表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/43

囚われのグリード


魔力遮断区画は、静かだった。

魔力の流れが断たれた場所特有の、思考だけが残る静寂。

グリードは鉄格子の内側に立ち、足音が近づいてくるのを待っていた。

(来る)

分かっている。この時間、この歩幅。

「失礼します、グリード様」

赤髪の魔法使いの声。


その呼び方を聞いた瞬間、グリードの胸の奥で、小さな満足が生まれる。

(まだだ。まだ、その位置にいる)

彼は振り返り、穏やかに微笑んだ。


「久しぶりだね」

その声音に、アメリアはほっとしたように息をつく。

「お変わりありませんか」

「問題ないよ」

短く答える。

彼女はそれだけで納得する。

昔から、そうだった。


──ああ、昔から。


十五歳の頃。

研究棟の廊下で、一人で立ち尽くしている少女を見つけた。

赤い髪。まだ幼く、周囲を警戒する目。

「どうした?」

そう声をかけたのが、始まりだった。

「君、今日から宮廷魔法使いだろ?8歳で選ばれるなんて、すごいじゃないか」

赤髪の少女は、何も答えなかった。

ただ、ぎゅっと拳を握っていた。

(怖がっている)

そう思った。

だから、あの言葉をかけた。

「大丈夫だ。ここは、危ない場所じゃない。君は役に立つ」

その瞬間、赤髪の少女の目が、こちらを向いた。

希望を掴むような目だった。

(・・・しまったな)

そう思った記憶は、もう薄れている。



現在

過去を思い出していたグリードにアメリアは慎重に切り出す。

「なぜ、禁忌の魔力石をヒサナに使おうとしたのか、と・・・」

その名を聞いた瞬間、グリードの思考は、自然に白銀の少女へ向かう。


(ヒサナ)

拒絶の視線。

触れようとした瞬間に弾けた魔力。

(拒まれた。だから、欲しい)

だが、それは表に出さない。


「君も、見ただろう。南の魔法使いの魔力を」

アメリアは、はっきりとうなずく。

「杖も、魔力石も使わず、媒介なしで魔法を発現する。それ自体が異例だ」

赤髪の彼女の表情が、真剣になる。

(そうだ。その顔でいい)

「さらに、核に魔力を供給できた。通常の巫女とは、構造が違う」

グリードは、ここで間を置く。


昔と同じだ。

彼女は、この沈黙を考えている時間だと思う。

「私が辿り着いた結論は──核と、ヒサナは関係している」

アメリアの呼吸が、わずかに乱れる。

「もしかすると核そのものが、彼女と繋がり、媒介として機能しているのかもしれないと?・・・だから、管理が必要なんですね」

(来た)

グリードは、内心で確信する。

「君は、正しい」


そう言われただけで、彼女の迷いは消える。


──八歳の頃と、同じだ。

「グリード様のためなら。わたしに、できることがあるなら・・・」

(ああ。やはり、便利だ)

だが、表情は変えない。

「ありがとう。君が居てくれて、本当に良かった」

その言葉を、彼女は自分に向けられたものだと信じる。

「君なら」

グリードは静かに続ける。

「彼女に、話を聞いてもらえる」

アメリアは即座にうなずいた。

「王家の名で手紙を書きます。非公式の、面会として」

(それでいい)

檻の内側で、グリードは確信していた。

(次は、拒絶は、起きない。魔力が使えない場所なら)


──天の主は、私を見捨てなかった。


挿絵(By みてみん)


本編に登場するキャラクター

ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは

「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