ヒサナの元へ
春大陸にて。
胸の奥が、嫌な鳴り方をした。
エリスは、その違和感を勘で片づけなかった。
それは、何度も感じてきた──取り返しがつかなくなる直前の歪みだった。
「・・・っ」
立ち止まる暇もない。
通信具を握りしめ、声を叩き込む。
「皆! 緊急!!」
一瞬の間も置かずに続ける。
「そこ、絶対に動かないで!!」
返事を待たず、通信を切った。
次の瞬間、空気が、歪む。
視界がひっくり返りエリスは、アマミの目の前に立っていた。
「・・・え?」
アマミが目を見開く。
だが、問いかける暇は与えない。
「説明は後!」
エリスは、その手を掴む。
「来て!」
視界が、引き伸ばされる。
床も、天井も、意味を失い──
次に、二人が立っていたのは。
「!?」
驚いた顔の、キーラの目の前だった。
「エリス!? アマミ!?」
エリスは、即座に問い詰める。
「ヒサナは!?」
キーラの表情が、一瞬で硬くなる。
「・・・中だ。王宮の奥」
エリスは、キーラの手を掴む。
「行くよ!」
力を込める。
だが。何も起きない。
視界は歪まず、空気も動かない。
「・・・え?」
キーラが、思わず声を漏らす。
「移動できない・・・?」
エリスは、歯を噛みしめる。
「この中は魔力遮断区画。中は、完全に魔力が使えないんだって」
つまり。転移は、使えない。
「ヒサナが危ないなら、物理で行く」
キーラが、短く言った。
扉を拳で壊し、もう走り出している。
アマミは一瞬だけエリスを見る。
(あとで、全部聞きますからね)
そう思いながら、すぐに後を追った。
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




