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東西南北、集結

夏大陸の港町は、夜になっても蒸し暑かった。

昼の熱を含んだ石畳から、じわりと熱気が立ち上る。


「暑い・・・」

キーラが心底うんざりした声を出す。

「まだ夜だよ?昼よりマシじゃない?」

ヒサナは不思議そうに首を傾げた。

「それはヒサナが夏大陸出身だからでしょ」

キーラは額の汗を拭う。

「冬大陸は、今ごろ凍ってるんだぞ」

「たしかに」

二人がそんなやり取りをしていると

「やっぱり、ここだった」

明るい声が割り込んだ。

振り返ると、ピンク色の髪を揺らし、にこにこ笑っている女性が立っている。


「エリスさん?」


「正解」

その後ろで、帽子をかぶった青緑色の髪の女性が静かに頭を下げた。

「ご無沙汰しております。アマミですわ」


「・・・お久しぶりです」

ヒサナは少し緊張しながらも丁寧に挨拶する。

キーラは無意識に一歩前へ出た。

「何の用?」

エリスはその様子を見て、くすっと笑う。

「相変わらずガード固いね」

「冬大陸の人間は慎重なんだ」

「暑さにも弱いし?」

「・・・うるさい」

エリスは周囲に人がいない事を確認すると、杖も使わず、指先で小さな風を起こした。

「・・・!」

キーラの目が見開かれる。


「内緒ね。知られると、面倒だから」

続けてアマミが一歩前に出る。

「わたくしも、媒介なしで魔法が使えます」

魔法発動の為の魔力石ピアスにも触れず、指先に淡い雷が一瞬だけ灯る。

その直後、アマミははっきり言った。

「それと、わたくしが、魔力を使わずに動く魔道具の開発者です」

キーラが即座に反応する。

「あんたが?」

「はい。冬大陸へも、いくつか流しています」

その瞬間、キーラの態度が一変した。


「・・・それなら信用する」


「え?」

「魔力なくて困る人、山ほど見てきた。そういう人間の味方なら敵じゃない」


エリスが吹き出す。

「分かりやすっ」


その時、ヒサナは杯を見て首を傾げた。

「これ、甘いね」

キーラの背筋が伸びる。

「・・・ヒサナ」


遅かった。


一口、飲む。

「・・・ふふ」


「・・・飲んじゃった」

キーラは小さく呟く。


ヒサナはにこにこしながら言った。

「ねえねえ。私さ、かわいいもの好きなんだよ」

「また始まった」

「ぬいぐるみとか、小さいのとか」

そう言って、ヒサナの視線がピンク髪で童顔、少し背の低いエリスに向く。

「エリス」

「ん?」

「エリス、かわいい!」

「え?」

「ちっちゃいし、笑うともっとかわいい!」

「ちょっと待って」

エリスは笑いながら言う。

「それ褒めてる?」

「褒めてる!」

即答。キーラは、むっとする。

「……」


ヒサナはさらに続ける。

「それにね、名前も一緒で嬉しい!」

ヒサナは、酔いの勢いそのままに言った。

「私のお母さんも、エリスっていうの!」

エリスは一瞬だけ目を瞬かせ、それから、いつものようにニコッと笑う。

「そっか。じゃあ、なおさらだね」


その様子を見ていたキーラは、胸の奥がちくっとするのを感じていた。

(なんで、そんなに嬉しそうなんだよ)


エリスはキーラの表情をちらりと見て、ニヤリ。

「青春だな〜」

「・・・は?」

キーラが睨む。

「何が」

「いやあ?こう、可愛い子に褒められて、それを見てる人がもやもやしてる感じ?」

「もやもやしてない!」

その空気を、アマミが静かに遮った。


「こら、エリス」

穏やかな声だが、どこか芯がある。

「最年長が、年下をからかうんじゃありません」


「・・・え?」

キーラが、思わず声を出した。

「最年長?」


エリスは一瞬きょとんとし、次の瞬間、にこっと笑う。

「なに?」


「なに、じゃない」

キーラはアマミを見る。

「エリスって、アマミより年上なの?」

アマミは、静かに頷いた。

「はい。わたくしより、少し」

キーラは、エリスを見る。


「・・・うそだろ」

「失礼だなあ」

エリスはくすくす笑う。

「見た目で判断するの、よくないよ」

「いや、だって、ボクと同い年くらいだと思ってた」


ヒサナはそのやり取りを、よく分かっていない様子で眺めていた。

「・・・?エリス、年上なの?」

「内緒ね」

エリスは指を立てる。

「年齢の話すると、だいたい面倒なことになるから」

アマミはため息をつきながらも、小さく微笑んだ。

「本当に。からかう癖、直しなさい」

「反応が可愛くて、つい」


キーラは、まだ少し納得していない顔でエリスを見ていた。

(なんなんだ、この人)

エリスは、その視線に気づいて、またにやりと笑った。

「ほら、余計に青春っぽい顔してる」

「・・・っ」

キーラは顔を背ける。


ヒサナは、そんな二人を見て、よく分からないまま笑っていた。

「仲良しだね」


ひとしきり笑ったあと、アマミが小さな箱を取り出した。

「さて。そろそろ本題ですわ」

箱の中には、同じ形の小さな魔道具が四つ。

「遠くにいても、声だけは届きます。常用は推奨しませんが・・・何かあった時用に」

キーラが受け取り、真剣な顔になる。

「ありがとう」


エリスは軽く言った。

「何かあったら、呼んで。すぐ駆けつけるから」

ヒサナは頷いた。

「うん」

キーラも短く言う。

「約束だよ」

挿絵(By みてみん)

◇◇◇


翌朝。

ヒサナは目を覚まして、首をかしげた。

「あれ?」

頭が少し重い。

「昨日・・・なにか・・・」

キーラは黙って水を渡す。

「覚えてない?」


「・・・うん」


アマミとエリスが視線を合わせ、微笑んだ。

「皆さんに、とても好かれていましたわよ」

「え?」

エリスが笑う。

「エリス可愛いって、何回も言ってた」

ヒサナは真っ赤になった。

「わ、私・・・」

キーラは視線を逸らしながら、小さく言う。

「・・・可愛かったよ」

ヒサナは、何があったのか分からないまま、でも不思議と胸が温かくなった。


その日、アマミとエリスはそれぞれの大陸へ戻って行った。

離れていても繋がっている。そう信じて。




本編に登場するキャラクター

ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは

「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。

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