の誇りだけは保とうと努めた。


「長きにわたり、お世話になりました。王太子殿下のご武運を、お祈り申し上げます」


 リッドは何も答えなかった。ただ冷たい視線で見下ろすだけだった。謁見の間を後にするユリアナの背中に、貴族たちの嘲笑と囁きが降りかかる。


「所詮、成り上がりの平民だったのよ」

「よくも大聖女を名乗れたものだわ」

「王太子殿下も、あんな娘に騙されて気の毒に」


 ユリアナは歯を食いしばり、涙を堪えた。


 王城の廊下を歩きながら、ユリアナは考えた。これから、どこへ行けばいいのだろう。何をすればいいのだろう。大聖女として生きてきた十年間は、一体何だったのだろう。


 かつて自分の部屋だった場所に戻ると、既に荷物はまとめられていた。使用人たちが冷たい目でユリアナを見ている。


「一週間と言われましたが、三日で十分でしょう」


 侍女頭が、冷淡に告げた。

 ユリアナは物心ついた時から家族がいなかった。癒しの力が発現し、教会に所属したことで侍女があてがわれていた。その後ろ盾がなければ、ユリアナなどについていく侍女などいない。


「馬車を用意いたします。辺境の町までお送りしますが、それ以降はご自分でどうぞ」


 ユリアナは何も言わず、頷いた。


 三日後の早朝。霧雨の降る中、ユリアナは王都を後にした。


 馬車の窓から見える街並みは、かつて自分が守ろうとした場所。癒しの力で多くの人々を救った場所。そして今、自分を拒絶する場所。


 ユリアナは窓に手を当て、小さく呟いた。


「さようなら、ユリアナ」


 大聖女ユリアナの行方は、誰も知らない。



 辺境の町ネーデルは、王都から馬車で三日の距離にある小さな町だった。かつては交易の中継地として栄えていたが、一年前の上級魔物襲来により、町の北側一帯が瘴気に汚染され、立ち入り禁止区域となった。


