不安の中で
王宮の回廊に残されたわずかな魔力の痕跡を見て、キーラは確信していた。
(グリード、お前だ)
まだ、誰も断定していない。
王も、警備も、確証を持っていない。
だが──キーラだけは、迷わない。
「追う」
それは、宣言でも、怒号でもない。
事実確認のような声。
こうして理解した者と、理解できない者。
その距離は、決定的に引き裂かれた。
◇◇◇
その頃、ヒサナは運ばれていた。
目隠しはない。
縛られてもいない。
ただ、周囲の景色が分からないだけだ。
結界が、視界と感覚を鈍らせている。
「・・・グリードさん・・・どこへ・・・」
声は、不安で小さい。
「安全な場所です」
即答。
それ以上の説明は、ない。
「・・・キーラ・・・怒って・・・ない?」
「大丈夫です」
その言葉は、祈りに近かった。
ヒサナは、それ以上聞けなかった。
(分からない・・・)
何が起きているのか。
なぜ急いでいるのか。
ただ、胸の奥が、ひどくざわつく。
それなのに、魔力は相変わらず満ちている。
疲れもしない。
力も抜けない。
それが、余計に怖い。
「ここです」
グリードが足を止める。
結界が、一段、重くなる。
ヒサナは、無意識に袖を掴んだ。
「・・・あの・・・ほんとに・・・守ってくれてる?」
問いは、ほとんど独り言だった。
グリードは、一瞬だけ黙った。
そして、ゆっくり頷く。
「もちろんです」
その言葉に、嘘はない。
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




