魔力遮断区画
魔力遮断区画の外壁。
分厚い石。
重ねられた魔法陣。
キーラは拳を握り、一歩、踏み込む。
ドン───低い衝撃。壁が、歪む。
二撃目。ギシ、と魔法陣が軋む音。
三撃目。轟音と共に、壁が崩れ落ちた。
粉塵の向こうへ、キーラが踏み込む。
その光景を見た瞬間、キーラの足が、一瞬止まった。
ヒサナは、床に膝をつき、泣いていた。
声を殺し、肩を震わせて。
「・・・ヒサナ」
呼びかける声が、低く落ちる。
ヒサナが顔を上げる。涙で濡れた目。
「・・・キー・・・ラ・・・」
その声を聞いた瞬間、キーラの中で、何かが決定的に切り替わった。
だが、その前に。
床に倒れている赤髪の人物が、視界に入る。
エリスが駆け寄る。
「大丈夫?」
少し前。アメリアは、確かに動いていた。
ヒサナとグリードの間に割って入り、必死に引き離そうとした。
だが。
「邪魔だ」
短い声。
突き飛ばされ、壁に叩きつけられ、アメリアはそのまま床に倒れた。
そして、今。
キーラの視線が、ゆっくりとグリードへ向く。
その瞬間。
グリードは、ヒサナから視線を外し、倒れているアメリアを見た。
──舌打ち。
「使えない」
低く、吐き捨てるように。
(分断した後に、睡眠薬を盛るなり、この怪力女を、先に処理しておけば──)
視線が、キーラに戻る。
初めて、計算が狂ったと悟った顔。
魔法の使えない区画。
それは、自分にとっての安全地帯であると同時に、最悪の戦場でもあった。
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