 町外れの看板すらもない古びた建物。一見すると廃屋にしか見えないその場所が、回収人ギルドの拠点だった。

 ユーリは深いフードを目深に被り、ギルドの扉を開けた。


「お帰り、ユーリ」


 受付に座る少年が、顔も見ずに声をかけてくる。ルークという名の、雑務を担当する十四歳の少年だ。


「ええ」


 短く返事をして、ユーリは依頼品の入った袋を受付に置いた。中身は老婦人から頼まれた、銀の燭台と亡き夫の日記帳。瘴気に汚染された屋敷から回収してきたものだ。


「確認するね」


 ルークが袋を開け、中身を調べる。


 この回収人ギルドは、生まれつき瘴気に対する耐性の強い人々が所属し、瘴気で汚染された立ち入り禁止区域での依頼を受けるギルドだ。

 一年前に住処を追われた人々が、かつての家に置いてきたものを取って来るのが主な仕事である。


「うん、問題なし。報酬は後でギルドマスターから」

「分かった」


 ユーリは踵を返そうとした。


「あのさ」


 ルークが呼び止める。


「たまには他のメンバーとも話したら?みんな、ユーリのこと気になってるよ。腕は確かだって評判だし」

「……必要ないから」


 冷たく答え、ユーリは自室へと向かった。


 ギルドの二階は、所属する回収人たちの居住スペースになっている。ユーリの部屋は廊下の突き当たり、最も人目につかない場所だった。


 扉を閉め、ようやくフードを外す。

 鏡に映る自分の顔を見つめた。かつて大聖女と讃えられた面影は、今も変わらずそこにある。だが、その瞳の奥には、一年前にはなかった影が落ちていた。


 ユーリは手を胸に当てた。癒しの力が、静かに脈打っている。


 一年前、力を失ったと思われたあの時。本当は力が消えたわけではなかった。ただ、使い果たしただけ。酷使され続け、枯れ果てた井戸のように、空っぽになっただけ。


 王都を追放され、辺境の町に流れ着いたユーリは、三ヶ月もの間眠り続けた。安宿の薄暗い部屋で死んだように眠り、そして目覚めた時、癒しの力は戻っていた。


 それは自分のためだけに使おうと決めた。もう誰かのために無理をするのはやめ、守れなかった人々への罪滅ぼしとして、せめて遺された者たちの願いを叶えるために使おうと。


 大聖女ユリアナはただの女性のユーリと名を改め、素性を隠し、回収人ギルドで働いている。


 その時。コンコン、とノックの音がした。


「ユーリ、いるか?」


 ギルドマスターの声だ。


「います」


 フードを被り直し、扉を開ける。


 そこに立っていたのは、七十を過ぎた白髪の老人だった。

 エドガーと名乗るこの老人が、回収人ギルドの創設者にしてギルドマスターだ。かつて大富豪として名を馳せたが、十年前に隠居し、一年前にこのギルドを立ち上げた。


「少し、話がある。ついてきてくれ」


 エドガーに導かれ、ユーリはマスタールームへと足を踏み入れた。


 質素な部屋だった。大富豪の隠居とは思えないほど、装飾のない実用的な空間。書類が積まれた机と、数脚の椅子があるだけだ。


「座れ」


 エドガーが椅子を勧める。ユーリが腰を下ろすとエドガーは向かい側に座り、じっとフードの奥を見つめた。


「……何か」

「いや」


 エドガーは穏やかに微笑んだ。


「お前はいつも、必要最低限しか話さないからな。今日は少し、長話になるかもしれんと思ってな」

「依頼ですか」

「ああ。だが、普通の依頼じゃない」


 エドガーは机の引き出しから、一通の手紙を取り出した。高級そうな紙に、美しい筆跡で記されている。封蝋には、紋章が刻まれていた。


 ユーリの心臓が、跳ねた。

 その紋章を、知っている。国の北部を治める伯爵家、フォンターナ家のものだ。


「フォンターナ伯爵からの依頼だ」


 エドガーが静かに告げた。


「立ち入り禁止区域となった伯爵領から、ある物を回収してほしいとのことだ」

「……普通の依頼と、何が違うんですか」

「依頼主が、直接会いたがっている」


 ユーリの指が、わずかに震えた。


「それに、報酬が破格だ。通常の依頼の十倍。お前なら断ると思ったが、一応、話だけでも聞いてやってくれ」

「なぜ、私なんですか」

「お前が一番、腕が確かだからだ」


 エドガーは当然のように答えた。


「どういうからくりか知らないが、瘴気の濃い場所でも長時間作業ができる。それに慎重で確実だ。貴族の依頼となれば、失敗は許されん」


 ユーリは黙り込んだ。

 貴族。その言葉が、胸に引っかかる。


 一年前、自分を見捨てたのは貴族たちだった。リッドも、シャルロッテも、謁見の間で嘲笑った者たちも、皆。


「……会うだけなら」


 それでも、ユーリは頷いた。


「明日の昼、ここに来る。準備しておけ」

「分かりました」


 ユーリが立ち上がろうとすると、エドガーが言った。


「ユーリ」

「……何ですか」

「お前がどんな過去を持っていようと、私は詮索しない」


 老人の声は、穏やかだった。


「だがいつか話したくなったら、聞くぞ。この老いぼれは、秘密を守るのが得意でな」


 ユーリは何も答えず、部屋を出た。廊下を歩きながら、胸の奥がざわついていた。


 フォンターナ伯爵。

 その名を、ユーリは知っている。いや、ユリアナとして知っていた。


 一年前の上級魔物襲来の時、最も大きな被害を受けたのがフォンターナ伯爵領だった。領地の半分が瘴気に汚染され、多くの領民が家を失った。

 当時の伯爵は襲来の混乱の中で亡くなったと聞いた。跡を継いだのは若き息子らしい。それが今回の依頼者、フラン・フォンターナ。


 ユリアナと同年代だという。


 部屋に戻り、ユーリは窓の外を見つめた。北の空に黒い霞のようなものが見える。瘴気だ。風に乗って流れてくる、魔物の残した呪いのような瘴気。


 あれを生み出したのは、自分の力不足だ。

 守れなかった人々。失われた土地。その全てがユリアナの、ユーリの責任。


 何を回収しようと失われたものは戻らない。それでも、せめて遺された人々の願いくらいは叶えたい。それが、今の自分にできる唯一のことだ。



 翌日。

 昼の鐘が鳴る頃、ギルドの扉が開いた。


「失礼します」


 落ち着いた、穏やかな声だ。

 ユーリはマスタールームの隅、エドガーに指示された場所でフードを深く被って待機していた。


 マスタールームの扉が開き、一人の青年が入ってきた。

 整った顔立ちに、誠実そうな瞳。質素だが仕立ての良い服は、貴族のものだと一目で分かる。


「お待ちしておりました、伯爵」


 エドガーが立ち上がり、一礼する。フランも丁寧に礼を返した。


「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそ、光栄です」


 エドガーが椅子を勧める。


「こちらが、ユーリ。我がギルドで最も腕の立つ回収人です」


 フランの視線が、ユーリに向けられた。

 ユーリは僅かに会釈した。彼と会うのは初めてのことだが、向こうは大聖女を知っているかもしれない。声で気づかれる可能性があるため、声は極力出さないと決めた。


「初めまして」


 フランが柔らかく微笑んだ。


「フラン・フォンターナと申します。突然の依頼、申し訳ありません」


 ユーリは頷くだけで応えた。


「早速ですが、依頼の詳細を伺えますか」


 エドガーが話を進める。


「はい」


 フランは懐から、一枚の地図を取り出した。


「これが、フォンターナ伯爵領の地図です」


 机の上に広げられた地図には、赤い線で区域が区切られている。その半分以上が、黒く塗りつぶされていた。瘴気汚染区域だ。


「この場所です」


 フランが地図の一点を指差した。汚染区域の中心部だ。


「一年前まで、私の親友が所有していました」


 親友。

 その言葉に、ユーリの胸が疼いた。


「彼は、上級魔物襲来の時に亡くなりました」


 フランの声が、わずかに震えた。


「彼の家に、一つだけ取ってきてほしいものがあります。小さな木箱です。彼の書斎の本棚、二段目の左から三番目に置いてあるはずです」

「中身は?」


 エドガーが尋ねた。


「……分かりません」


 フランは首を振った。


「ただ、彼が『これだけは』と言っていたものです。形見になるものがあれば、彼の家族に届けたいのです」

「なるほど」


 フランが真剣な目でエドガーを見た。


「報酬は、金貨百枚で構いませんか」


 金貨百枚。庶民なら十年は暮らせる額だ。


「……高額ですね。小さな箱一つにしては」


 エドガーが眉を上げた。


「私にとって……彼は、かけがえのない友でした。金額に代えられるものではありません」


 その声には、嘘がなかった。

 ユーリは、フードの奥からフランを見つめた。彼の瞳には、深い悲しみと、それでも前を向こうとする強さがあった。領民のために尽くす、誠実な領主の顔だ。


 かつて、自分が守ろうとした人々と同じ。そして、守れなかった人々と同じ。


「ユーリ」


 エドガーが、静かに尋ねた。


「受けるか?」


 沈黙が流れた。フランが期待と、わずかな不安を湛えた眼差しでユーリを見ている。

 ユーリは、ゆっくりと頷いた。


「……引き受けます」


 初めて声を発した。


「ありがとうございます」


 フランが、深々と頭を下げた。

 ユーリは立ち上がり、地図に視線を落とした。指定された場所は、瘴気汚染区域のかなり深い場所。通常なら、往復だけで二日はかかる。瘴気耐性のある者であっても命の危険が伴う。


