妖精の祝福
番外編
夜の森で、11歳のエリスは泣いている幼子を見つけた。
青緑の髪。
三歳ほどの年頃。
両親を呼ぶ声。
喪服の男性がそばに居た。
両親を亡くしたばかりだと、すぐに分かる。
少女の周囲で、空気が微かに揺れていた。
(この子・・・)
理由は分からない。
ただ、直感が告げていた。
このままでは、魔力暴走によりこの子は壊れる。
エリスは姿を透明に消したまましゃがみ込み、声だけを落とす。
「大丈夫」
胸に手を当て、妖精の血を静かに巡らせた。
祝福は奇跡ではない。
寿命を延ばすものでも、運命を変えるものでもない。
自分自身を媒介にできる道を、世界に繋ぐだけ。
本来は祝福をこんな簡単に使わない。
「覚えてなくていい。気づかれずに、生きな」
周囲やアマミに、エリスの姿も声も聞こえない。
◇◇◇
──春大陸でのこと。
干ばつの村で、エリスは一度だけ目立った。
夜のうちに雨を呼び、朝には畑が潤った。
人々は喜び、讃えた。
だが願いは要求に変わり、やがて値踏みする目が向けられた。
村人に囲まれ縄と檻を前にして、エリスは悟った。
だから
姿を消した。
それ以来、彼女は笑って言う。
「目立つと、ろくなことがない」
冗談のように。
けれどそれは、善意が刃に変わる瞬間を知る者の言葉だった。
それでも、祝福は残る。
エリスもアマミも忘れてしまって誰にも知られず、世界のどこかで。
それが、アマミが幼い頃に受けた媒介が無くても魔法が使える妖精の祝福。
[完]
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




