キーラ始動
三度目に「面会はできません」と言われた時、キーラはようやく理解した。
これは、切り離しだ。
「分かった」
そう答え、扉が閉まるのを待つ。
足音が遠ざかってから、キーラは静かに息を吐いた。
「動くか」
小さな声で呟き、回廊を歩き出す。
グリードは、回廊の先にいた。
書類を抱え、足取りがやけに早い。
「グリード」
「・・・キーラさん」
声をかけると、立ち止まる。
穏やかな口調。だが、余裕がない。
「ヒサナに会わせて」
キーラは、回りくどい言い方をしなかった。
「今は、危険です」
即答。
「何が?」
問い返す。
グリードの言葉が、一瞬、途切れる。
「・・・状態が」
「それは聞いた」
キーラは、一歩だけ近づいた。
「でも、会うと危険って話は一度も聞いてない」
沈黙。
その間に──慌ただしい足音が重なった。
「失礼します!」
警備兵が駆け込んでくる。
「封印区画の点検中、異常が発覚しました!禁忌指定の魔力吸収石が、消失しています!」
空気が、一気に張り詰める。
キーラは、反射的にグリードを見る。
グリードは、否定しなかった。
驚きも、怒りもない。
ただ、わずかに視線を伏せただけ。
(・・・ああ)
それだけで、十分だった。
(全部、繋がった)
ヒサナの隔離。
説明の省略。
焦った目。
そして──禁忌の消失。
「グリード」
キーラの声は、低い。
「それ、ヒサナに使う気?」
グリードは、一瞬だけ目を見開いた。
ほんの一瞬。だが、否定はしない。
「今は、説明している時間がありません」
グリードはそのまま走り出した。
それが、答えだった。
その時、別の警備兵が声を上げる。
「──王命準備中!関係者の動向を確認せよ!」
まだ、犯人確定ではない。
だがキーラの中では、もう終わっていた。
「分かった」
一歩、引く。
拳は、握らない。
「じゃあ、待つのは終わりだ」
その言葉を背に、キーラは踵を返す。
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