 だが、癒しの力で自己治癒が可能なユーリだけは別だ。


「準備が整い次第、出発します」

「お願いします」


 フランが顔を上げた。


「もし、危険だと判断されたら、無理はしないでください。あなたの命の方が大切です」


 その言葉に、ユーリは僅かに目を見開いた。

 貴族が、平民の、それも顔も素性も明かさない回収人の命を気遣う。それがひどく意外だった。


「……気をつけます」


 短く答え、ユーリは部屋を出た。廊下に出ると、胸の奥で何かが騒いでいた。


 親友の形見。

 あの日、自分が守れなかった命の一つ。その人の大切なものを取り戻す。


「せめて、これくらいは」


 ユーリは呟いた。癒しの力を手に宿し、瘴気に侵されぬよう、自らを守る準備を始めた。

 罪滅ぼしの旅が、また一つ始まる。



 立ち入り禁止区域の入口には、王国騎士団の検問所が設けられていた。


「回収人ギルドの者です」


 ユーリは、エドガーから渡された通行証を見せた。フォンターナ伯爵の署名と印章が入った、正式な許可証だ。


「……三日間だな」


 騎士が通行証を確認し、渋々といった様子で門を開けた。


「気をつけろ。魔物は討伐されたが、瘴気は消えちゃいない。耐性がなければ、半日も持たん」


 ユーリは頷き、門をくぐった。


 その瞬間、空気が変わった。

 薄い霧が、視界を覆う。瘴気だ。色は淡い灰色で、まるで早朝の靄のよう。だが、その霧に触れた肌が、じりじりと焼けるように痛んだ。


 ユーリは立ち止まり、両手を胸の前で組んだ。


『——セイント・ガーデン——』


 癒しの力を、解放する。

 淡い光の粒子が、ユーリの体を包んだ。金色に輝く小さな光が、肌を、髪を、服を、優しく覆っていく。

 瘴気による侵食を、絶え間なく癒していく。


 これが、ユーリが長時間この区域で活動できる理由だった。生まれ持った耐性に加え、大聖女としての強大な癒しの力。これで自分自身を守り続けることができる。


「……よし」


 ユーリは歩き出した。


 かつて賑わっていたであろう街道は、今や無人の廃墟と化していた。

 建物の壁は瘴気で変色し、扉は風に煽られて軋んでいる。道端には放置された荷車や割れた窓ガラスがあった。

 人々が慌てて逃げ出した痕跡だった。たった一年とはいえ、人が出入りしないことで時間が止まったまま廃れている。


 フォンターナ伯爵領の人々は親切で優しい人たちばかりだ、と、かつて聞いたことがある。

 ユーリの胸が、きりりと痛んだ。


「……私のせいだ」


 呟きは、誰にも届かない。


 一年前。あの日。

 もっと早く休んでいれば。力を温存していれば。リッドの命令を断る勇気があれば。

 こんなことには、ならなかったかもしれない。


 ユーリは首を振り、その思考を断ち切った。今更、後悔しても仕方がない。できることをするだけだ。

 地図を鞄から取り出して確認する。目的地まで、徒歩で一日と少し。途中、安全そうな建物で休みながら進む予定だ。


 街を抜け、森へと入る。

 木々は瘴気に侵され、葉を落としていた。幹は黒ずみ、枝は折れている。


 それでも、ユーリは歩き続けた。



 初日の夕暮れ。

 ユーリは、比較的損傷の少ない小屋を見つけた。元は猟師か木こりの休憩所だったのだろう。屋根も壁もしっかりしている。


 中に入り、荷物を下ろす。


 携帯食料と水筒を取り出し、簡素な夕食を済ませた。火は起こさない。魔物は討伐されたというが、念のためだ。

 かつては大聖女として豪華な夕食ばかりだったが、これまでの依頼で、もう慣れてしまった。


 窓の外を見ると、瘴気の霧が濃くなっていた。夜になるとより濃度が増すらしい。

 ユーリは再び癒しの力を強めた。光の粒子が体を包みこんでいく。


 その時だった。


「にゃあ」


 か細い鳴き声が、扉の向こうから聞こえた。ユーリは警戒しながら扉を開ける。


 そこにいたのは、一匹の黒猫だった。

 痩せていて、毛並みは汚れている。子猫ではないが、まだ若そうだ。瞳は澄んでいて、好奇心に満ちていた。


「……猫?」


 こんな場所に、なぜ。動物も瘴気を感じ取ることができる。迷い込んだとしても、生存本能で区域外へ逃げていくはずだ。


 猫はユーリを見上げて再び鳴いた。


「にゃあ」


 そして、ふらりと足元がふらついた。

 ユーリは咄嗟に抱き上げた。猫の体は、震えている。瘴気に侵されている。


「……仕方ないなあ」


 ユーリは猫を小屋の中に入れ、そっと床に下ろした。そして、両手を猫の上にかざす。


『——セイント・ガーデン——』


 癒しの力を注ぐと、淡い光が猫を包み、体に染み込んでいく。


 しばらくすると、猫の震えが止まった。呼吸が楽になり、瞳に生気が戻る。


「にゃあ」


 猫が嬉しそうに鳴いた。そして、ユーリの手に顔を擦り付けてくる。


「……懐かないで」


 ユーリは小さく溜息をついた。


「お前、ここにいたら死ぬよ。明日、区域の外に出なさい」


 猫はユーリの言葉など理解していないかのように、膝の上に飛び乗ってきた。そして、丸くなって眠り始める。


「……困ったな」


 ユーリは猫を撫でた。柔らかい毛並み越しに小さな体温を感じ取る。

