二人の夜
中央大陸北端の草原は、昼こそ暖かいが、風に混じる冷気は確実に冬の匂いを連れていた。
夜は肌を刺すような冷気に変わる。
キーラは慣れた手つきで魔力石を使い焚き火の準備をしながら、チラッとヒサナを見る。
「ごめんね・・・キーラ・・・寒さに慣れていなくて・・・」
「むしろ、その格好で凍えてないのが奇跡だよ・・・!」
キーラはゴソゴソと小さなバッグを漁り、小瓶を取り出した。
「これ、冬大陸の体が温まる飲み物」
焚き火にあたりながらヒサナは差し出された小瓶を手に取る。
「・・・貰って良いの?」
「ちょっとアルコール入ってるけど、寒い夜にはぴったりだよ。無理して飲まなくても良いからね?」
ヒサナはグビ、と一口飲んだ。
口の中が一瞬で熱くなり、喉の奥からぽわっと温度が広がる。
「すごい・・・あったかい」
頬が桃色に染まった。
「ヒサナ・・・顔赤くなってる・・・!」
冬大陸の子供でも飲めるように作られた飲み物で、紅潮しているヒサナに驚くキーラ。
焚き火の前でヒサナは小さく笑った。
「ねぇキーラ・・・今日ね、あえて良かった。一人で旅するの、怖かった・・・」
ヒサナはゆっくりとキーラに近づく。
「えへへ。私の魔力が目当てで近づいてくる人が怖くて外に出たくなかったけどキーラの隣は、なんだか安心する。小さくて・・・可愛いからかな・・・。私、小さくて、可愛いの好きなんだ。キーラ可愛い!」
ヒサナはギュッとキーラを抱きしめた。
突然、ニコニコしながら饒舌になったヒサナに対し、キーラは真っ赤になりながら答える。
「あっ、安心して!ボクが守ってあげるからっ・・・!」
「ん・・・ありがとう。私、たぶん弱いし魔法あまり使った事なくて・・・実は魔物も見た事ないし、道中の魔物も倒せるか不安なんだ。キーラに頼っちゃう けどよろしくね?」
「・・・っ!」
すり寄るヒサナに対し、空を見上げ可愛いのはヒサナだよとキーラは思うのだった。
そして──案の定。翌日ヒサナは何も覚えていなかった。
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




