南のヒサナ北のキーラ
出会い
7月の中央大陸。
夏大陸ほどではないが、陽光は強く草原を照らしていた。
風は乾いていて、遠くの山脈には薄らと雪が残っている。
その草原を、ひとり歩く女がいた。
白銀の長い髪を緩く三つ編みにまとめ、青いショートパンツと白いクロップトップの軽装。
露出の多い服は夏大陸では普通だが、北寄りの中央大陸ではやや薄すぎる。
ヒサナ。22歳。
金色の瞳は少し伏せがちで、歩き方は控えめ。旅慣れていないことが、ひと目でわかる。
(・・・お母さんの故郷に行くって決めたんだ)
ヒサナは小さく息を吐き、草原の道を踏みしめる。
その時、不意に草を踏む音とは違う振動が、ヒサナの足元から伝わってきた。
ドンッ、ドドンッ
「・・・?」
遠くから、誰かが走ってくる気配。
やがて草原の向こうから、小柄な影が飛び出した。
深い緑黒の髪を靡かせ、赤いマントを揺らしながら駆けてくる少女。
青い瞳が驚いたように大きく開かれる。
キーラ。18歳。
彼女はヒサナを見た瞬間、足を止めて息を呑んだ。
「・・・なんでそんな薄着・・・?」
キーラはヒサナに駆け寄り、じっと観察するように見上げた。
夏大陸で引きこもりだったヒサナは、人付き合いが乏しかった為、急に現れたキーラに戸惑っていた。
「お腹も出てるし・・・ここ、7月でも寒い所だよ?」
ヒサナは何とか言葉を発した。
「あ・・・うん。ちょっと、風が冷たくなってきたね・・・」
「ちょっとどころじゃないよ!このまま北に行ったら凍えるよ」
すかさずキーラはツッコミを入れる。
ため息を吐いたキーラはヒサナを見上げ呟く。
「綺麗な子が、そんな格好で歩いてたら・・・いろいろ危ない・・・」
キーラは赤いマントをヒサナの肩にかけ、決意したように言う。
「ボクの名前はキーラ。冬大陸の領主の娘なんだ。冬大陸を目指して旅をしているのって貴女のことだよね?実は、噂を聞いて走って来たんだ。貴女事、心配だしボクが守ってあげるから、一緒に行こう」
ヒサナは胸の奥が温かくなるのを感じた。
「・・・少しだけ・・・嬉しいかも。一人で心細かったんだ」
初めて会ったのに。キーラは怖くない。
「・・・そ、そう?じゃあ、えっと・・・一緒に行こう!」
こうして南と北の少女は出会った。
本編に登場するキャラクター
ヒサナ、キーラ、アマミ、エリスは
「キャラクターデザイン鳴海月花」の表記があれば創作、商用利用可能です。