 生きている温もりだ。


 この一年、ユーリは誰にも触れなかった。触れられなかった。人との距離を保ち、孤独に生きてきた。だが、この小さな命は何の躊躇もなくユーリに寄り添ってくる。


「……一晩だけだよ」


 ユーリはそう呟いて、猫を抱いたまま壁に背を預ける。癒しの力を自分と猫の両方に注ぎながら、浅い眠りについた。



 二日目。

 ユーリが目覚めると、猫は既に起きていた。窓辺に座り外を眺めている。


「おはよう」


 声をかけると、猫が振り返って鳴いた。ユーリは朝食を済ませ、荷物をまとめた。


「じゃあ、私は行く。お前は区域の外へ逃げなさい」


 扉を開け外に出る。

 だが、猫はユーリの後をついてきた。


「ついてこないで」


 ユーリは立ち止まり、猫を見下ろした。


「この先は、もっと瘴気が濃い。お前じゃ持たない」


 猫は、首を傾げるだけだ。


「にゃあ」


 そしてユーリの足元に擦り寄ってくる。


「……」


 ユーリは諦めた。


「分かった。ついてくるなら、勝手にしてなさい」


 歩き出すと、猫は嬉しそうにユーリの横を歩いた。時折、瘴気で体調を崩しそうになると、ユーリが立ち止まって癒しの力を注ぐ。

 その度に、猫は「にゃあ」と鳴いて感謝の意を示すかのようだった。


「お前、本当に変わった猫ね」


 ユーリは呟いた。


「普通ならこんな場所から逃げ出すのに」


 猫は答えない。ただ、ユーリの隣を歩き続ける。



 二日目の夕方、ようやく目的地が見えてきた。


 小さな丘の上に一軒の家が建っている。地図に記された、フランの親友の家だ。


 ユーリは丘を登り、家の前に立った。

 立派な造りの家だった。石造りの外壁に頑丈な木製の扉がある。貴族の別邸と言っても通用するほどの、しっかりとした建物だ。


「……ただの家にしては、立派すぎる」


 ユーリは呟いた。

 貴族の生まれだったのかもしれない。次男や三男で、爵位を継げず騎士や弁護士になる。そんな例は珍しくない。


 扉に鍵はかかっていたが、割れた窓ガラスから入ることができた。


 中に入ると、埃の匂いがした。一年間、誰も入っていない証拠だ。だが、家具や調度品は整然と並んでいた。慌てて逃げ出したような痕跡はない。


 ユーリは、家の中を見て回った。


 居間には、立派な暖炉があり壁には剣が飾られている。書斎には本がぎっしりと並んでいた。歴史書、詩集、戦術書。教養のある人物だったことが窺える。

 机の上には、楽譜が置かれていた。


「音楽も……?」


 ユーリは楽譜に触れた。

 ここに住んでいた人物の、生活の跡や趣味、そして人となりが見えてくる。もう二度と帰ってこない、自分が守れなかった人の面影が見える。


「……ごめんなさい」


 小さく呟いて、ユーリは本棚に向かった。

 二段目、左から三番目。そこに目的の木箱があった。


 手のひらに乗るほどの大きさ。だが、ずっしりと重い。黒檀で作られた、重厚な箱だ。蓋には複雑な装飾が施され、小さな鍵穴がある。

 鍵がなければ開けられそうにない。


 ユーリは箱を鞄に入れた。これで、依頼は完了だ。


(帰ろう……)


 そう思った時。


「にゃあ!」


 猫が大きく鳴いた。

 見ると、猫が机の引き出しの前で、前足で引き出しを叩いている。


「どうしたの?」


 ユーリが近づくと、猫は再び鳴いて引き出しを叩いた。


「……中に何かあるの?」


 ユーリは引き出しを開けた。

 そこにはもう一つの箱があった。こちらは先ほどの箱よりも小さく、銀細工の装飾が施されている。美しい、繊細な細工だ。


 鍵はかかっていない。

 ユーリは箱を手に取り蓋を開けようとしたが、すぐに思い直した。


「……中身を見る資格は、私にはない」


 これは亡くなった人の私物だ。勝手に開けるべきではない。

 フランに渡して、彼に判断を任せよう。ユーリは二つ目の箱も荷物に入れた。


「これでいい?」


 猫に声をかけると、満足そうに「にゃあ」と鳴いた。


 ユーリは家を後にした。丘を下り、来た道を戻る。猫はやはりユーリについてくる。


「お前、本当についてくるの」


 ユーリは立ち止まり、猫を見下ろした。


「区域の外に出たら、どこかで飼い主を探さないとね」


 猫は嬉しそうに尻尾を揺らした。

 ユーリは小さく笑い、癒しの力を自分と猫に注ぎながら再び歩き出した。


 金色の光の粒子が、瘴気の霧の中で静かに輝いていた。



 三日目。

 ユーリは検問所に戻ってきた。騎士が驚いたように目を見開いた。


「無事だったか」

「はい」


 ユーリは通行証を返却した。


「それ、猫か?」


 騎士が、ユーリの足元の黒猫を指差した。


「……拾いました」

「瘴気の中で? よく生きてたな」

「運が良かったんでしょう」


 ユーリは猫を抱き上げ、検問所を後にした。瘴気のない空気を吸うと、体が軽くなった。癒しの力の使用を、最小限に抑える。


「にゃあ」


 猫が気持ちよさそうに鳴いた。


「お前も楽になったのね」


 ユーリは猫を撫でた。

 鞄の中には、二つの箱。一つは、フランが依頼した親友の形見。もう一つは猫が見つけた謎の箱。

 

