見守る大人達
桟橋の外れで、アマミは帳簿を閉じた。
「ここから先は、船ですね。冬大陸向けの輸送路も、しばらくは落ち着きそうです」
隣で、エリスが伸びをする。
「うん。アマミはさ」
唐突に、そんな言葉が来る。
「世界が壊れたあとも、ちゃんと想像してる人だよね」
「褒め言葉、と受け取ってよろしいのかしら」
「もちろん」
即答。
「アタシは逆。壊れそうな所を、とりあえず手で押さえるタイプ」
「西と東、ですわね」
「役割分担、完璧じゃない?」
「ええ。その通りです」
アマミたちは港へ向かった。
噂の中心。
南の魔法使いが、ここにいると聞いて。
◇◇◇
夏大陸行きの船の前で、白銀の髪の少女が立っていた。
人混みの中で、少しだけ居心地が悪そうに。
彼女の半歩前には、小柄な少女が立っている。
立ち位置。視線。距離の取り方。
・・・守っている。
それも、慣れきったやり方で。
(この二人は・・・すでに、何かを越えてきていますわね)
エリスが、一歩踏み出した瞬間。
キーラが、即座に反応した。
半歩前へ。白銀の少女を背に。
「止まって」
低く、抑えた声。
敵意ではない。
だが、明確な線引き。
アマミは、すぐに一歩前に出て頭を下げた。
「初めまして。秋大陸より参りました、アマミと申します。こちらは、春大陸のエリス」
ヒサナは、少し戸惑いながらも頭を下げる。
「・・・ヒ、ヒサナです」
ヒサナの前に立つ小柄な少女は短く名乗った。
「キーラ」
その間も、一瞬たりとも警戒を解かない。
エリスが声の調子を落とす。
「安心して。無事に帰れるか、それだけ見たかっただけ」
ヒサナは、少し不思議そうに首を傾げる。
「・・・帰る・・・?」
「冬大陸の件で」
アマミは、必要最低限だけ伝えた。
「あなたの名前は、もう広まっています。注目されると、望まない接触も増えますから」
ヒサナとキーラは、視線を伏せた。
心当たりがあるのだろう。
船員の声が響く。
「夏大陸行き、まもなく出航!」
キーラが、即座に反応する。
「ヒサナ、行くよ」
「うん」
エリスは、すっと一歩引いた。
「今日は、ここまで。無理に関わらない」
キーラは一瞬だけこちらを見る。
警戒は解かない。だが、拒絶もしない。
「・・・」
船が動き出す。
アマミとエリスは、桟橋に残った。
しばらくして、エリスが言う。
「・・・アマミ、次の夏大陸便、いつ?」
アマミは即座に理解する。
「三日後ですわ。貨物船ですが、乗れます」
エリスは、にこっと笑った。
「じゃあ、それで。追いかけるけど──」
少しだけ、言葉を選ぶ。
「追いつかない距離で」
「見守る、ということですわね」
「そう」
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




