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異変を知る者

湯気の立つ茶器を前にして、アマミは資料を一枚、机の上に広げた。

数字と図表。魔力の循環量、発生率、偏差。

「ここ数年で、明らかに減っていますわ」

視線は紙面に落としたまま。

「冬大陸の北部から、魔力を持たない子供が生まれる事例が増えています」


エリスは椅子に腰かけ、湯気の向こうでニコニコしている。

「うん。噂じゃなくて、もう事実だね」


アマミは一瞬、手を止める。

「普通は、核がある限り魔力は自然に循環するはずですわ」

「そうだね」

エリスは茶を一口飲み、変わらない笑顔のまま続ける。

「でも普通って、だいたい想定が狭い」

アマミは眉をひそめた。

「・・・つまり?」

「壊れてるとは限らないってこと」

エリスは肩をすくめる。

「機構が、変わり始めてるだけかも」

その言葉に、アマミの胸がわずかにざわつく。

「だから、アマミがやってることは正しいと思うよ」

突然の肯定。

挿絵(By みてみん)


アマミは顔を上げた。

「・・・魔力を前提にしない道具の研究を?」

「うん」

エリスは即答した。

「壊れる前に、別の選択肢を作る。それって、すごく地味だけどいちばん世界を壊さないやり方」


アマミは、言葉を探す。

「ですが・・・この研究は、評価されることはありませんわ」

「知ってる。国も、貴族も魔力がある前提の世界を手放したくない」

「それでも、わたくしは・・・」

アマミは、静かに拳を握った。

「誰かが困ってからでは、遅いと思っています」


エリスは、その様子を眺めながら、少しだけ笑みを深くした。

「やっぱりさ、アマミは、研究者向いてるよ」


「それは、褒め言葉ですの?」

「もちろん!結果より、起きる前を見てる。そういう人、少ない」


沈黙が落ちる。工房の外では、紅葉が風に揺れている。


「・・・エリスさんは」

アマミは、ふと尋ねた。

「なぜ、この噂を知っていたのですか」

視線が合う。


エリスは一瞬、ほんの一瞬だけ、考える素振りを見せた。


それから、いつも通りの笑顔で答える。

「さあ?風の噂ってやつ?」

嘘だ。

だが、アマミは本能的に理解した。

(この方は・・・知っている側)

だが同時に、それを武器にはしない人。

「でしたら」

アマミは、一歩だけ踏み込む。

「わたくしの研究に、興味はありますか」

「あるよ」

エリスは、即座に言った。

「ただしアタシは、前に出る気はない。誰かを説得もしないし止めもしない。でも壊れそうなら、止める」


アマミは、静かに息を吐いた。

「・・・それで、充分ですわ」


二人の間に、言葉にならない合意が生まれる。


本編に登場するキャラクター

ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは

「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。

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