 これらを、フランに届けよう。



 フォンターナ伯爵邸は、街の中心部にあった。


 門をくぐると、真新しい石畳が続いている。建物の一部は明らかに最近建て直されたものだった。

 一年前の上級魔物襲来で被害を受け、修復したのだろう。ユーリは猫を抱いたまま、正面玄関へと向かった。


「失礼します」


 扉を叩くと、すぐに執事が現れた。


「回収人ギルドの者です」

「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」


 執事に導かれ、ユーリは館の中へ入った。廊下は明るく、清潔に保たれている。壁には絵画が飾られ、窓からは中庭が見えた。


 応接室に通されると、既にフランが待っていた。


「ようこそ」


 フランが立ち上がり、柔らかく微笑んだ。その視線が、ユーリの腕の中の黒猫に向けられる。


「……猫?」

「立ち入り禁止区域で拾いまして。離れないもので」

「構いませんよ」


 フランが近づいてくると、猫が嬉しそうに「にゃあ」と鳴いた。彼が手を差し出すと、猫はその手に顔を擦り付ける。


「人懐っこい子だ」


 ユーリは頷き、猫を床に下ろした。猫はフランの足元でくるくると回り、尻尾を揺らしている。


「どうぞ、お座りください」


 フランが椅子を勧める。ユーリは荷物を置き、腰を下ろした。フードはいつもより深く被っている。


「無事に戻られて何よりです。危険な依頼だったでしょうに」


 フランが向かいの椅子に座った。


「……いえ」


 ユーリは鞄から箱を取り出した。


「依頼の品です。本棚の二段目、左から三番目にありました」


 黒檀の重厚な箱を、テーブルに置く。


「ありがとうございます」


 フランの手が箱に触れた。その指はわずかに震えている。


「それと」


 ユーリは、もう一つの箱を取り出した。


「こちらは……机の引き出しにありました。猫が見つけたのですが、もしかしたら重要なものかと思い、持ってきました」

「猫が?」


 フランが驚いたように黒猫を見た。猫は「にゃあ」と鳴いて、フランに擦り寄る。


「そうですか……賢い子ですね。ありがとう」


 猫を撫でてから、フランは銀細工の箱を手に取った。


「こちらは後で開けさせていただきます」


 フランは黒檀の箱に視線を戻すと、懐から小さな鍵を取り出した。古びた、真鍮製の鍵だ。


「彼が以前、私に預けてくれました」


 鍵を鍵穴に差し込む。

 カチリ、と音がして箱が開いた。中にはいくつかの書類が折り畳まれて入っているようだ。フランはそれらを一つずつ取り出し、テーブルに並べる。


「土地の権利書……屋敷の所有証明……銀行の預金証書……」


 フランが呟きながら、書類を確認していく。


「宝石も」


 小さな布袋から、数個の宝石が転がり出た。エメラルド、サファイア、ルビー。どれも質の良いものだ。


「……これは」


 最後に取り出したのは、一通の手紙だった。宛名には、『フラン・フォンターナ殿へ』と書かれていた。


「私宛の……」


 フランは慎重に封を切り、手紙を広げた。


 しばらく沈黙が流れた。フランは手紙を読み、そして静かに目を閉じた。


「……やはり、彼らしい」


 そう呟いて、フランは手紙をテーブルに置いた。


「彼は、貴族の生まれでした」


 フランが懐かしむような声で語り始めた。


「子爵家の次男。爵位を継ぐ予定はなかったため、自由に学ぶことができました」


 フランの視線が遠くを見ている。猫が彼の足に顔を擦りつけていた。


「学業、剣術、音楽……何でも器用にこなす人でした。私が彼と知り合ったのは、王都の学院でです」

「……」


 ユーリは黙って聞いていた。


「彼は正義感が強く、優しい人でした。困っている人を見過ごせない。弱い者を守りたいと、いつも言っていました」


 猫がフランの膝に飛び乗った。フランは猫を撫でながら話し続ける。


「彼は学院を卒業した後、予定通り家を出て騎士団に入りました。貴族の子が騎士になるのは珍しくありませんが、彼は本当に、人々を守るために騎士になった」


 ユーリの手が、膝の上で固く握られた。


「一年前……上級魔物が襲来した時」


 フランの声が、少し沈んだ。


「彼は先発部隊に志願しました。私は止めました。危険すぎると。でも、彼は言ったんです」


 フランは目を閉じた。


「『大聖女様がいるなら大丈夫だ。それに、俺は騎士だ。人々を守るのが仕事だ』と」


 ユーリの胸が、きりりと痛んだ。


「彼の名はヴェルナー・ムーアといいます」


 ユーリの体が、硬直した。


 ヴェルナー。


 知っている。忘れるはずがない。

 あの日、ユリアナを庇って死んだ護衛騎士だ。



 一年と二カ月前。


 ユリアナは教会の正門を出て、王城への道を歩いていた。隣には、護衛騎士のヴェルナーが付き添っている。


「今日も討伐任務ですか」


 ヴェルナーが少し心配そうに尋ねた。


「ええ。北の森に魔物が出たそうよ」


 ユリアナは疲れた笑みを浮かべた。


「もう今週で五回目ね」

「……ユリアナ様、少し休まれた方が」

「大丈夫よ。大聖女なんだから、これくらいできないと」


 ユリアナは手を振った。


「でも……」

「ヴェルナー」


 ユリアナは立ち止まり、彼を見上げた。


「心配してくれてありがとう。でも、本当に大丈夫だから」


 ヴェルナーは、複雑な表情で頷いた。


「……分かりました。でも、無理だけはしないでくださいね」

「ええ、約束するわ」


 二人は再び歩き出した。王城内に入り、討伐部隊の出発地点となる広場を目指す。ユリアナのような聖女、騎士団ほか特殊魔法の術者たちが揃い、作戦の最終確認を行う予定だった。


 騎士団本部の建物に入り、広場へと繋がる廊下を通る。


 その時だった。


「リッド様、本当によろしいのですか?」


 女性の声が聞こえてきた。


 ユリアナは足を止めた。声は中庭から聞こえてくる。開け放たれた廊下の向こうにある木々の陰に、人影が見えた。


「何が?」


 男性の声。聞き慣れた、婚約者であるリッド王子の声だ。


「ユリアナ様との婚約です。彼女は大聖女ですし、民からの人気も……」

「シャルロッテ」


 リッドが女性の言葉を遮った。話し相手の女性は、公爵令嬢シャルロッテらしい。


「俺が愛しているのはお前だけだ」


 その言葉に、ユリアナの胸がきゅっと締め付けられた。


「ユリアナは、ただの道具だ。俺を王太子の座に押し上げるための」

「リッド様……」

「あんな平民上がりの女、王太子妃になど相応しくない。だが、今は必要だ。大聖女の力がなければ魔物討伐で功績を立てられない」


 木の陰から二人の姿が少し見えた。リッドがシャルロッテを抱き寄せている。


「王太子になったら、すぐにユリアナとの婚約は破棄する。そして、お前を王太子妃に迎えよう」

「まあ、リッド様」


 シャルロッテが、嬉しそうに笑った。


「でも、ユリアナ様は可哀想ですわ。あんなに働かされて」

「可哀想?」


 リッドが鼻で笑った。


「あれは大聖女なんだから、働くのが当然だろう。それに、俺の婚約者として良い暮らしをさせてやってるんだ。感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはない」

「そうですわね。平民の娘が王子の婚約者だなんて。身に余る光栄ですもの」


 二人の笑い声が、ユリアナの耳に突き刺さった。


「それに最近は、ユリアナの力が落ちてきている気がする。大聖女とは言っても所詮は人間だ。使い潰せばそのうち壊れる」

「まあ、怖いこと」

「壊れたら新しい聖女を探せばいい。どうせ……」


 その先を聞く前に、ユリアナの手が引かれた。


「ユリアナ様、こちらへ」


 ヴェルナーが、ユリアナの手を掴んで走り出した。


 中庭から離れ、別の道を通って広場へ向かう。しばらく走って、人気のない廊下で立ち止まった。


「ユリアナ様……」


 ヴェルナーは心配そうにユリアナを見つめた。


「大丈夫ですか?」

「……ええ、大丈夫よ」


 ユリアナは微笑んだ。


「でも、あんな酷いことを……!」


 ヴェルナーの声が、怒りに震えていた。


「リッド殿下は、ユリアナ様を何だと思っているんですか! 道具だなんて……!」

「ヴェルナー」


 ユリアナは、護衛騎士の肩に手を置いた。


「本当に、大丈夫だから」

「でも……」

「私、分かっていたのよ」


 ユリアナは口の端を震わせながら穏やかに笑った。


「リッドが私を愛していないことも。利用していることも」

「ユリアナ様……」

「だって考えてみて。王子殿下が平民の私を婚約者に選ぶなんて、普通じゃないでしょう?」


 ユリアナは窓の外を見た。青い空に薄黒い雲がかかり始めていた。


「確かに、私は他の聖女よりも強い癒しの力を持っている。大聖女と呼ばれるほどに。でも、それだけよ」

「そんなことは……」

「所詮は平民。リッドの後ろ盾があるから、私は良い暮らしができている。教会での地位も、周りからの尊敬も、全部彼のおかげ。……だから、休みなく働くのも当たり前なのよ。それが私の役割だから」


