ヒサナの膨大な魔力
中央大陸・王都での滞在は、思っていたより長くなっていた。
船の手配は遅れ、必要な許可もまだ下りない。
「・・・もう少し・・・」
ヒサナは宿の窓辺で、小さく呟いた。
暑さは平気だった。
問題は、増えすぎた魔力だ。核と繋がってから、
体の奥に溜まる感覚が消えない。少し気を抜くと、魔力が指先に滲む。
(・・・こわい・・・)
暴走させたくない。誰かを傷つけたくない。
そんな時だった。
王宮から、正式な呼び出しが届いた。名指しはヒサナ。
「大丈夫だよ」
キーラは軽く言った。
「変なことされたら、ボクが止める」
その言葉に、ヒサナは少し安心した。
◇◇◇
王宮の応接室は、外の熱気が嘘のように静かだった。
そこにいたのは、先日会った宮廷魔法使いグリード。
「お越しいただき、ありがとうございます」
穏やかな一礼。
「今日は、命令ではありません。あなたにとって、一番必要な話だと思ったので」
ヒサナは、少し身構えた。
「・・・必要?」
「はい。あなたの魔力についてです」
その一言で、ヒサナの胸がきゅっと縮む。
「・・・私・・・上手く・・・できなくて・・・」
「ええ。だからこそです」
グリードは、否定も評価もせず、そう言った。
「あなたの魔力は膨大だ。それ自体が問題なのではありません」
ヒサナは、思わず顔を上げた。
「問題なのは、誰も教えていないことです」
その言葉は、ヒサナの胸に、まっすぐ刺さった。
誰も教えてくれなかった。母はもういない。
「・・・私どうすればいいか・・・分からなくて・・・」
「でしょうね」
グリードは、穏やかに頷いた。
「私が教えましょう」
静かな声。
だが、その一言は、ヒサナにとって救いだった。
「魔力の流し方。溜めない方法。暴走させない距離感」
「あなたは、感覚で使いすぎている」
ヒサナは、小さく息を呑んだ。
(・・・当たってる・・・)
「数日でいい。王宮の保護区画で、私が直接指導します」
キーラは、その会話を黙って聞いていた。
(専門家だ)
それは事実だ。キーラは、魔力理論を知らない。拳でどうにかする人間だ。
ヒサナの魔力を教えることは、できない。
「・・・ヒサナ」
キーラは、一応、声をかけた。だが、続く言葉が、ない。
「ボクは・・・魔法のこと・・・よく分からないから・・・」
止める理由が、見つからない。
ヒサナは、しばらく俯いたまま考えていた。
(このままだと・・・いつか・・・誰かを・・・)
そして、小さく頷いた。
「・・・お願いします・・・」
その瞬間、キーラの胸が、わずかに沈む。
(選ばせてしまった)
だが、責める気はなかった。これは、ヒサナ自身が選んだことだ。
グリードは、静かに微笑んだ。
「ありがとうございます。無理はさせません。あなたの為です」
その言葉に、疑う理由は、まだない。
こうしてヒサナは、教えてもらう為に王宮に留まることになった。
捕まったわけじゃない。閉じ込められたわけでもない。
だが扉は、確かに内側から閉まった。
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




