表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/43

告白


南行きの船は、白い帆を張り、ゆっくりと準備を整えている。

潮の匂いは濃く、陽射しは強い。


ヒサナは桟橋の先で立ち止まり、振り返った。

少し離れた場所に、アマミとエリスが並んで立っている。

アマミは腕を組み、いつも通り静かな表情。

エリスは手を振りながら、にこにこと笑っていた。


「行くよ、ヒサナ」

キーラが声をかける。

その声は、どこか固かった。


船に乗り込む前。

人の流れから少し外れたところで、キーラは足を止めた。


「・・・ねえ」


ヒサナが首を傾げる。

「なに?」


キーラは、拳を握ったり開いたりしてから、言った。

「魔力遮断区画で・・・あの時。ヒサナ、泣いてたよね」

ヒサナの肩が、わずかに揺れる。

「・・・うん」

「どうして?」


沈黙。


波の音だけが、間を埋める。

「・・・グリードに」

ヒサナは視線を落とした。

「キス、された」


キーラの動きが止まる。


「・・・嫌だった」

ヒサナは小さく、でもはっきり言った。

「・・・すごく」


次の瞬間。

「──っ、ふざけんな!!」


キーラの声が、港に響いた。

ヒサナが驚いて目を見開く。


声が震えている。

怒りだけじゃない。

悔しさと、守れなかった後悔。

拳を強く握りしめ、歯を食いしばる。

「ボクが・・・ボクが、絶対守るって、決めてたのに・・・!」


ヒサナは、ぽかんとしたまま、キーラを見つめていた。

「キーラ?」

名前を呼ぶと、

キーラははっとして、顔を背ける。


「・・・ごめん。怒鳴るつもりじゃ・・・」


深く息を吸って、吐いて。

それから、ヒサナをまっすぐ見た。


「ヒサナのことが、好きなんだ」

一切の誤魔化しもない声。

「だから、傷つけられるの、耐えられない」


ヒサナは瞬きをして、少し考えた。

「よく、わかんないけど」

困ったように笑う。

「でも、キーラが怒ってくれるのは・・・ちょっと、嬉しい」


キーラは、思わず目を伏せた。

――ああ。

この人は、まだ気づいていない。


◇◇◇


少し離れた場所。


「青春だねぇ」

エリスが、楽しそうに言った。

「ですね」

アマミは微笑む。

「感情が追いつくまで、少し時間がかかりそうですが」

エリスは肩をすくめた。

「でもさ、ああいうの、嫌いじゃないよ」


二人の視線の先で、ヒサナとキーラは、まだ少しぎこちなく並んでいる。


夏大陸へ向かう船が、汽笛を鳴らした。


それぞれの想いを乗せて。

本編に登場するキャラクター

ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは

「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