 ヴェルナーが苦しそうに顔を歪めた。


「あなたは、もっと大切にされるべきです。あなたの力は、あなた自身のものです。誰かに利用されるためのものじゃない」

「ヴェルナー」


 ユリアナは首を振った。


「ありがとう。でも、大丈夫。私はこれでいいの」


 そう言って、ユリアナは歩き出した。背中が少し震えていた。ヴェルナーはその背中を見つめ、拳を強く握りしめた。


 ◇


 数日後。


 夕暮れ時。ユリアナとヴェルナーは、魔物討伐の任務から戻ってきた。

 その日は特に激しい戦いだった。ユリアナは何度も癒しの力を使い、負傷した兵士たちを治療した。ユリアナの足取りは、重かった。


「ユリアナ様、大丈夫ですか?」


 ヴェルナーが支えようとすると、ユリアナは笑顔で首を振った。


「平気よ。ちょっと疲れただけ」

「今日は、ゆっくり休んでください」

「ええ、そうするわ」


 教会の門が見えてきた。その時、ヴェルナーが立ち止まった。


「どうしたの?ヴェルナー」


 ユリアナが振り返ると、ヴェルナーが真剣な表情で自分を見つめていた。


「……少し、お時間をいただけますか」

「……?ええ」


 二人は教会の裏手にある小さな庭へと向かった。ベンチに腰を下ろすと、ヴェルナーはしばらく黙っていた。


「どうかしたの、ヴェルナー?」

「ユリアナ様」


 ヴェルナーは深呼吸を一つすると、ユリアナの目を真っ直ぐ見つめた。


「俺は、あなたを……愛しています」


 ユリアナの目が、大きく見開かれた。


「ヴェルナー……」

「あなたは、いつも笑っている。どんなに辛くても、苦しくても、他人のために笑顔でいる」


 ヴェルナーの声が、震えた。


「でも俺には分かるんです。このままじゃ、あなたは壊れてしまう」

「……」


 ヴェルナーが、ユリアナの手を取った。


「だから……この魔物討伐に区切りがついたら、俺と一緒に逃げましょう」

「逃げる……?」

「北部に、俺の持つ家があります」


 ヴェルナーが、優しく微笑んだ。


「フォンターナ伯爵領です。街のみんなは親切で優しい人たちばかりですから、ユリアナ様もきっとすぐに馴染めますよ」

「でも……」

「リッド殿下のことは、忘れてください」


 ヴェルナーが真剣な目で言った。


「あの方は、あなたを大切にしない。でも、俺は違う。俺はあなたを守ります。あなたを幸せにします」


 ユリアナは、ヴェルナーの手を見つめた。

 温かい手。自分を守ってくれる、強い手だった。


「北部で、静かに暮らしましょう。もう、無理に癒しの力を使わなくていい。あなたは、あなた自身のために生きていい」


 ユリアナの胸が、熱くなった。

 その手を取りたい。ヴェルナーと一緒に、どこか遠くへ行きたい。


「……ごめんなさい」


 ユリアナは、静かに首を振った。


「私には、できない」

「なぜですか?」

「リッドは……確かに私を利用しているわ。でも、私にも恩があるの」


 ユリアナは、ヴェルナーの手を優しく握り返した。


「平民の私を、ここまで引き上げてくれた。大聖女として、人々から尊敬される立場を与えてくれた」

「でも、それは……」

「それに」


 ユリアナは微笑んだ。


「ただの聖女が、王子との婚約を一方的に破棄するなんて、できないわ。私にはそんな力はないの」

「ユリアナ様……」

「ヴェルナー、あなたの気持ちは嬉しいわ。本当に」


 ユリアナは立ち上がった。


「でも、私はここに残る。私の役割を果たすために」

「そんな……」


 ヴェルナーが、苦しそうに顔を伏せた。


「分かりました」


 しばらくして、ヴェルナーが顔を上げた。


「でも、約束してください。もし、本当に辛くなったら。もう耐えられないと思ったら」


 ヴェルナーが、ユリアナの手を握った。


「その時は俺を頼ってください。逃げる手はずは整えておきますから」


 ユリアナは頷いた。


「……ありがとう、ヴェルナー」


 それから三日後の朝、教会に緊急の知らせが届いた。


「上級魔物襲来!」


 騎士団の伝令が、息を切らせて告げた。


「北部、フォンターナ伯爵領ならびにラード侯爵領に上級魔物が出現! 至急、討伐部隊の編成を!」


 王城は、慌ただしくなった。リッドが指揮を取り、緊急討伐部隊が編成される。先発部隊と後発部隊、二段構えの作戦となった。


「ユリアナ」


 リッドが、冷たい目でユリアナを見た。


「お前は先発部隊に同行しろ。癒しの力で兵士たちを守れ」

「……はい」


 ユリアナは頷いた。連日の討伐任務で癒しの力に翳りが見えてきたが、どうにか持ちこたえるしかない。

 準備を整え、出陣の場へと向かう。既に先発部隊が集まっていた。


「ユリアナ様」


 ヴェルナーが、そこにいた。


「ヴェルナー……? あなたも、先発部隊に?」

「はい」


 ヴェルナーが、決意を込めた目で答えた。


「俺は、あなたの護衛騎士です。どこへでも、ついていきます。あなたを守らせてください」


 ユリアナは、何も言えなかった。ただ、頷くことしかできなかった。



「ヴェルナー……さん」


 優しく、正義感が強く、いつも自分を守ってくれた人。自分が守れなかった人。

 ユーリは何も言えなかった。言葉が、喉に詰まる。


 フランはヴェルナーの親友だった。その一方で自分は、ヴェルナーを死なせた張本人。


 力が足りず守れなかった。もし自分がもっと強ければ。もし、もっと力を温存していれば。

 ヴェルナーは死ななかったかもしれない。


「きっと、最後まで人々を守ろうとしたのでしょう。彼らしい」


 ユーリは俯いた。フードの下で、涙が溢れそうになるのを必死に堪える。


「この手紙には彼の遺言が書かれています。財産は全て、領民のために使ってほしいと」


 フランが手紙を手に取った。


「……」

「彼は、最後まで人々のことを考えていたのですね」


 フランの声が優しく響く。


「だから、私はこの財産を使って、領民の再建を支援します。それが、彼の願いですから」


 猫が「にゃあ」と鳴いた。


「ありがとうございました」


 フランがユーリに向き直った。


「あなたのおかげで、親友の遺志を知ることができました。これは、報酬です」


 フランは革袋を差し出した。中には約束通りの金貨が入っているのだろう。


「……はい」

「大聖女ユリアナ様……」


 ユーリの心臓が、跳ねた。フードの下で、表情が強張る。


(気づかれた……?)


 いや、違う。

 フランの視線は、手紙に向けられたままだ。


「……を、ご存じですか?」


 フランが顔を上げ、ユーリに尋ねた。ユーリは恐る恐る顔を上げた。彼の瞳に疑念の色はない。


「……いえ」


 ユーリは首を横に振った。


「王都を離れられてからの行方は、誰も知らないのでは」

「そうですか」


 フランは少し残念そうに頷いた。


「そうですよね。一年前、婚約破棄されて王都から追放されたと聞きました。その後の消息は、誰も知らない、と。私は当時爵位を継いだばかりの上に街の再建をしていたものですから、詳しいことは知らないのです」


 ユーリは黙って聞いていた。胸の奥が、きりりと痛む。フランは手紙を置き、もう一つの小さな箱を手に取った。銀細工の装飾が施された、美しい箱。


「この箱は、机の引き出しにあったものですよね?」

「……はい」


 ユーリが頷くと、フランは安心したように微笑んだ。


「丁度よかった」

「え?」

「実は」


 フランが手紙を指差し、一節を読み上げた。


「ヴェルナーの手紙に、『机の引き出しにある箱を、大聖女ユリアナ様に渡してほしい。これがあれば、ユリアナ様は自由になれる』と」


 ユーリの目が、大きく見開かれた。


「自由に……?」


 フランが頷いた。


「何が入っているのかは、俺にも分かりません。でも、ヴェルナーがこう書いている以上、きっと大切なものなのでしょう」


 フランは箱をテーブルに置き、ユーリを見つめた。


「お願いがあります」

「……何でしょうか」

「この箱を、大聖女ユリアナ様に届けてほしいのです」


 ユーリは息を呑んだ。


「え……。でも……私は、ユリアナ様の居場所など……」

「もちろん、すぐにとは言いません」


 フランが手を上げた。


「いつか、機会があれば」


 ユーリは黙り込んだ。フランはしばらく待っていたが、やがて小さく笑った。


「すみません。回収人の方の仕事ではありませんよね」


 フランは箱を手に取った。


「後で、ギルドマスターに頼んでみます。誰か、ユリアナ様の居場所を探せる人を紹介してもらえるかもしれません」

「いえ」


 ユーリが、静かに言った。


「……心当たりがあります」

「え?」


 フランが驚いたように目を見開いた。


「心当たり、ですか?」

「はい」


 ユーリは頷いた。


「……もしかしたら、辿り着けるかもしれません」


 嘘ではない。自分自身に届けるのだから、確実に辿り着ける。


「本当ですか?」


 フランの顔が、明るくなった。


「ええ。お引き受けします」

「ありがとうございます!」


 フランは立ち上がり、深々と頭を下げた。


「ヴェルナーもきっと喜びます」


 そして、懐から革袋を取り出した。


「この依頼の報酬です。先にお支払いします」

「……いえ、まだ何も」

「いいんです。あなたを信頼していますから。もしユリアナ様に届けられたらお知らせください」


 ユーリは革袋を受け取った。ずっしりとした重みだ。金貨がかなり入っているのだろう。


「……承知しました」


 ユーリは箱を受け取り、荷物に仕舞った。


「必ず、お伝えします」

「ありがとうございます」


 フランが、安堵したように微笑んだ。


 その時、膝の上の猫が「にゃあ」と鳴いた。猫は、フランの膝から飛び降りず、むしろ丸くなって居心地良さそうにしている。


「……この猫」


 ユーリが、ふと思いついたように言った。


「伯爵家で引き取っていただけますか?」

「え?」


 フランが驚いて猫を見た。


「でも、あなたの猫では……」

「拾っただけです。私には、猫を飼う余裕がありません。でも、この子は伯爵様にも懐いているようですし」

「ええ、私は構いませんが」


 フランが猫を撫でると、猫は嬉しそうに喉を鳴らした。


「この子も、きっと幸せになれると思います」

「では……」


 ユーリが立ち上がろうとした、その時。


 猫が、突然フランの膝から飛び降りた。そして一直線にユーリの元へ駆け寄り、足元に擦り寄ってくる。


「にゃあ」


 猫が、ユーリを見上げて鳴いた。


「……」


 ユーリは困ったように猫を見下ろした。それを見たフランは穏やかに笑った。


「この子は、貴女のことが好きみたいですよ」

「でも……」

「猫は、自分の居場所を自分で選ぶといいます。この子は貴女を選んだんです」


 ユーリは溜息をついた。


「……仕方ありませんね」


 猫を抱き上げると、猫は嬉しそうに「にゃあ」と鳴いた。


「では、これで失礼します」

「はい。お気をつけて」


 フランが立ち上がり、扉まで見送ってくれた。


「もし、何かあれば、いつでも連絡してください」

「……ありがとうございます」


 ユーリは一礼し、伯爵邸を後にした。


 猫を抱いて、回収人ギルドへの道を歩く。

 鞄の中には二つの革袋。そして一つの小さな箱。ヴェルナーが自分のために遺してくれたもの。


「自由になれる……?」


 ユーリは呟いた。

 一体、何が入っているのだろう。なぜ、これで自由になれるのだろう。


 猫がユーリの腕の中で「にゃあ」と鳴いた。



 ギルドに戻った時には、既に日が暮れていた。


 ユーリは受付のルークに軽く会釈をして、二階の自室へと向かった。猫が後をついてくる。

 部屋に入り、扉を閉めるとすぐ鞄を下ろし、銀細工の小さな箱を取り出した。


 ヴェルナーが自分のために遺してくれたもの。ユーリは深呼吸をして、箱の蓋を開けた。


 中には、三つのものが入っていた。


 一つ目は、指輪。繊細な銀細工に、深紅のルビーが輝いている。恐らく婚約指輪だ。そう思った瞬間、ユーリの胸が締め付けられた。


 二つ目は、権利書と鍵だ。書かれた住所に見覚えがある。今回訪れた、あの家のものだ。

 三つ目は、手紙だった。ユーリは震える手で手紙を広げた。



 ユリアナ様へ


 本当はこの箱を、直接お渡ししたいところです。でも、もしそれが叶いそうになかった時のために、この手紙を同封します。


 まず、指輪について。

 これは、俺があなたに贈りたかったものです。受け取っていただかなくて構いません。売れば、当面の生活費には十分なはずです。

 でも、もしよければ受け取ってください。それが、俺の願いです。


 次に、この鍵と権利書について。

 これは、フォンターナ伯爵領にある俺の家のものです。もし、あなたが行き場を失ったなら、どうかここを使ってください。

 フラン・フォンターナ伯爵令息を頼ってください。彼は信用できる人です。きっと、あなたを助けてくれるでしょう。


 最後に。

 ユリアナ様、あなたはいつも他人のために生きてきました。自分を犠牲にして、人々を守ってきました。

 でも、これからは違います。どうか、あなた自身のために力を使ってください。

 安心して暮らし、信頼できる友人や大切な人と出会えることを、俺は心から祈っています。


 ヴェルナー・ムーア



 手紙はそこで終わっていた。ただ、ヴェルナーの優しさだけが文字に込められていた。


「ヴェルナー……」


 声が、震える。

 ずっと堪えてきた。一年間、泣かないようにしてきた。罪悪感と、後悔と、悲しみを、心の奥に押し込めていた。


「ごめんなさい……ごめんなさい……!」


 ユーリは、声を上げて泣いた。


 あの日。

 上級魔物の攻撃を防ぎきれなかった自分。ヴェルナーを守れなかった自分。彼の告白に、応えられなかった自分。


 全てが、悔やまれた。


「私……あなたのことを、信頼していた……利用される毎日の中で、あなただけは」


 ユーリは手紙を握りしめた。涙が止まらない。


「でも気づいたの……あなたが、いなくなってから……」


 ユーリの声が、部屋に響く。


「私、あなたのことを……愛してた……」


 でも、遅かった。気づいた時には、もう彼はいなかった。告白に応えることも、感謝を伝えることも、何もかも手遅れだった。


「だから……だから、せめて……」


 ユーリは涙を拭おうとした。


「せめて、罪滅ぼしを……」


 その時、猫が近づいてきた。


「にゃあ」


 猫はユーリの膝に飛び乗り、顔を近づけてきた。そして、小さな舌で、ユーリの頬を舐めた。


「……ありがとう」


 ユーリは猫を抱きしめた。温かくて柔らかい。命が生きている。

 猫に慰められながら、ユーリは静かに泣き続けた。



 どれくらい時間が経っただろう。涙が枯れた頃、ユーリは顔を上げた。


 手紙をもう一度読む。


『あなた自身のために力を使ってください』

『信頼できる友人や大切な人と出会えることを、俺は心から祈っています』


 ヴェルナーの言葉が、心に響く。


「……そうね」


 ユーリは呟いた。


「もう、一人じゃない」


 猫が「にゃあ」と鳴いた。ユーリは立ち上がり、荷物から報酬の革袋を取り出した。


「行こう」


 猫に声をかけ、部屋を出る。階段を下り、一階の受付へと向かった。ルークが書類を整理しながら顔を上げた。


「お、ユーリ。どうした?」

「ギルドへの手数料を払うわ」


 ユーリは革袋から金貨を取り出し、受付に置いた。


「今回の依頼分」

「おお、ありがとう」


 ルークが金貨を数え始める。


 その時、ギルドの扉が開いた。


「ただいまー!」


 明るい声と共に三人の女性が入ってきた。ギルドに所属する他の回収人たちだ。皆、ユーリと同年代くらいだった。


「お疲れ様」


 ルークが手を振る。


「今日の依頼、どうだった?」

「まあまあかな。瘴気は薄かったし」


 一人が答えながら、受付に近づいてきた。そしてユーリに着いてきた猫に気づいた。


「あれ、猫?」

「可愛い!」


 別の女性が、しゃがみ込んで猫を撫でた。


「黒猫だ。綺麗な毛並み」


 猫は撫でられながらもユーリの方をちらちらと見ている。


「どこから来たのー?」


 一人が猫を抱き上げ、受付近くの休憩スペースに座りながら尋ねた。ユーリは、少し躊躇した。

 

 だがその時、ヴェルナーの言葉が、脳裏に蘇る。


『信頼できる友人や大切な人と出会えることを、祈っています』


 そうだ。

 もう、一人で抱え込まなくていい。少しずつでいい。人と、繋がっていけばいい。


「……私の、猫」


 ユーリがそう静かに言うと、三人の女性が驚いたようにユーリを見た。


「ユーリさんの?」

「そう。立ち入り禁止区域で拾ったの」


 ユーリは少し間を置いて、尋ねた。


「あの……猫の飼い方、知らない?」


 三人の顔が、パッと明るくなった。


「知ってる知ってる!」

「私、昔飼ってたよ」

「わあ、ユーリさんと初めてちゃんと話した!」


 一人が嬉しそうに笑った。猫は床に降りてユーリの足元へ行く。


「ずっと話してみたかったんだよね。でも、いつも一人でいるから声かけづらくて」

「そうそう。でも腕は確かだって評判だし」

「猫の飼い方なら教えるよ! ご飯とかさ」


 三人が次々と話しかけてくる。ユーリは、フードの下で小さく微笑んだ。


「……ありがとう」

「名前は? 付けてないの?」


 ルークが書き物をしながら受付から尋ねた。

 ユーリは猫を見下ろすと、猫がユーリを見上げて「にゃあ」と鳴く。ユーリはしゃがみ込み、猫を抱き上げた。


 顔を、見合わせる。

 黒い毛並みに澄んだ瞳。自分を慰めてくれた、小さな命。


「名前は……」


 自然と、口をついて出た。


「……ヴェルナー、よ」


 静かな声で、ユーリは告げた。女性たちが、少し驚いたように顔を見合わせた。


「ヴェルナー?」

「珍しい名前……!」

「でも良い名前ね」


 三人が微笑んだ。


「ヴェルナー」


 もう一度、名前を呼ぶ。猫が「にゃあ」と嬉しそうに鳴いた。


 ユーリの胸が温かくなった。失ったものは戻らない。でも、新しいものが生まれている。

 新しい繋がりが始まろうとしている。


「よろしくね、ヴェルナー」









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改めて、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!

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